第16話 激闘!最凶イプシロン!!
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点を取られたイプシロンが奪い返そうと攻撃を仕掛けてくる。けれど守兄はこれまでとは違う出し方のマジン・ザ・ハンドでガイアブレイクを止めてみせた。
こんな土壇場な場面でパワーアップするなんて、やっぱり守兄は凄いや。あたしももっと頑張らないと。
時間は残り僅か。ディフェンスを突破したしろ君がゴール前でシュート体勢に入る。これがラストチャンスだ!
「これが最後だ!吹き飛ばす!エターナルブリザード!」
「来るか。ならば私も応えよう!ドリルスマッシャー!」
『!』
高々と掲げ上げられたデザームの手に現れたのは大きなドリル。突き出されたドリルに氷が削られ散っていく。程なくして、エターナルブリザードは弾かれた。
ワームホールだけじゃなかった。あれでも本気じゃなかったんだ。まだ、他に必殺技があったなんて……。
「私にドリルスマッシャーを使わせるとは……。ここまで楽しませてくれたのは初めてだ」
そう言ったデザームは笑っていて、本当にこの試合を楽しんでいたのが伝わってくる。他のイプシロンメンバーもそうだった。試合中に相手の技を称賛して。
彼らとまた楽しいサッカーを。それが少し叶ったようにも思えて。……これで世界の命運なんてのがかかっていなければ、どれだけよかっただろう。
試合終了を告げたデザームがボールを投げ捨てた。審判の古株さんが言うには、もう時間は残ってないそう。引き上げを命じて背を向けたデザームに食って掛かったのはしろ君だった。
「っ、ふざけんな!」
「吹雪!よせ!」
「待ってしろ君!」
「まだ勝負はついてねえぞ!逃げるな!」
「再び戦う時はこうでない、我らは真の力を示しに現れる」
黒いサッカーボールが発光する。光が収まった時には、もうイプシロンの姿はない。結果は同点。試合は引き分けに終わった。
「大丈夫か?」
「……なんでもない。もう一点が取れなくて、ごめんね」
「でも、負けなかったのはお前のおかげだ!ありがとな!」
「前は全然だったのが引き分けに持ち込めたのはしろ君がいたからだよ!」
それでもしろ君の浮かない顔は晴れなくて。軽く手を上げて応えると、どこかへ行ってしまった。また顔を洗いに行ったのかな。
暗い表情をしてるのは一郎太もだ。ここでの特訓に手応えを感じてたからこそ、勝ちきれなかったのが響いてる。
確かに勝てなかった。でもこの試合で得られたものはそれだけじゃない。勝てなかった以上に、負けなかったんだ。イプシロンと引き分けたんだ。
ちょっと見方を変えてみればそれはとても大きな進歩で。皆の顔も明るくなっていく。単純かもしれないけど、少しずつ、あたし達は前進してるんだ!
「答えはシンプルだ。互角に戦えるなら勝利の確立は50%だ。相手から1%奪い取れば勝てる」
「お兄ちゃん、なんかキャプテンに似てきた」
「本当!最初の頃と比べたら大違いだよね」
「……」
「痛い痛い痛い!」
口角を上げた鬼道が無言のままに頬をギュッとつねってくる。あ、このニタァって笑い方、久しぶりに見たな。夕弥が引いてるじゃん。
鬼道を引き離した守兄が詰め寄ってるのを眺めてると、瞳子監督がやってきた。いつもより表情が柔らかい監督にこっちまで嬉しくなってくる。
「勝つところまでは至らなかったけど、一歩前進。でも気を緩めないで」
「そうよ。勝利しないかぎり、エイリア学園はまた現れるわ」
「よーし!次は勝つぞ!」
『おーっ!』
「どうした、美波?」
「ちょっとしろ君探してくるね」
一郎太に言い残して、あたしは話している皆の輪からそっと離れると、グラウンドから出た。
明かりはついてるのに薄暗い廊下を歩く。ここの階層は今日初めて来たから、正直今自分がどこを歩いてるかよく分からない。
「ん?」
なんか電子音?がした。音の方を目を凝らして見てみると、壁にうっすらと線が見えた。触れながら線を辿って確信する。これドアだ!ここに秘密の部屋がある!
