第19話 激震!最強のジェネシス!!
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手加減されてるのか、使うまでもないからか、ヒロト君は今のところ必殺シュートを撃ってこない。それは、チャンスなんじゃないか。
何としてでも一本止めよう。鬼道の指示に皆で頷いて、ディフェンスラインを下げ気味にして迎え撃つ。
「ザ・ウォール!」
「ザ・タワー!」
「旋風陣!」
「ボルケイノカット!」
何度目かのヒロト君のシュート。四重のブロックに加えて、下がってきた鬼道と一之瀬が蹴り返す。一つひとつは小さくても、それが重なればパワーは大きくなる筈だ!
あたしが繰り出した未完成のブロック技は瞬く間に削られていく。……まだまだ!足に力を込めて、体で受け止める。
まずい、浮きそう。歯を食い縛って踏ん張ろうとした時、背中に何かが触れた。あたしを支えてくれる力強い大きい手。守だ。……やれる。まだ、やれる!
「うあああああ!!」
「うおおおおお!!」
自分でも信じられないくらいの力が湧いてくるような。なんとなくだけど、そんな気がして。ちょっとだけ、威力が、落ちたような。
……あ、ダメだ。体が仰け反りかけた時、シュートがずるりと滑ったのを感じた。軌道がズレる。そして上昇するようにあたしの顎にクリティカルヒット。
「んぎゃっ」
そのまま守兄と一緒に後ろに吹っ飛んだあたしは、地面に仰向けに倒れ込んだ。お腹も背中も滅茶苦茶痛い。顎外れそう。外れてないけど。
シュートが後方へ飛んで行く。やっぱりダメだったか。行方を目で追っていれば、ボールはバーに当たって跳ね上がった。そして落ちてきたのは倒れるあたしの直ぐ横で。
「なんとなんとなんと!八人がかりでグランのシュートを防いだァ!」
角馬の声でやっと状況を理解出来た。止められたんだ、ヒロト君のシュート……。
よくやった。ナイスディフェンス。皆の声を聞きながら、なんとか上半身を起こす。こちらを見て目を細めるヒロト君に胸を張ってみせた。
「どうだ!」
「流石だね、美波ちゃん」
シュートを止められたのに、悔しがるでもなく嬉しそうなヒロト君が何を考えてるのかは相変わらずさっぱりだ。……ヒロト君の楽しみたいサッカーって、こういうこと?
「美波!大丈夫か!」
「うん!」
ゴール前に戻った守兄にそう返して、周りを伺う。とにもかくにもボールを抑えないと。立ち上がろうとして、足に力が入らないのに気づいた。
「あ、れ……」
足が震える。膝が笑う。思うように動かせない。まさか、今ので体力使いきった?
ドッと汗が出てきた。まずい。今は不思議そうな顔をしてるけど、あたしが動けないと分かればヒロト君は取りに来る。せっかく止められたのに、そんなの嫌だ!
動かせ。動かせ。ボールはすぐそこだ。足を伸ばせば届く位置。座ったまま震える足を無理矢理伸ばして、思い切り振る。
パスと言うにはあまりにも貧弱だったけど、状況を察知したのか戻ってきた一之瀬が拾ってくれた。回っていくボールを見送って、大きく息を吐く。
「おいおい……マジで大丈夫か?」
「ごめん、土門」
土門の手を借りてなんとか立ち上がる。あれ、こういう時って、いつもは一郎太じゃなかったっけ。
「一郎太、は」
いる筈のポジションを見るのが怖い。それでも見なければ後悔する気がして、恐る恐るそちらを向く。
一郎太は、信じられないものを見るような目を、あたしに向けていた。
「い、いち」
「吹雪!一人で無茶をするな!」
鬼道の声で我に返った。前線では、エターナルブリザードが必殺技を使わずに止められていた。今のシュート、アツヤじゃなくてしろ君が……?
雷門の攻撃はそれが最後になった。更にスピードを上げたジェネシスになす術はなくて、点差は20点。
無理を押して試合には出させてもらってるけど、さっきのプレー以降あたしは何も出来てない。ゴール前から殆ど動けないだけじゃない。あからさまに避けられてる。
ヒロト君にボールが渡った。守兄と一対一に持ち込む。嫌な、予感がした。
「来い!」
「好きだよ、円堂くん。君のその目!流星ブレード!」
激しい爆発が起きた。ついに放たれたヒロト君の必殺技。その名の通り流星みたいなシュートが、目映い光を放ちながらゴールへ突き進む。
これを食らったら守兄がヤバい。シュートの軌道上に飛び込む。どけと言われても構うもんか。今のあたしでも、壁くらいにはなれる。少しでいいから負担を軽く出来れば……!
