第25話 逆襲!イプシロン改!!
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守兄と鬼道が肩を貸して、しろ君をベンチまで連れていくのが見える。
なのにあたしの足は動かない。フィールドに、立ち尽くしたまま。
何が力になるだ。支えてあげるだ。居場所になるだ。結局、また何も出来なかったじゃないか。
「吹雪、ここで見ていてくれ。俺達皆でお前の分まで戦い抜く!」
あたしなんかが、しろ君の分まで戦い抜けるのかな。
「行くぞ!皆!」
「吹雪がいなくなったからって弱くなったとは言わせねえよ!」
「任せとけ!吹雪の分までやってやる!」
あたしなんかが、本当にやれるのかな。
「美波」
「鬼道……」
「何をそんなに思い詰めている」
「あたしは、居場所になるって言ったのに、また何も出来なかった。しろ君が無理してるの、分かってたのに」
「……俺達は頼らず一緒に戦うと決めたが、吹雪が俺達を頼れなかった」
「しろ君に頼ってもらえない自分の弱さが嫌なんだよ」
「それはお前だけのせいじゃない」
「でも」
「らしくないな」
「っ……」
ゴーグルの奥からちらっと見えた、真っ直ぐな赤い瞳と目が合って、思わず顔を逸らす。
「いいのか、このままで」
「いい訳ないじゃん」
「なんだ、分かっているじゃないか。吹雪に負い目を感じているのなら、プレーで返せ」
「……出来るかな、あたしに」
言ってて自分で苦笑いだ。鬼道が言いたいことは、もうなんとなく分かってる。ただ、言葉で聞きたいだけで。
自分のことを信じきれなくても、鬼道の言葉なら信じられるから。
「俺の知っている円堂美波は、最後まで決して諦めないという奴だ。無茶はお前の必殺技だろう。無茶でも何でも、やってみろ」
「無茶でも何でも、か」
「勝利の女神がどちらに微笑むかなんて、最後までわからない。このことを教えてくれたのは、お前と円堂だ。戦うぞ、最後まで」
「鬼道……」
「何だ」
「守兄に似てきた?」
「……もう大丈夫そうだな。後で覚えていろ」
「えー」
踵を返して自分のポジションへ戻っていく、風に靡く青いマント。見えないけど確かにそこにある、背番号14。
自分でも情けない落ち込み方をしたな。ありがとう、励ましてくれて。
「試合再開!」
気を取り直して意気込んだのはいいものの、イプシロンの猛攻に雷門は防戦一方。突破されて、ボールを奪ってもすぐに取り返されてしまう。
ガニメデプロトンにガイアブレイク。畳み掛けるようなシュートの嵐を、守兄は全て防いでくれてるのに、なかなか攻撃に繋がらない。
点は取られてない。けれど雷門が劣勢なのは一目瞭然。皆に疲れが見えてきて、単純なパスやトラップでのミスが増えてきた。
攻めるより守る方が体力を使うし、守兄も究極奥義を短時間に何度も使っているからか、消耗が激しくて息が切れてる。まだ、前半なのにっ……!
「水……」
「遅い!メテオシャワー!」
「くそっ」
また、抜かれた。……ダメだ、焦っちゃ。焦らないで、しろ君の分まで!守ってるだけじゃ、勝てない!攻撃の流れを作るんだ!
「荒波!」
シュート体勢に入って、実際に蹴り抜くまでの隙を狙って押し流す。やった、辛うじて防げた。
「サーファーを、ナメんなあっ!」
目の前に転がったボールを、条兄がふらつきながらも前線へ蹴り上げて送る。パスはリカが受け取った。
「行くで!塔子!」
「「バタフライドリーム!!」」
「ワームホール」
つまらなさそうにシュートを止めたデザームは、ボールを鬼道へ投げた。撃って来いと。
「「ツインブースト!!」」
ツインブーストもワームホールで止められて、次は一之瀬にボールだ。守兄が前線まで上がってのザ・フェニックス。これもワームホールで止められた。
「円堂美波、お前もだ!」
「……アクアストリームッ!」
「ワームホール!」
全力で放ったあたしのシュートも、次の瞬間には止められていた。ドリルスマッシャーを使わせることすら出来ない。
しろ君が下がった雷門は決定力に欠いている。……こんな時、アイツがいてくれたらいいのに。
「ふむ……まだまだ延びしろはあるようだな。だが、最早お前達のシュートに興味はない」
あたしを一瞥してボールをフィールドの外へ投げたデザームは、衝撃の言葉を放った。
「私とフォワードのゼルのポジションチェンジだ」
『!』
「フォワードと、ゴールキーパー!?」
確かにルール上は問題ないけど、そんなの初めて見た。フィールドプレーヤー同士ならまだしも、ゴールキーパーが?