……風介から貰ったカードキーはポケットにある。上のフロアに使えそうな場所は無かった。なら、もしかしたら。
しろ君は気になるけど、今この機会を逃したらもうここには来れないかもしれない。心の中で謝って、目の前のドアを優先することにした。
近くの壁を探すと丁度カードキーと同じ大きさのスリットを見つけた。これだ。カードを通すと、ドアが音もなく開く。部屋はそんなに広くなかった。モニターと手前にはキーボード。
端に置かれていたダンボール箱には、あのエイリア学園の黒いサッカーボールがぎっしり。持ち上げようとしても持ち上がらない。そういや守兄が重かったって言ってたな。
モニター前に差し込み口を見つけて、カードキーを入れれば電源がついた。とりあえず手当たり次第にキーボードを叩くと、沢山の文字列が現れる。
……何だろうこのプログラム。さっぱり分からない。ちんぷんかんぷんだ。やっぱり一郎太……いや、鬼道あたりについてきてもらった方が良かったかな。
「ジェミニストーム、イプシロン……G?」
Gって何だろ。チーム名?略称かな?コードネーム的なの。
更に見てくとこれは特訓データなのがなんとなく分かって、ダイヤモンドダスト、プロミネンスというのも出てきた。なんかこれ風介と晴君っぽいな。じゃあGがヒロト君のチームか。
他には何か無いだろうか。何でもいい。エイリア学園に関わる情報なら、何だって欲しい。Gと名付けられたファイルを開こうとした時、ブツン!と嫌な音がした。
「えっ、嘘お……」
真っ黒になったモニターはうんともすんとも言わない。……壊した?それとも勝手に弄ったからセキュリティ的なのが動いて強制終了したのか。
仕方ない。後で瞳子監督にチーム名のことだけ伝えよう。これだけでも監督なら何か知ってるかもしれない。
カードキーをポケットに仕舞って部屋を出ると、直ぐにドアが閉まる。もう一度開けようとしても、もうドアが開くことはなかった。
「うーん」
「美波ちゃん」
「わっ!?……あ、しろ君か。どしたの?」
「風丸くんに僕を探しに行ったって聞いたから、すれ違っちゃったかと思って」
「探しに来てくれたんだ。ありがとね」
「ううん。僕も美波ちゃんと話したかったから」
そう言って壁に背中を預けたしろ君の隣に並ぶ。話したいことってなんだろう。
「美波ちゃんは、僕はどうしたらいいと思う?」
「え、どうしたらって」
「止められちゃった、アツヤのシュート」
「大丈夫だよ!試合中もしろ君は進化してた。シュートの威力が上がってた。今は駄目でも、いつかドリルスマッシャーだって破れるよ!」
「……」
「あたし、しろ君が沢山頑張ってるの知ってるよ。誰よりも長く特訓してた。守兄も言ってたけど、だから負けなかったんだ。しろ君の努力はちゃんと実ってる!」
「……うん」
励まそうとしてもしろ君の表情は暗いままだ。どうしたら元気を出してくれるかな。
「……美波ちゃんは」
「しろ君?」
「美波ちゃんは、どこにもいかないよね」
「え?」
「僕と一緒に、いてくれる?」
「もちろんだよ!一緒に強くなろう!」
しろ君は大切な仲間だ。震える背中をぽんぽん叩いて、もう片方の手で握りしめられた拳を解く。大丈夫、大丈夫だから。伝わりますように。
伸びてきた腕があたしの背中に回った。されるがままに抱き寄せられる。暫くそうしてれば、しろ君はやっと笑ってくれた。
「ありがとう、美波ちゃん」
「どういたしまして!」
仲間がいれば、どんな高い壁だって、一緒に乗り越えていける。
そう、信じていたかった。
→あとがき
こんな土壇場な場面でパワーアップするなんて、やっぱり守兄は凄いや。あたしももっと頑張らないと。
時間は残り僅か。ディフェンスを突破したしろ君がゴール前でシュート体勢に入る。これがラストチャンスだ!
