第36話 最終決戦!ザ・ジェネシス・後編!!
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ガッツポーズをしている守兄の所へ駆け寄って、ハイタッチを交わす。
鬼道も手を上げてきたからハイタッチしようとしたら、思い切りスカった。フェイントかけられた。酷い。笑うな土門。
とにかく、2ー2でまた同点に追い付いた。
「ジェネシスが2点も失うなんて……」
「仲間がいれば、心のパワーは100倍にも1000倍にもなる!」
愕然とした様子で言葉を零したヒロト君に、守兄が言い放つ。
「(仲間を思う心が、彼らをレベルアップさせているというのか……?)」
「ねえ、ヒロト。本当は、仲間は大切なんだって、気付いてるんじゃないの?」
「……君に何が分かるんだ」
切れ長の瞳に怒りの感情を滾らせて、睨み付けられる。向けられた背中が寂しげに見えたのは、気のせいだったろうか。
思い出したのは、お日さま園でのこと。あたしが行く時は一緒に遊んだりもしたけど、ヒロト君は、他のみんなとは、あまり仲がいいとは言えない関係だったと思う。
……だから、ジェネシスも、仲間じゃないのかな。それこそ、吉良の願いを叶えるための存在で、道具。
心の中がぐちゃぐちゃで、もやもやする。ヒロト君達が吉良を慕ってて、心酔してるのは分かってる。けど、普通ここまで出来るものなのだろうか。
エイリア学園は、孤児院であるお日さま園の子供達で構成されている。対してあたしは、血の繋がった兄がいて、親がいる。幼馴染みが、親友が、大切な仲間達がいる。
恵まれた環境。それは明確な違いで、とても大きな溝だった。
試合が再開されると、ヒロト君達は一気に加速した攻め込んできた。
「(俺には父さんがいる!父さんさえいれば、仲間など必要ない!)」
ヒロト君からはさっきの守兄やあたしの言葉を否定するかのような気迫があって、一瞬怯みかけた足を力一杯動かす。
ムゲン・ザ・ハンドを打ち砕いた、さっきよりも威力が上がったスーパーノヴァ。合図は必要ない。守兄とシュートの軌道上に立った。
「メガトンヘッド!」
「水龍!」
「いっけえええ!!」
「入れさせるもんかあああ!!」
守兄と同時に必殺技を発動させて、ギリギリのところでシュートにぶつける。反動でゴールネットに叩きつけられたものの、跳ね返すことは出来た。
「これも、仲間を思う力だというのか?……ありえない!」
「「「スーパーノヴァ!」」」
まただ。強力なシュートがゴールに迫る。立向居はさっき破られたことを引き摺っているのか、不安そうな表情だ。
フォローしようにも、一番近くにいる守兄もあたしも、今のブロックの衝撃が抜けなくて間に合わない。これは、立向居の力で、止めなければ。
「立て!立向居!」
「前を向くんだ!」
「円堂さん、美波さん……」
「雷門のキーパーはお前だ立向居!雷門のゴールを守るのはお前なんだ!」
「立向居なら出来る!信じてるよ!」
「いけ!立向居!」
「「「立向居!」」」
「みんなの、ゴールを……俺が……守るっ!!!――ムゲン・ザ・ハンド!」
立向居が手を合わせる。飛び出した腕は八本。シュートは、立向居の手の中に収まった。
「何だと……!?」
「やったな立向居!」
「はい!」
「それでこそ立向居だよ!」
「ありがとうございます!」
この流れに乗ってリードを作れたら。喜んだのも束の間で、モニターに吉良が映し出された。
「グラン、リミッター解除をしなさい」
「リミッター解除?父さん!そんな事をしたらみんなが……!」
酷く焦ったように、ヒロト君は抵抗した。あんなに動揺するなんて、これ以上何をしようって……。
ハッとヒロト君は目を見開いた。吉良を見れば、失望したと言わんばかりの表情で、ヒロト君を見下ろしていた。
「怖気づいたのですか?グラン、貴方にはがっかりです。ウルビダ、お前が指揮を執りなさい」
「はい、お父様」
「父さん!」
ヒロト君の呼び掛けも聞かずに、吉良の姿が消える。……あの躊躇いよう。リミッター解除はそんなに恐ろしいものなのか。それに、みんながって?玲名達が、また傷つくの?