デザームとゼルが胸のボタンを押すと、一瞬でユニフォームが変わる。デザームは守兄を睨み付けるように見た。
「あの男が居ない今、興味はお前だ」
「俺?」
「宣言する。正義の鉄拳を破るのは、この私だ!」
驚きの宣言に息を呑む。まさか、そんな。デザームは、今まで以上のシュートを撃とうって……?
デザームはいとも簡単に鬼道からボールを奪うと、攻め込んできた。ミッドフィルダーやディフェンダーをも弾き飛ばす突破力。体の節々が痛い。
速くて強いドリブル。何てパワーだ。これが、本当にキーパーだった選手?
「覚悟はいいか!」
「来い!」
「円堂さんっ!」
立向居が叫んだ。立向居はずっと正義の鉄拳に違和感を感じてた。だから今度も、何かに気づいたのかもしれない。
デザームがボールを踏みつけると、フィールドに異空間への穴が開いて、こに吸い込まれるように消えた。どこだ、どこから来る……!
「グングニル!」
「正義の鉄拳!」
空中に開いた穴から飛び出してきたのは紫色の矢。一目見るだけで強力だと分かる凄烈なシュートがゴールに突き進む。
負けじと繰り出された正義の鉄拳は、宣言通りデザームによって破られてしまった。じいちゃんの究極奥義なのに!
「あの胸騒ぎはこれだったんだ」
「立向居、それって」
「……足りないと思ったんです。まだ、何かが……」
足りないって、もしかして、究極奥義はまだ完成してない?
「言い忘れたが、私の本来のポジションはゴールキーパーではない。フォワードだ」
疑問が尽きない中で、更に突き付けられたのは、衝撃の真実で。
0ー1となったスコアボードの数字が、やけに目についた。
→あとがき
なのにあたしの足は動かない。フィールドに、立ち尽くしたまま。
何が力になるだ。支えてあげるだ。居場所になるだ。結局、また何も出来なかったじゃないか。
「吹雪、ここで見ていてくれ。俺達皆でお前の分まで戦い抜く!」
あたしなんかが、しろ君の分まで戦い抜けるのかな。
「行くぞ!皆!」
「吹雪がいなくなったからって弱くなったとは言わせねえよ!」
「任せとけ!吹雪の分までやってやる!」
あたしなんかが、本当にやれるのかな。
「美波」
「鬼道……」
「何をそんなに思い詰めている」
「あたしは、居場所になるって言ったのに、また何も出来なかった。しろ君が無理してるの、分かってたのに」
「……俺達は頼らず一緒に戦うと決めたが、吹雪が俺達を頼れなかった」
「しろ君に頼ってもらえない自分の弱さが嫌なんだよ」
「それはお前だけのせいじゃない」
「でも」
「らしくないな」
「っ……」
ゴーグルの奥からちらっと見えた、真っ直ぐな赤い瞳と目が合って、思わず顔を逸らす。
「いいのか、このままで」
「いい訳ないじゃん」
「なんだ、分かっているじゃないか。吹雪に負い目を感じているのなら、プレーで返せ」
「……出来るかな、あたしに」
言ってて自分で苦笑いだ。鬼道が言いたいことは、もうなんとなく分かってる。ただ、言葉で聞きたいだけで。
自分のことを信じきれなくても、鬼道の言葉なら信じられるから。
「俺の知っている円堂美波は、最後まで決して諦めないという奴だ。無茶はお前の必殺技だろう。無茶でも何でも、やってみろ」
「無茶でも何でも、か」
「勝利の女神がどちらに微笑むかなんて、最後までわからない。このことを教えてくれたのは、お前と円堂だ。戦うぞ、最後まで」
「鬼道……」
「何だ」
「守兄に似てきた?」
「……もう大丈夫そうだな。後で覚えていろ」
「えー」
踵を返して自分のポジションへ戻っていく、風に靡く青いマント。見えないけど確かにそこにある、背番号14。
自分でも情けない落ち込み方をしたな。ありがとう、励ましてくれて。
「試合再開!」
気を取り直して意気込んだのはいいものの、イプシロンの猛攻に雷門は防戦一方。突破されて、ボールを奪ってもすぐに取り返されてしまう。
ガニメデプロトンにガイアブレイク。畳み掛けるようなシュートの嵐を、守兄は全て防いでくれてるのに、なかなか攻撃に繋がらない。
点は取られてない。けれど雷門が劣勢なのは一目瞭然。皆に疲れが見えてきて、単純なパスやトラップでのミスが増えてきた。
攻めるより守る方が体力を使うし、守兄も究極奥義を短時間に何度も使っているからか、消耗が激しくて息が切れてる。まだ、前半なのにっ……!
