第27話 凍てつく闇・ダイヤモンドダスト!
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沖縄を発つ前、船の時間まで自由時間になった。
「ね、しろ君。染岡にお土産買ってこうよ!」
「染岡くんに?」
「前にも言ったじゃん。今回は一旦稲妻町に戻るでしょ?一緒にお見舞いに行こう!半田達のことも紹介したいし」
「でも、今の僕は……」
「しろ君が選んでくれたらきっと染岡も喜ぶからさ!ね?」
「……うん。じゃあ、僕でよかったら」
ぎこちなく微笑んだしろ君と歩き出す。……しろ君、フォワードを託してくれた染岡に申し訳ない気持ちでいっぱいなんだろうな。
「戻ったら、風丸くんには会いに行くの?」
「……時間があったらね」
今、一郎太に会うのは、少し怖い。
船着き場近くのお土産屋さんに入る。お店には一之瀬もいた。
「あ、一之瀬もお土産?」
「俺もちょっとさ。代表で見繕ってこうと思って」
「代表?」
「西垣のね」
それだけ返して一之瀬は商品棚に視線を戻した。何でもないような雰囲気を装ってるけど、横顔には悔しさが滲んでるように見えた。
フットボールフロンティアで優勝したあの日、西垣から連絡が入ったのは、試合が終わって控え室で着替えてる時だ。
優勝を祝う言葉にいてもたってもいられなくなった一之瀬と土門は、支度もそこそこに飛び出していった。
一緒に記念写真に写れなかったのは残念だけど、数年越しに再会した幼馴染みに、会いたい気持ちが抑えられなくなるのも分かる。二人を見送る秋が苦笑いしてたっけ。
結果として、西垣には会えなかったらしい。詳しいことは聞けてない。到着した時には、ジェミニストームに木戸川清修は敗北していて、病院に運ばれた後だった。
雷門も襲撃を受けたのを聞いてとんぼ返りして、後はあたしも知ってる通りだ。迎えた秋も交えて三人が何を話したのかは、知らない。
ただ、雷門も木戸川も、傘美野も。後手に回って試合に出ることも出来なかった辛さは、二人にしか分からないことだと思う。……たとえ、負けは変わらなかったとしても。
「西垣くんって?」
「木戸川清修にいる一之瀬達の幼馴染み。全国大会でも戦ったんだ」
「一之瀬くん、土門くん、秋さんが幼馴染みなんだっけ」
「そうそう。アメリカにいた頃、四人でサッカーしてたんだって。あ、豪炎寺も元木戸川なんだよ!」
「……前から思ってたけど」
「どしたの」
「美波ちゃんは豪炎寺くんが好きなんだね」
「凄い奴だし、ああなりたいなって、思ってはいる……けど……」
マフラーを握りしめて俯くしろ君の表情は見えない。豪炎寺は好きだ。出会った日に抱いた憧れは、今も変わらない。それがどうしたっていうんだろう。
「雷門はストライカーを探して白恋に来た。そして僕をエースとして迎えてくれた。でも、美波ちゃんの心の中にはずっと豪炎寺くんがいた」
「それは……そうかもしれない。豪炎寺が、ずっと雷門のエースだったから。あたしにとって、エースの象徴……みたいな」
「だったら」
「でも!今は、しろ君のことも、雷門のエースストライカーだって思ってる!雷門が強くなれたのは、しろ君が引っ張って来てくれたからだ!」
視線を逸らそうとしたしろ君の肩を掴んで向き合う。伝えなきゃ。伝わるように。
いない選手に点は取れない。豪炎寺がいない間、チームを支えたのは紛れもなくしろ君だ。しろ君がいなければ、ここまで来れなかった。しろ君がいたから、強くなれた。
「だからさ、二人のエースストライカー、じゃダメかな」
「二人の……」
「うん!炎と氷のコンビなんて、凄そうじゃない?必殺技だって出来るかも!」
「僕と豪炎寺くんが?」
「あ、確かに豪炎寺みたいなシュートが撃てるようになりたいって思ってるけど、ディフェンスはしろ君が目標なんだ。うん、二人共あたしの憧れだ!」
「それはいいけどお店でイチャイチャするなって」
「うわあ一之瀬!?」
口を挟んできたのは会計を済ませた一之瀬。別にイチャついてたつもりはないんだけど……。お店で話すことじゃないのはそうだけども。
袋を揺らした一之瀬は「そろそろ集合時間だからね。お先!」と出て行った。いつの間にかそんなに経ってたんだ。また着信履歴が大変なことになる前にレジへ向かう。
「そうだ。事後報告になっちゃったんだけど、豪炎寺にアツヤのこと話した」
「あ……うん」
「立向居と条兄にもタイミングを見て話しておいた方がいいと思ってる。あと染岡」
「……ごめんね。任せちゃって」
「平気!一緒に行こうね、お見舞い」
こうしてあたし達は、条兄と豪炎寺をメンバーに加えて沖縄を発った。
「戻ってきたぞーっ!!」
「稲妻町!ただいまーっ!!」
「よし!一度家に帰ろう!」
稲妻町の河川敷。皆を見回した守兄が言った。長いこと留守にしてたし、お母さんも心配してるだろうな。
なっちゃんが家庭でのリフレッシュも大事だと後押しして、監督も一日くらいならいいと許可を出してくれた。やったね!
