第37話 終わりなき脅威!
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「終わったんだな」
「そうだね……」
炎に呑まれて、崩れていく星の使徒研究所。あの大きなエイリア石も、爆発に巻き込まれて、無くなってしまっただろうな。
これから色々調べないといけない警察の人達は大変かもしれないけど、あんなもの、残しておいたっていいことは無い。これで、良かったんだ。
振り向くと、岩に腰をかけて、俯いているヒロト君を見つけた。近寄ってしゃがみこんで、視線を合わせる。
「ヒロト」
「美波、ちゃん」
「お疲れ様」
「っ……」
試合が終わった時から思ってた。お疲れ様って言ってあげたいって。きっとヒロト達のことを、世間の人は責めるだろうから。
当然だ。エイリア学園は、沢山の事をしてきた。各地の学校を破壊して、財前総理を誘拐して、日本中を騒がせ、人々を不安にさせてきた。
だからせめて、あたしだけでも、頑張ったヒロト達にそう伝えたかった。大好きな吉良さんのために一生懸命だったんだって。
いつも豪炎寺にされてるみたいに、俯くヒロト君の頭に手を置いて撫でてみる。頑張ったねの気持ちを込めて。地面が濡れて、小さな嗚咽が聞こえた。
「……優しいね、美波ちゃんは」
「そんなことないって」
ただ、もう大切な人達が悲しむのを、見たくないだけだ。
風に揺れる鮮やかな赤髪をぼんやりと見る。吉良ヒロトさんは、どんな人だったのかな……。
「また、助けられちゃったね」
「また?」
「君はいつもそうだ、俺の手を離さない。さっきも、あの日も」
顔を上げたヒロト君は、目を細めて笑った。
「……思い出したよ、全部」
「え?」
「君のこと、ずっと前から知ってたんだね。美波ちゃん」
「ヒロト、くん」
そこにいたのは、あの頃の"ヒロト君"だった。
「忘れたかったんだ」
しばらくして、ぽつりと、ヒロト君はそう呟いた。
「父さんのためなら何だって出来た。どんな訓練だって耐えられた。……サッカーで力を示すと言われる日までは」
「……」
「世界を脅かす目的のサッカーをする度に、記憶の中の君が邪魔をした。こんなサッカーを見たら、きっと悲しむだろうって、心のどこかで引っ掛かる」
「……ヒロト君」
「邪魔だったんだ、君が。だから……忘れたかった。君のことを、全部。そう、願った」
「……」
「そうすれば、父さんだけに尽くせると思った。父さんのための俺になれる。どんなことだって……俺にとっては、父さんが全てだったから」
エイリア石はヒロト君の願いを叶えた。だからあたしを覚えていなかった。そして石が無くなった今、忘れていた記憶も戻ってきたんだ。
……あのエイリア石の部屋で聞いた声は、過去のヒロト君のものだったのかな。今となっては、確認することはできないけれど。
「えー、じゃあ……久しぶり、になる?」
「……」
「ヒロト君?」
「俺は、君を切り捨てたんだよ。必要ないって」
「それはもう過ぎたことだし。ヒロト君が吉良さんのこと大好きなのは知ってるし」
「でも」
「あーもー、いいって!また友達になろう。ヒロト君……じゃなくて!ヒロト!」
右手を差し出せば、ヒロトの視線が行ったり来たりする。躊躇いがちに差し出された右手を掴んで勢いよく振れば、やっとヒロトは笑ってくれた。
ヒロトにつられてあたしも笑って、やっと、すとんと心の重荷が落ちていった。そうだ。こうして、ヒロトと笑い合いたかったんだ。
「この手……」
「あ」
応急措置で保たせた手が酷いことになってるのを忘れてた。ヒロトが手袋しててよかった。血は止まってるのが不幸中の幸いか。これ、跡残るかなあ。
「ごめん。見苦しくて」
「俺は好きだよ。美波ちゃんの、優しい手だ」
「そうかなあ」
……色々ありすぎて、ヒロトの中であの頃のあたしが美化されてないか。引き摺るようにヒロトを連れ回していた記憶しかない。
会話が途切れたところで、何台ものパトカーが来た。鬼瓦さん達の話に聞き耳をたてる。ジェミニストームやイプシロンのメンバーは、保護されたとのこと。
風介と晴矢は、ダイヤモンドダストとプロミネンスはどうなったんだろう。
「鬼瓦さん!ダイヤモンドダストとプロミネンスのメンバーはどうなったんですか!」
「それが、あそこにはいなかったんだ」
「え……!」
「恐らく別の場所にいるんだろう。なに、心配するな。必ず見つけ出す。その時は連絡しよう」
いなかったってことは、爆発には巻き込まれてないってことだよね?無事に、どこかにいるといいんだけど。
……心配することないか。2人ともバカなわけじゃないし、なにより強いんだから。自力で逃げたに違いない。きっと、サッカーを続けていれば、また会える。