「え……」
あたしの前に一人、走り込んできた。それは、
「うおおおお!!」
「吹雪!」
「しろ君っ!」
シュートはしろ君に直撃した。気づけばはね飛ばされたしろ君は目前に迫っていて、あたしを巻き込んで地面に叩きつけられた。……足、痛めたかも。
「吹雪!美波!」
「あ、あたしは平気!それよりしろ君が!」
駆け寄ってきた秋達にしろ君を預けて、応急手当をしてもらう。気を失ってぴくりとも動かないしろ君。顔色も悪い。無理、してたんだ……。
「大丈夫かな……」
ポツリと聞こえた声に振り返る。しろ君を見つめるヒロト君は、心配そうな表情を浮かべていた。
「美波ちゃん、足……」
しまった。気づかれた。
「これくらい平気!それよりヒロトの方は?」
「……俺?」
「だって、ヒロト辛そうだよ」
「! 俺は……」
「ヒロト!」
「っ、円堂くん……。それじゃあ、またね」
ジェネシスは消えてしまった。どこか悲しげなヒロト君の表情が、頭から離れない。
遠くから、サイレンが聞こえた。
***
「でもよかったわね、大事に至らなくて……」
しろ君が眠る病室で、なっちゃんが安心したように言った。不幸中の幸いで、しろ君は暫く安静にすれば、問題なく復帰出来るとのことだった。
そんな中で出てきた疑問。しろ君は、本当にボール取りに行っただけなのか。見たことないような顔してた。ボールを持ったら感じが変わる。妙に気持ちが高ぶってた。
次々に浮かび上がってくるしろ君への疑念に、誰もが考え込む。……気づかれた。いや、遅いくらいなのかもしれない。
試合中は雰囲気が変わる選手。そう思っていたのが、それでは説明出来ない段階まで来ていた。それ程までに、さっきのしろ君は異様な空気を纏っていた。
「監督は何か知っているんじゃないですか?」
「何か知ってるんですか?監督!」
視線が瞳子監督に集中する。……もう、秘密のままにしてはおけない。あたしに一瞬だけ目を向けて、監督は話し始めた。
しろ君にはアツヤという弟が"いた"こと。
しろ君が奪ってアツヤが決める、ディフェンダーとフォワードのコンビだったこと。
ある日、試合の帰り道で雪崩にあって、運よくしろ君は助かったけど、アツヤと両親は亡くなったこと。
それ以来、しろ君の中にはアツヤの人格がいるということ。全てを瞳子監督は話した。
「だったらどうして吹雪くんをチームに入れたんですか!今日みたいなことが起きることはわかっていたんじゃないですか!?」
秋の言葉が突き刺さる。秋は瞳子監督を責めてるけど、それは知ってたあたしだって同じだ。
しろ君の力になりたかった。何とかしてあげたいと思った。でも、あたしは頼ってもらえる程強くなかった。
居場所になるって言ったのに、結局自分のことばかりで。……何も出来なかった。
何としてでも一本止めよう。鬼道の指示に皆で頷いて、ディフェンスラインを下げ気味にして迎え撃つ。
「ザ・ウォール!」
「ザ・タワー!」
「旋風陣!」
「ボルケイノカット!」
何度目かのヒロト君のシュート。四重のブロックに加えて、下がってきた鬼道と一之瀬が蹴り返す。一つひとつは小さくても、それが重なればパワーは大きくなる筈だ!
あたしが繰り出した未完成のブロック技は瞬く間に削られていく。……まだまだ!足に力を込めて、体で受け止める。
まずい、浮きそう。歯を食い縛って踏ん張ろうとした時、背中に何かが触れた。あたしを支えてくれる力強い大きい手。守だ。……やれる。まだ、やれる!
「うあああああ!!」
「うおおおおお!!」
自分でも信じられないくらいの力が湧いてくるような。なんとなくだけど、そんな気がして。ちょっとだけ、威力が、落ちたような。
……あ、ダメだ。体が仰け反りかけた時、シュートがずるりと滑ったのを感じた。軌道がズレる。そして上昇するようにあたしの顎にクリティカルヒット。
「んぎゃっ」
そのまま守兄と一緒に後ろに吹っ飛んだあたしは、地面に仰向けに倒れ込んだ。お腹も背中も滅茶苦茶痛い。顎外れそう。外れてないけど。
シュートが後方へ飛んで行く。やっぱりダメだったか。行方を目で追っていれば、ボールはバーに当たって跳ね上がった。そして落ちてきたのは倒れるあたしの直ぐ横で。
「なんとなんとなんと!八人がかりでグランのシュートを防いだァ!」
角馬の声でやっと状況を理解出来た。止められたんだ、ヒロト君のシュート……。
よくやった。ナイスディフェンス。皆の声を聞きながら、なんとか上半身を起こす。こちらを見て目を細めるヒロト君に胸を張ってみせた。
「どうだ!」
「流石だね、美波ちゃん」
シュートを止められたのに、悔しがるでもなく嬉しそうなヒロト君が何を考えてるのかは相変わらずさっぱりだ。……ヒロト君の楽しみたいサッカーって、こういうこと?
「美波!大丈夫か!」
「うん!」
ゴール前に戻った守兄にそう返して、周りを伺う。とにもかくにもボールを抑えないと。立ち上がろうとして、足に力が入らないのに気づいた。
「あ、れ……」
足が震える。膝が笑う。思うように動かせない。まさか、今ので体力使いきった?