……やっぱりそうだ。あたし達と同じだ。ヒロト君だって、チームメイトを仲間だと思ってるんだ。大切だってこと、分かってるんじゃないか。
守兄がドリブルが攻め上がっていく。そんな中、手を上げた玲名が、号令と共に胸元のボタンを押した。他のジェネシスメンバーも同じ事をする。……特に変化は見られないけど。
「何をするつもり……?」
そして守兄が玲名を抜いた瞬間、一瞬にしてボールは奪い返された。それこそ、見えないくらいの速さで。一体、何が起きたんだ……?
今まで以上の猛スピードで攻め込まれて、ディフェンスが全く間に合わない。走っても走っても、距離をつけられるだけ。
「人間は、身体を守るために限界を超える力を出さないよう、無意識に力をセーブする。ではその全てを出し切れるとしたら?」
守るためのセーブを外してしまったら、身体は、
「筋肉は悲鳴をあげ、身体がボロボロになってしまう……!」
『!』
「そんな……!」
ふと思い出したのは、真・帝国で大怪我を負ってしまった佐久間と源田。ぼろぼろで、立ち上がることすらままならない。
帝国で練習をしたあの日、佐久間は笑っていたけれど、僅かに引き摺られた右足は痛々しくて、傍らにあった松葉杖が状態を物語っていた。
まさかヒロト君達も、佐久間や源田みたいに……!?
「サッカーが、出来なくなる?」
そんなの、絶対に嫌だっ!!!
「父さん!今すぐ止めさせて!」
「そうさせたのは瞳子、お前なのだよ」
「なっ」
「瞳子さんのせいじゃない!」
何としてでも吉良を止めようとしていた瞳子さん。だから、勝つためなら自分も手段を選ばないとでも言う気か。
そんなの、屁理屈だ。それなら、そこまで瞳子さんを追い詰めたのは、吉良の方じゃないか。士郎くんのことだって……!
「お父様の望みは、私達の望み!これがジェネシス最強の必殺技!」
玲名が力を込めると、地中から宇宙服を着たペンギンが次々に舞い上がる。合わせてヒロト君と由宇が高く跳び上がった。
「「「スペースペンギン!」」」
飛び交うペンギンが、無数の腕を打ち砕く。2ー3。……ここにきて、また点差をつけられた。
「まだあんなに強力なシュートがあったなんて……っ玲名!?」
聞こえてきたのは玲名の悲鳴だった。玲名は肩を抱いて、苦しそうに呻いていた。ヒロト君も由宇も、激痛が走っているのか、立っているのもやっとのように見える。
「玲名!もう止めて!さっきのシュート、一番負担がかかるのは!」
「黙れ!これくらい、お父様のためなら!」
「そう……父さんのため……!」
「ヒロト!」
「何だよこれ。ヒロトですら、ジェネシスですら道具なのかよ!」
「……酷いよ、こんなの!」
玲名はあんなにも吉良さんを慕ってるのに、それを踏み躙るようなこと、なんでさせられるんだよ……!