鬼瓦さんが吉良さんに声をかけた。……吉良さんは、"犯罪者"なんだ。
「お父さん……」
「ありがとう、瞳子。お前のおかげで目が覚めたよ」
「っ、父さん!俺、待ってるから!父さんが帰って来るまで、待ってるから!」
「あたしも、吉良さんのこと待ってます!ヒロトと、瞳子さんと!」
「ヒロト……美波さん……」
吉良さんを乗せたパトカーが走り去っていく。見送るヒロトや玲名達の表情は、とても寂しそうだった。
鬼瓦さんに促されて、玲名達も車へ乗り込んでいく。瞳子さんが守兄達の所へ行ったのが見えて、あたしもヒロトの元から離れる。
「響木監督。円堂くん達のこと、お願いしてもよろしいでしょうか。ヒロト達のそばにいたいんです」
「ああ」
「……ありがとう、みんな。ここまで来れたのも、みんながいたからこそよ。感謝してるわ。本当に、ありがとう」
『監督!』
「あたし達だって、感謝してます!監督がいたからここまで来れたんです!」
「美波さんには……辛い思いをさせてしまったわね」
「それだけじゃないです。またヒロト達と会えました!」
そりゃあ、敵同士でなければもっと良かったけど。この戦いがあったから出会えた仲間もいるんだ。それを、否定したくはない。
「……ありがとう」
最後に笑って、瞳子さんは背を向けた。立ち尽くすヒロトの隣で止まって、声をかける。
「さあ、行きましょう」
「! ……うん」
不器用に差し出された手を取って、歩き出す。手を繋いだ2人は、血は繋がっていないけれど、本当の姉弟なんだと思った。
ふと、ヒロトが足を止めた。
「円堂くん、美波ちゃん。また、会えるよね?」
「ああ、もちろんさ!」
「またきっと会えるよ!」
「「サッカーさえ続けていれば、絶対会える!」」
「……うん!」
みんなが、友達が、遠ざかっていく。……寂しいけど、別れは出会いへのキックオフなんだ。また会える日まで、サッカーを続けて待つ。それがあたしにできること。
「お疲れ様、美波ちゃん」
「……えへへ」
「けど、まずは手当てね」
「氷持ってきます!」
「お願いします!」
意識したら、手がヒリヒリしてきた。よくここまで気にせずに済んだと思う。
手当てをしてもらっていると、塔子の携帯に財前総理からの電話が入った。なんでも、あたし達に感謝状を贈りたいんだって。……あたしとしては、なんというか、大袈裟なような。
「よーし!それじゃあ雷門中に向けて出発だ!風丸達にも知らせなきゃならないしな!」
「「「おうっ!」」」
「そうだね……」
炎に呑まれて、崩れていく星の使徒研究所。あの大きなエイリア石も、爆発に巻き込まれて、無くなってしまっただろうな。
これから色々調べないといけない警察の人達は大変かもしれないけど、あんなもの、残しておいたっていいことは無い。これで、良かったんだ。
振り向くと、岩に腰をかけて、俯いているヒロト君を見つけた。近寄ってしゃがみこんで、視線を合わせる。
「ヒロト」
「美波、ちゃん」
「お疲れ様」
「っ……」
試合が終わった時から思ってた。お疲れ様って言ってあげたいって。きっとヒロト達のことを、世間の人は責めるだろうから。
当然だ。エイリア学園は、沢山の事をしてきた。各地の学校を破壊して、財前総理を誘拐して、日本中を騒がせ、人々を不安にさせてきた。
だからせめて、あたしだけでも、頑張ったヒロト達にそう伝えたかった。大好きな吉良さんのために一生懸命だったんだって。
いつも豪炎寺にされてるみたいに、俯くヒロト君の頭に手を置いて撫でてみる。頑張ったねの気持ちを込めて。地面が濡れて、小さな嗚咽が聞こえた。
「……優しいね、美波ちゃんは」
「そんなことないって」
ただ、もう大切な人達が悲しむのを、見たくないだけだ。
風に揺れる鮮やかな赤髪をぼんやりと見る。吉良ヒロトさんは、どんな人だったのかな……。
「また、助けられちゃったね」
「また?」
「君はいつもそうだ、俺の手を離さない。さっきも、あの日も」
顔を上げたヒロト君は、目を細めて笑った。
「……思い出したよ、全部」
「え?」
「君のこと、ずっと前から知ってたんだね。美波ちゃん」
「ヒロト、くん」
そこにいたのは、あの頃の"ヒロト君"だった。
「忘れたかったんだ」
しばらくして、ぽつりと、ヒロト君はそう呟いた。
「父さんのためなら何だって出来た。どんな訓練だって耐えられた。……サッカーで力を示すと言われる日までは」
「……」
「世界を脅かす目的のサッカーをする度に、記憶の中の君が邪魔をした。こんなサッカーを見たら、きっと悲しむだろうって、心のどこかで引っ掛かる」
「……ヒロト君」
「邪魔だったんだ、君が。だから……忘れたかった。君のことを、全部。そう、願った」
「……」