「水……」
「遅い!メテオシャワー!」
「くそっ」
また、抜かれた。……ダメだ、焦っちゃ。焦らないで、しろ君の分まで!守ってるだけじゃ、勝てない!攻撃の流れを作るんだ!
「荒波!」
シュート体勢に入って、実際に蹴り抜くまでの隙を狙って押し流す。やった、辛うじて防げた。
「サーファーを、ナメんなあっ!」
目の前に転がったボールを、条兄がふらつきながらも前線へ蹴り上げて送る。パスはリカが受け取った。
「行くで!塔子!」
「「バタフライドリーム!!」」
「ワームホール」
つまらなさそうにシュートを止めたデザームは、ボールを鬼道へ投げた。撃って来いと。
「「ツインブースト!!」」
ツインブーストもワームホールで止められて、次は一之瀬にボールだ。守兄が前線まで上がってのザ・フェニックス。これもワームホールで止められた。
「円堂美波、お前もだ!」
「……アクアストリームッ!」
「ワームホール!」
全力で放ったあたしのシュートも、次の瞬間には止められていた。ドリルスマッシャーを使わせることすら出来ない。
しろ君が下がった雷門は決定力に欠いている。……こんな時、アイツがいてくれたらいいのに。
「ふむ……まだまだ延びしろはあるようだな。だが、最早お前達のシュートに興味はない」
あたしを一瞥してボールをフィールドの外へ投げたデザームは、衝撃の言葉を放った。
「私とフォワードのゼルのポジションチェンジだ」
『!』
「フォワードと、ゴールキーパー!?」
確かにルール上は問題ないけど、そんなの初めて見た。フィールドプレーヤー同士ならまだしも、ゴールキーパーが?
デザームとゼルが胸のボタンを押すと、一瞬でユニフォームが変わる。デザームは守兄を睨み付けるように見た。
「あの男が居ない今、興味はお前だ」
「俺?」
「宣言する。正義の鉄拳を破るのは、この私だ!」
驚きの宣言に息を呑む。まさか、そんな。デザームは、今まで以上のシュートを撃とうって……?
デザームはいとも簡単に鬼道からボールを奪うと、攻め込んできた。ミッドフィルダーやディフェンダーをも弾き飛ばす突破力。体の節々が痛い。
速くて強いドリブル。何てパワーだ。これが、本当にキーパーだった選手?
「覚悟はいいか!」
「来い!」
「円堂さんっ!」
立向居が叫んだ。立向居はずっと正義の鉄拳に違和感を感じてた。だから今度も、何かに気づいたのかもしれない。
デザームがボールを踏みつけると、フィールドに異空間への穴が開いて、こに吸い込まれるように消えた。どこだ、どこから来る……!
「グングニル!」
「正義の鉄拳!」
空中に開いた穴から飛び出してきたのは紫色の矢。一目見るだけで強力だと分かる凄烈なシュートがゴールに突き進む。
負けじと繰り出された正義の鉄拳は、宣言通りデザームによって破られてしまった。じいちゃんの究極奥義なのに!
「あの胸騒ぎはこれだったんだ」
「立向居、それって」
「……足りないと思ったんです。まだ、何かが……」
足りないって、もしかして、究極奥義はまだ完成してない?
「言い忘れたが、私の本来のポジションはゴールキーパーではない。フォワードだ」
疑問が尽きない中で、更に突き付けられたのは、衝撃の真実で。
0ー1となったスコアボードの数字が、やけに目についた。
→あとがき