踵を返してポジションへ戻っていく三人を見送るしかできない。一瞬、体が傾いたヒロト君の腕を思わず掴んで、あたしの手は強く払われた。
「……何のつもりだい」
「別に、何も」
「同情ならいらないよ。君に理解して貰えるだなんて思ってないし、欲しいとも思わない」
吐き捨てるように言われ、行き場を失った手を下ろす。……君、か。もう名前、呼んでくれないのかな。
「やろう、美波ちゃん」
「士郎くん……」
「きっと分かってくれるから」
ふわりと笑った士郎くんに頷き返す。伝えるためには、勝つしか、ないんだから。
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鬼道も手を上げてきたからハイタッチしようとしたら、思い切りスカった。フェイントかけられた。酷い。笑うな土門。
とにかく、2ー2でまた同点に追い付いた。
「ジェネシスが2点も失うなんて……」
「仲間がいれば、心のパワーは100倍にも1000倍にもなる!」
愕然とした様子で言葉を零したヒロト君に、守兄が言い放つ。
「(仲間を思う心が、彼らをレベルアップさせているというのか……?)」
「ねえ、ヒロト。本当は、仲間は大切なんだって、気付いてるんじゃないの?」
「……君に何が分かるんだ」
切れ長の瞳に怒りの感情を滾らせて、睨み付けられる。向けられた背中が寂しげに見えたのは、気のせいだったろうか。
思い出したのは、お日さま園でのこと。あたしが行く時は一緒に遊んだりもしたけど、ヒロト君は、他のみんなとは、あまり仲がいいとは言えない関係だったと思う。
……だから、ジェネシスも、仲間じゃないのかな。それこそ、吉良の願いを叶えるための存在で、道具。
心の中がぐちゃぐちゃで、もやもやする。ヒロト君達が吉良を慕ってて、心酔してるのは分かってる。けど、普通ここまで出来るものなのだろうか。
エイリア学園は、孤児院であるお日さま園の子供達で構成されている。対してあたしは、血の繋がった兄がいて、親がいる。幼馴染みが、親友が、大切な仲間達がいる。
恵まれた環境。それは明確な違いで、とても大きな溝だった。
試合が再開されると、ヒロト君達は一気に加速した攻め込んできた。
「(俺には父さんがいる!父さんさえいれば、仲間など必要ない!)」
ヒロト君からはさっきの守兄やあたしの言葉を否定するかのような気迫があって、一瞬怯みかけた足を力一杯動かす。
ムゲン・ザ・ハンドを打ち砕いた、さっきよりも威力が上がったスーパーノヴァ。合図は必要ない。守兄とシュートの軌道上に立った。
「メガトンヘッド!」
「水龍!」
「いっけえええ!!」
「入れさせるもんかあああ!!」
守兄と同時に必殺技を発動させて、ギリギリのところでシュートにぶつける。反動でゴールネットに叩きつけられたものの、跳ね返すことは出来た。
「これも、仲間を思う力だというのか?……ありえない!」
「「「スーパーノヴァ!」」」
まただ。強力なシュートがゴールに迫る。立向居はさっき破られたことを引き摺っているのか、不安そうな表情だ。
フォローしようにも、一番近くにいる守兄もあたしも、今のブロックの衝撃が抜けなくて間に合わない。これは、立向居の力で、止めなければ。
「立て!立向居!」
「前を向くんだ!」
「円堂さん、美波さん……」
「雷門のキーパーはお前だ立向居!雷門のゴールを守るのはお前なんだ!」
「立向居なら出来る!信じてるよ!」
「いけ!立向居!」
「「「立向居!」」」
「みんなの、ゴールを……俺が……守るっ!!!――ムゲン・ザ・ハンド!」
立向居が手を合わせる。飛び出した腕は八本。シュートは、立向居の手の中に収まった。
「何だと……!?」
「やったな立向居!」
「はい!」
「それでこそ立向居だよ!」
「ありがとうございます!」
この流れに乗ってリードを作れたら。喜んだのも束の間で、モニターに吉良が映し出された。
「グラン、リミッター解除をしなさい」
「リミッター解除?父さん!そんな事をしたらみんなが……!」
酷く焦ったように、ヒロト君は抵抗した。あんなに動揺するなんて、これ以上何をしようって……。
ハッとヒロト君は目を見開いた。吉良を見れば、失望したと言わんばかりの表情で、ヒロト君を見下ろしていた。
「怖気づいたのですか?グラン、貴方にはがっかりです。ウルビダ、お前が指揮を執りなさい」
「はい、お父様」
「父さん!」
ヒロト君の呼び掛けも聞かずに、吉良の姿が消える。……あの躊躇いよう。リミッター解除はそんなに恐ろしいものなのか。それに、みんながって?玲名達が、また傷つくの?