「そうすれば、父さんだけに尽くせると思った。父さんのための俺になれる。どんなことだって……俺にとっては、父さんが全てだったから」
エイリア石はヒロト君の願いを叶えた。だからあたしを覚えていなかった。そして石が無くなった今、忘れていた記憶も戻ってきたんだ。
……あのエイリア石の部屋で聞いた声は、過去のヒロト君のものだったのかな。今となっては、確認することはできないけれど。
「えー、じゃあ……久しぶり、になる?」
「……」
「ヒロト君?」
「俺は、君を切り捨てたんだよ。必要ないって」
「それはもう過ぎたことだし。ヒロト君が吉良さんのこと大好きなのは知ってるし」
「でも」
「あーもー、いいって!また友達になろう。ヒロト君……じゃなくて!ヒロト!」
右手を差し出せば、ヒロトの視線が行ったり来たりする。躊躇いがちに差し出された右手を掴んで勢いよく振れば、やっとヒロトは笑ってくれた。
ヒロトにつられてあたしも笑って、やっと、すとんと心の重荷が落ちていった。そうだ。こうして、ヒロトと笑い合いたかったんだ。
「この手……」
「あ」
応急措置で保たせた手が酷いことになってるのを忘れてた。ヒロトが手袋しててよかった。血は止まってるのが不幸中の幸いか。これ、跡残るかなあ。
「ごめん。見苦しくて」
「俺は好きだよ。美波ちゃんの、優しい手だ」
「そうかなあ」
……色々ありすぎて、ヒロトの中であの頃のあたしが美化されてないか。引き摺るようにヒロトを連れ回していた記憶しかない。
会話が途切れたところで、何台ものパトカーが来た。鬼瓦さん達の話に聞き耳をたてる。ジェミニストームやイプシロンのメンバーは、保護されたとのこと。
風介と晴矢は、ダイヤモンドダストとプロミネンスはどうなったんだろう。
「鬼瓦さん!ダイヤモンドダストとプロミネンスのメンバーはどうなったんですか!」
「それが、あそこにはいなかったんだ」
「え……!」
「恐らく別の場所にいるんだろう。なに、心配するな。必ず見つけ出す。その時は連絡しよう」
いなかったってことは、爆発には巻き込まれてないってことだよね?無事に、どこかにいるといいんだけど。
……心配することないか。2人ともバカなわけじゃないし、なにより強いんだから。自力で逃げたに違いない。きっと、サッカーを続けていれば、また会える。
鬼瓦さんが吉良さんに声をかけた。……吉良さんは、"犯罪者"なんだ。
「お父さん……」
「ありがとう、瞳子。お前のおかげで目が覚めたよ」
「っ、父さん!俺、待ってるから!父さんが帰って来るまで、待ってるから!」
「あたしも、吉良さんのこと待ってます!ヒロトと、瞳子さんと!」
「ヒロト……美波さん……」
吉良さんを乗せたパトカーが走り去っていく。見送るヒロトや玲名達の表情は、とても寂しそうだった。
鬼瓦さんに促されて、玲名達も車へ乗り込んでいく。瞳子さんが守兄達の所へ行ったのが見えて、あたしもヒロトの元から離れる。
「響木監督。円堂くん達のこと、お願いしてもよろしいでしょうか。ヒロト達のそばにいたいんです」
「ああ」
「……ありがとう、みんな。ここまで来れたのも、みんながいたからこそよ。感謝してるわ。本当に、ありがとう」
『監督!』
「あたし達だって、感謝してます!監督がいたからここまで来れたんです!」
「美波さんには……辛い思いをさせてしまったわね」
「それだけじゃないです。またヒロト達と会えました!」
そりゃあ、敵同士でなければもっと良かったけど。この戦いがあったから出会えた仲間もいるんだ。それを、否定したくはない。
「……ありがとう」
最後に笑って、瞳子さんは背を向けた。立ち尽くすヒロトの隣で止まって、声をかける。
「さあ、行きましょう」
「! ……うん」
不器用に差し出された手を取って、歩き出す。手を繋いだ2人は、血は繋がっていないけれど、本当の姉弟なんだと思った。
ふと、ヒロトが足を止めた。
「円堂くん、美波ちゃん。また、会えるよね?」
「ああ、もちろんさ!」
「またきっと会えるよ!」
「「サッカーさえ続けていれば、絶対会える!」」
「……うん!」
みんなが、友達が、遠ざかっていく。……寂しいけど、別れは出会いへのキックオフなんだ。また会える日まで、サッカーを続けて待つ。それがあたしにできること。
「お疲れ様、美波ちゃん」
「……えへへ」
「けど、まずは手当てね」
「氷持ってきます!」
「お願いします!」
意識したら、手がヒリヒリしてきた。よくここまで気にせずに済んだと思う。
手当てをしてもらっていると、塔子の携帯に財前総理からの電話が入った。なんでも、あたし達に感謝状を贈りたいんだって。……あたしとしては、なんというか、大袈裟なような。
「よーし!それじゃあ雷門中に向けて出発だ!風丸達にも知らせなきゃならないしな!」
「「「おうっ!」」」