ドッと汗が出てきた。まずい。今は不思議そうな顔をしてるけど、あたしが動けないと分かればヒロト君は取りに来る。せっかく止められたのに、そんなの嫌だ!
動かせ。動かせ。ボールはすぐそこだ。足を伸ばせば届く位置。座ったまま震える足を無理矢理伸ばして、思い切り振る。
パスと言うにはあまりにも貧弱だったけど、状況を察知したのか戻ってきた一之瀬が拾ってくれた。回っていくボールを見送って、大きく息を吐く。
「おいおい……マジで大丈夫か?」
「ごめん、土門」
土門の手を借りてなんとか立ち上がる。あれ、こういう時って、いつもは一郎太じゃなかったっけ。
「一郎太、は」
いる筈のポジションを見るのが怖い。それでも見なければ後悔する気がして、恐る恐るそちらを向く。
一郎太は、信じられないものを見るような目を、あたしに向けていた。
「い、いち」
「吹雪!一人で無茶をするな!」
鬼道の声で我に返った。前線では、エターナルブリザードが必殺技を使わずに止められていた。今のシュート、アツヤじゃなくてしろ君が……?
雷門の攻撃はそれが最後になった。更にスピードを上げたジェネシスになす術はなくて、点差は20点。
無理を押して試合には出させてもらってるけど、さっきのプレー以降あたしは何も出来てない。ゴール前から殆ど動けないだけじゃない。あからさまに避けられてる。
ヒロト君にボールが渡った。守兄と一対一に持ち込む。嫌な、予感がした。
「来い!」
「好きだよ、円堂くん。君のその目!流星ブレード!」
激しい爆発が起きた。ついに放たれたヒロト君の必殺技。その名の通り流星みたいなシュートが、目映い光を放ちながらゴールへ突き進む。
これを食らったら守兄がヤバい。シュートの軌道上に飛び込む。どけと言われても構うもんか。今のあたしでも、壁くらいにはなれる。少しでいいから負担を軽く出来れば……!
「え……」
あたしの前に一人、走り込んできた。それは、
「うおおおお!!」
「吹雪!」
「しろ君っ!」
シュートはしろ君に直撃した。気づけばはね飛ばされたしろ君は目前に迫っていて、あたしを巻き込んで地面に叩きつけられた。……足、痛めたかも。
「吹雪!美波!」
「あ、あたしは平気!それよりしろ君が!」
駆け寄ってきた秋達にしろ君を預けて、応急手当をしてもらう。気を失ってぴくりとも動かないしろ君。顔色も悪い。無理、してたんだ……。
「大丈夫かな……」
ポツリと聞こえた声に振り返る。しろ君を見つめるヒロト君は、心配そうな表情を浮かべていた。
「美波ちゃん、足……」
しまった。気づかれた。
「これくらい平気!それよりヒロトの方は?」
「……俺?」
「だって、ヒロト辛そうだよ」
「! 俺は……」
「ヒロト!」
「っ、円堂くん……。それじゃあ、またね」
ジェネシスは消えてしまった。どこか悲しげなヒロト君の表情が、頭から離れない。
遠くから、サイレンが聞こえた。
***
「でもよかったわね、大事に至らなくて……」
しろ君が眠る病室で、なっちゃんが安心したように言った。不幸中の幸いで、しろ君は暫く安静にすれば、問題なく復帰出来るとのことだった。
そんな中で出てきた疑問。しろ君は、本当にボール取りに行っただけなのか。見たことないような顔してた。ボールを持ったら感じが変わる。妙に気持ちが高ぶってた。
次々に浮かび上がってくるしろ君への疑念に、誰もが考え込む。……気づかれた。いや、遅いくらいなのかもしれない。
試合中は雰囲気が変わる選手。そう思っていたのが、それでは説明出来ない段階まで来ていた。それ程までに、さっきのしろ君は異様な空気を纏っていた。
「監督は何か知っているんじゃないですか?」
「何か知ってるんですか?監督!」
視線が瞳子監督に集中する。……もう、秘密のままにしてはおけない。あたしに一瞬だけ目を向けて、監督は話し始めた。
しろ君にはアツヤという弟が"いた"こと。
しろ君が奪ってアツヤが決める、ディフェンダーとフォワードのコンビだったこと。
ある日、試合の帰り道で雪崩にあって、運よくしろ君は助かったけど、アツヤと両親は亡くなったこと。
それ以来、しろ君の中にはアツヤの人格がいるということ。全てを瞳子監督は話した。
「だったらどうして吹雪くんをチームに入れたんですか!今日みたいなことが起きることはわかっていたんじゃないですか!?」
秋の言葉が突き刺さる。秋は瞳子監督を責めてるけど、それは知ってたあたしだって同じだ。
しろ君の力になりたかった。何とかしてあげたいと思った。でも、あたしは頼ってもらえる程強くなかった。
居場所になるって言ったのに、結局自分のことばかりで。……何も出来なかった。