「おいおい、俺達はどうすんだよ」
「皆うちに来いよ!母ちゃんの肉じゃが、最高に旨いんだぜ!」
「俺肉じゃが大好きです!」
「俺はきらーい」
「好き嫌いはダメだって!……ん?」
急に何かの落下音が聞こえて空を見上げたら、落ちてきたのはエイリアの黒いサッカーボール。ボールからは、風介――ガゼルの声が聞こえた。
『雷門イレブンの諸君。我々ダイヤモンドダストはフットボールフロンティアスタジアムで待っている。来なければ、この黒いボールを無作為に東京に撃ち込む』
それだけ告げてボールは崩れ去った。無作為って、そんなことされたら東京が滅茶苦茶になる!……脅しでも、そういうこと言えるんだな。
考える時間も、迷う余地もない。急いでキャラバンに戻ると、スタジアムに向けて出発した。
「相手はどんな連中か全くの謎よ。どのような攻撃をしてくるかもわからない。豪炎寺くん、早速だけどフォワードを任せるわ」
「はい」
「豪炎寺くんは間違いなくマークされる。彼にボールを回すのも大事だけど、チャンスがあればゴールを狙いなさい」
『はい!』
まだ来てないのかと首を傾げていたら、相手側のベンチが青白く光って、収まるとガゼル率いるダイヤモンドダストが立っていた。
「エイリア学園マスターランクチーム、ダイヤモンドダスト」
「マスターランク?」
「円堂。君達に凍てつく闇の冷たさを教えてあげるよ」
「冷たいとか熱いとかなんてどうでもいい!サッカーで町や学校を壊そうなんて奴らは、俺は絶対許さない!」
……そうだ。サッカーを破壊の道具にするなんて、絶対に許しちゃいけないんだ。
ホイッスルが鳴ると、ダイヤモンドダストの選手は左右にはけて、ゴール前まで誰もいない状態になった。これは撃ってこいという挑発だ。
豪炎寺がゴール端を狙ってロングシュートを撃つ。それを難なく止めたダイヤモンドダストのキーパーは、ボールを振りかぶった。
投げられたボールは反対側の守兄まで届いた。端から端まで投げるなんて、どんな肩してるんだ。ともかくもう一度攻めるまで!
けれどダイヤモンドダストの方が早かった。素早く入り込まれて、パスコースが塞がれた。繋ごうにもカットされて、ガゼルにボールが回ってしまった。
小手調べのように打たれたノーマルシュートを、守兄がギリギリで止める。……流石はマスターランクのキャプテンのシュートだ。
カットしては奪い返される。一進一退のように見えるけど、少しずつ、着実に、雷門は押されていた。
「フローズンスティール!」
「きゃあっ!」
「リカ!」
「それが闇の冷たささ」
強力なブロックがリカを襲って、再びガゼルにボールが渡った。
「お手並み拝見といこうか……!」
美波!、と。言葉はなかったけど、なんとなく呼ばれたような気がした。あたしにチラリと視線を向けたガゼルが、シュートを放つ。なら、受けて立つ!