……やっぱりそうだ。あたし達と同じだ。ヒロト君だって、チームメイトを仲間だと思ってるんだ。大切だってこと、分かってるんじゃないか。
守兄がドリブルが攻め上がっていく。そんな中、手を上げた玲名が、号令と共に胸元のボタンを押した。他のジェネシスメンバーも同じ事をする。……特に変化は見られないけど。
「何をするつもり……?」
そして守兄が玲名を抜いた瞬間、一瞬にしてボールは奪い返された。それこそ、見えないくらいの速さで。一体、何が起きたんだ……?
今まで以上の猛スピードで攻め込まれて、ディフェンスが全く間に合わない。走っても走っても、距離をつけられるだけ。
「人間は、身体を守るために限界を超える力を出さないよう、無意識に力をセーブする。ではその全てを出し切れるとしたら?」
守るためのセーブを外してしまったら、身体は、
「筋肉は悲鳴をあげ、身体がボロボロになってしまう……!」
『!』
「そんな……!」
ふと思い出したのは、真・帝国で大怪我を負ってしまった佐久間と源田。ぼろぼろで、立ち上がることすらままならない。
帝国で練習をしたあの日、佐久間は笑っていたけれど、僅かに引き摺られた右足は痛々しくて、傍らにあった松葉杖が状態を物語っていた。
まさかヒロト君達も、佐久間や源田みたいに……!?
「サッカーが、出来なくなる?」
そんなの、絶対に嫌だっ!!!
「父さん!今すぐ止めさせて!」
「そうさせたのは瞳子、お前なのだよ」
「なっ」
「瞳子さんのせいじゃない!」
何としてでも吉良を止めようとしていた瞳子さん。だから、勝つためなら自分も手段を選ばないとでも言う気か。
そんなの、屁理屈だ。それなら、そこまで瞳子さんを追い詰めたのは、吉良の方じゃないか。士郎くんのことだって……!
「お父様の望みは、私達の望み!これがジェネシス最強の必殺技!」
玲名が力を込めると、地中から宇宙服を着たペンギンが次々に舞い上がる。合わせてヒロト君と由宇が高く跳び上がった。
「「「スペースペンギン!」」」
飛び交うペンギンが、無数の腕を打ち砕く。2ー3。……ここにきて、また点差をつけられた。
「まだあんなに強力なシュートがあったなんて……っ玲名!?」
聞こえてきたのは玲名の悲鳴だった。玲名は肩を抱いて、苦しそうに呻いていた。ヒロト君も由宇も、激痛が走っているのか、立っているのもやっとのように見える。
「玲名!もう止めて!さっきのシュート、一番負担がかかるのは!」
「黙れ!これくらい、お父様のためなら!」
「そう……父さんのため……!」
「ヒロト!」
「何だよこれ。ヒロトですら、ジェネシスですら道具なのかよ!」
「……酷いよ、こんなの!」
玲名はあんなにも吉良さんを慕ってるのに、それを踏み躙るようなこと、なんでさせられるんだよ……!
踵を返してポジションへ戻っていく三人を見送るしかできない。一瞬、体が傾いたヒロト君の腕を思わず掴んで、あたしの手は強く払われた。
「……何のつもりだい」
「別に、何も」
「同情ならいらないよ。君に理解して貰えるだなんて思ってないし、欲しいとも思わない」
吐き捨てるように言われ、行き場を失った手を下ろす。……君、か。もう名前、呼んでくれないのかな。
「やろう、美波ちゃん」
「士郎くん……」
「きっと分かってくれるから」
ふわりと笑った士郎くんに頷き返す。伝えるためには、勝つしか、ないんだから。
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