「壁山!」
「はいっす!」
「「ロックウォールダム!!」」
なんとか弾いたボールは、観客席の方へ。ボールを追って視線を向けて、別の所で止まった。ヒロト君と晴矢がいる。見に来てたんだ……。
何かが落ちる音がした。音の方には、さっき飛ばしてしまったボール。ひとりでに戻ってきた?かと思えば、一つの人影がフィールドに降り立った。
「アフロディ……!?」
思いもよらない再会に目を剥く。アフロディは、初めて会った時のような不敵な笑みを浮かべて、あたし達を見つめていた。
→あとがき
「ね、しろ君。染岡にお土産買ってこうよ!」
「染岡くんに?」
「前にも言ったじゃん。今回は一旦稲妻町に戻るでしょ?一緒にお見舞いに行こう!半田達のことも紹介したいし」
「でも、今の僕は……」
「しろ君が選んでくれたらきっと染岡も喜ぶからさ!ね?」
「……うん。じゃあ、僕でよかったら」
ぎこちなく微笑んだしろ君と歩き出す。……しろ君、フォワードを託してくれた染岡に申し訳ない気持ちでいっぱいなんだろうな。
「戻ったら、風丸くんには会いに行くの?」
「……時間があったらね」
今、一郎太に会うのは、少し怖い。
船着き場近くのお土産屋さんに入る。お店には一之瀬もいた。
「あ、一之瀬もお土産?」
「俺もちょっとさ。代表で見繕ってこうと思って」
「代表?」
「西垣のね」
それだけ返して一之瀬は商品棚に視線を戻した。何でもないような雰囲気を装ってるけど、横顔には悔しさが滲んでるように見えた。
フットボールフロンティアで優勝したあの日、西垣から連絡が入ったのは、試合が終わって控え室で着替えてる時だ。
優勝を祝う言葉にいてもたってもいられなくなった一之瀬と土門は、支度もそこそこに飛び出していった。
一緒に記念写真に写れなかったのは残念だけど、数年越しに再会した幼馴染みに、会いたい気持ちが抑えられなくなるのも分かる。二人を見送る秋が苦笑いしてたっけ。
結果として、西垣には会えなかったらしい。詳しいことは聞けてない。到着した時には、ジェミニストームに木戸川清修は敗北していて、病院に運ばれた後だった。
雷門も襲撃を受けたのを聞いてとんぼ返りして、後はあたしも知ってる通りだ。迎えた秋も交えて三人が何を話したのかは、知らない。
ただ、雷門も木戸川も、傘美野も。後手に回って試合に出ることも出来なかった辛さは、二人にしか分からないことだと思う。……たとえ、負けは変わらなかったとしても。
「西垣くんって?」
「木戸川清修にいる一之瀬達の幼馴染み。全国大会でも戦ったんだ」
「一之瀬くん、土門くん、秋さんが幼馴染みなんだっけ」
「そうそう。アメリカにいた頃、四人でサッカーしてたんだって。あ、豪炎寺も元木戸川なんだよ!」
「……前から思ってたけど」
「どしたの」
「美波ちゃんは豪炎寺くんが好きなんだね」
「凄い奴だし、ああなりたいなって、思ってはいる……けど……」
マフラーを握りしめて俯くしろ君の表情は見えない。豪炎寺は好きだ。出会った日に抱いた憧れは、今も変わらない。それがどうしたっていうんだろう。
「雷門はストライカーを探して白恋に来た。そして僕をエースとして迎えてくれた。でも、美波ちゃんの心の中にはずっと豪炎寺くんがいた」
「それは……そうかもしれない。豪炎寺が、ずっと雷門のエースだったから。あたしにとって、エースの象徴……みたいな」
「だったら」
「でも!今は、しろ君のことも、雷門のエースストライカーだって思ってる!雷門が強くなれたのは、しろ君が引っ張って来てくれたからだ!」
視線を逸らそうとしたしろ君の肩を掴んで向き合う。伝えなきゃ。伝わるように。
いない選手に点は取れない。豪炎寺がいない間、チームを支えたのは紛れもなくしろ君だ。しろ君がいなければ、ここまで来れなかった。しろ君がいたから、強くなれた。
「だからさ、二人のエースストライカー、じゃダメかな」
「二人の……」
「うん!炎と氷のコンビなんて、凄そうじゃない?必殺技だって出来るかも!」
「僕と豪炎寺くんが?」
「あ、確かに豪炎寺みたいなシュートが撃てるようになりたいって思ってるけど、ディフェンスはしろ君が目標なんだ。うん、二人共あたしの憧れだ!」
「それはいいけどお店でイチャイチャするなって」
「うわあ一之瀬!?」
口を挟んできたのは会計を済ませた一之瀬。別にイチャついてたつもりはないんだけど……。お店で話すことじゃないのはそうだけども。
袋を揺らした一之瀬は「そろそろ集合時間だからね。お先!」と出て行った。いつの間にかそんなに経ってたんだ。また着信履歴が大変なことになる前にレジへ向かう。
「そうだ。事後報告になっちゃったんだけど、豪炎寺にアツヤのこと話した」
「あ……うん」
「立向居と条兄にもタイミングを見て話しておいた方がいいと思ってる。あと染岡」
「……ごめんね。任せちゃって」
「平気!一緒に行こうね、お見舞い」
こうしてあたし達は、条兄と豪炎寺をメンバーに加えて沖縄を発った。
「戻ってきたぞーっ!!」
「稲妻町!ただいまーっ!!」
「よし!一度家に帰ろう!」
稲妻町の河川敷。皆を見回した守兄が言った。長いこと留守にしてたし、お母さんも心配してるだろうな。
なっちゃんが家庭でのリフレッシュも大事だと後押しして、監督も一日くらいならいいと許可を出してくれた。やったね!
「おいおい、俺達はどうすんだよ」
「皆うちに来いよ!母ちゃんの肉じゃが、最高に旨いんだぜ!」
「俺肉じゃが大好きです!」
「俺はきらーい」
「好き嫌いはダメだって!……ん?」
急に何かの落下音が聞こえて空を見上げたら、落ちてきたのはエイリアの黒いサッカーボール。ボールからは、風介――ガゼルの声が聞こえた。
『雷門イレブンの諸君。我々ダイヤモンドダストはフットボールフロンティアスタジアムで待っている。来なければ、この黒いボールを無作為に東京に撃ち込む』
それだけ告げてボールは崩れ去った。無作為って、そんなことされたら東京が滅茶苦茶になる!……脅しでも、そういうこと言えるんだな。
考える時間も、迷う余地もない。急いでキャラバンに戻ると、スタジアムに向けて出発した。
「相手はどんな連中か全くの謎よ。どのような攻撃をしてくるかもわからない。豪炎寺くん、早速だけどフォワードを任せるわ」
「はい」
「豪炎寺くんは間違いなくマークされる。彼にボールを回すのも大事だけど、チャンスがあればゴールを狙いなさい」
『はい!』
まだ来てないのかと首を傾げていたら、相手側のベンチが青白く光って、収まるとガゼル率いるダイヤモンドダストが立っていた。
「エイリア学園マスターランクチーム、ダイヤモンドダスト」
「マスターランク?」
「円堂。君達に凍てつく闇の冷たさを教えてあげるよ」
「冷たいとか熱いとかなんてどうでもいい!サッカーで町や学校を壊そうなんて奴らは、俺は絶対許さない!」
……そうだ。サッカーを破壊の道具にするなんて、絶対に許しちゃいけないんだ。
ホイッスルが鳴ると、ダイヤモンドダストの選手は左右にはけて、ゴール前まで誰もいない状態になった。これは撃ってこいという挑発だ。
豪炎寺がゴール端を狙ってロングシュートを撃つ。それを難なく止めたダイヤモンドダストのキーパーは、ボールを振りかぶった。
投げられたボールは反対側の守兄まで届いた。端から端まで投げるなんて、どんな肩してるんだ。ともかくもう一度攻めるまで!
けれどダイヤモンドダストの方が早かった。素早く入り込まれて、パスコースが塞がれた。繋ごうにもカットされて、ガゼルにボールが回ってしまった。
小手調べのように打たれたノーマルシュートを、守兄がギリギリで止める。……流石はマスターランクのキャプテンのシュートだ。
カットしては奪い返される。一進一退のように見えるけど、少しずつ、着実に、雷門は押されていた。
「フローズンスティール!」
「きゃあっ!」
「リカ!」
「それが闇の冷たささ」
強力なブロックがリカを襲って、再びガゼルにボールが渡った。
「お手並み拝見といこうか……!」
美波!、と。言葉はなかったけど、なんとなく呼ばれたような気がした。あたしにチラリと視線を向けたガゼルが、シュートを放つ。なら、受けて立つ!
「壁山!」
「はいっす!」
「「ロックウォールダム!!」」
なんとか弾いたボールは、観客席の方へ。ボールを追って視線を向けて、別の所で止まった。ヒロト君と晴矢がいる。見に来てたんだ……。
何かが落ちる音がした。音の方には、さっき飛ばしてしまったボール。ひとりでに戻ってきた?かと思えば、一つの人影がフィールドに降り立った。
「アフロディ……!?」
思いもよらない再会に目を剥く。アフロディは、初めて会った時のような不敵な笑みを浮かべて、あたし達を見つめていた。
→あとがき