「これが最後だ!吹き飛ばす!エターナルブリザード!」
「来るか。ならば私も応えよう!ドリルスマッシャー!」
『!』
高々と掲げ上げられたデザームの手に現れたのは大きなドリル。突き出されたドリルに氷が削られ散っていく。程なくして、エターナルブリザードは弾かれた。
ワームホールだけじゃなかった。あれでも本気じゃなかったんだ。まだ、他に必殺技があったなんて……。
「私にドリルスマッシャーを使わせるとは……。ここまで楽しませてくれたのは初めてだ」
そう言ったデザームは笑っていて、本当にこの試合を楽しんでいたのが伝わってくる。他のイプシロンメンバーもそうだった。試合中に相手の技を称賛して。
彼らとまた楽しいサッカーを。それが少し叶ったようにも思えて。……これで世界の命運なんてのがかかっていなければ、どれだけよかっただろう。
試合終了を告げたデザームがボールを投げ捨てた。審判の古株さんが言うには、もう時間は残ってないそう。引き上げを命じて背を向けたデザームに食って掛かったのはしろ君だった。
「っ、ふざけんな!」
「吹雪!よせ!」
「待ってしろ君!」
「まだ勝負はついてねえぞ!逃げるな!」
「再び戦う時はこうでない、我らは真の力を示しに現れる」
黒いサッカーボールが発光する。光が収まった時には、もうイプシロンの姿はない。結果は同点。試合は引き分けに終わった。
「大丈夫か?」
「……なんでもない。もう一点が取れなくて、ごめんね」
「でも、負けなかったのはお前のおかげだ!ありがとな!」
「前は全然だったのが引き分けに持ち込めたのはしろ君がいたからだよ!」
それでもしろ君の浮かない顔は晴れなくて。軽く手を上げて応えると、どこかへ行ってしまった。また顔を洗いに行ったのかな。
暗い表情をしてるのは一郎太もだ。ここでの特訓に手応えを感じてたからこそ、勝ちきれなかったのが響いてる。
確かに勝てなかった。でもこの試合で得られたものはそれだけじゃない。勝てなかった以上に、負けなかったんだ。イプシロンと引き分けたんだ。
ちょっと見方を変えてみればそれはとても大きな進歩で。皆の顔も明るくなっていく。単純かもしれないけど、少しずつ、あたし達は前進してるんだ!
「答えはシンプルだ。互角に戦えるなら勝利の確立は50%だ。相手から1%奪い取れば勝てる」
「お兄ちゃん、なんかキャプテンに似てきた」
「本当!最初の頃と比べたら大違いだよね」
「……」
「痛い痛い痛い!」
口角を上げた鬼道が無言のままに頬をギュッとつねってくる。あ、このニタァって笑い方、久しぶりに見たな。夕弥が引いてるじゃん。
鬼道を引き離した守兄が詰め寄ってるのを眺めてると、瞳子監督がやってきた。いつもより表情が柔らかい監督にこっちまで嬉しくなってくる。
「勝つところまでは至らなかったけど、一歩前進。でも気を緩めないで」
「そうよ。勝利しないかぎり、エイリア学園はまた現れるわ」
「よーし!次は勝つぞ!」
『おーっ!』
「どうした、美波?」
「ちょっとしろ君探してくるね」
一郎太に言い残して、あたしは話している皆の輪からそっと離れると、グラウンドから出た。
明かりはついてるのに薄暗い廊下を歩く。ここの階層は今日初めて来たから、正直今自分がどこを歩いてるかよく分からない。
「ん?」
なんか電子音?がした。音の方を目を凝らして見てみると、壁にうっすらと線が見えた。触れながら線を辿って確信する。これドアだ!ここに秘密の部屋がある!
……風介から貰ったカードキーはポケットにある。上のフロアに使えそうな場所は無かった。なら、もしかしたら。
しろ君は気になるけど、今この機会を逃したらもうここには来れないかもしれない。心の中で謝って、目の前のドアを優先することにした。
近くの壁を探すと丁度カードキーと同じ大きさのスリットを見つけた。これだ。カードを通すと、ドアが音もなく開く。部屋はそんなに広くなかった。モニターと手前にはキーボード。
端に置かれていたダンボール箱には、あのエイリア学園の黒いサッカーボールがぎっしり。持ち上げようとしても持ち上がらない。そういや守兄が重かったって言ってたな。
モニター前に差し込み口を見つけて、カードキーを入れれば電源がついた。とりあえず手当たり次第にキーボードを叩くと、沢山の文字列が現れる。
……何だろうこのプログラム。さっぱり分からない。ちんぷんかんぷんだ。やっぱり一郎太……いや、鬼道あたりについてきてもらった方が良かったかな。
「ジェミニストーム、イプシロン……G?」
Gって何だろ。チーム名?略称かな?コードネーム的なの。
更に見てくとこれは特訓データなのがなんとなく分かって、ダイヤモンドダスト、プロミネンスというのも出てきた。なんかこれ風介と晴君っぽいな。じゃあGがヒロト君のチームか。
他には何か無いだろうか。何でもいい。エイリア学園に関わる情報なら、何だって欲しい。Gと名付けられたファイルを開こうとした時、ブツン!と嫌な音がした。
「えっ、嘘お……」
真っ黒になったモニターはうんともすんとも言わない。……壊した?それとも勝手に弄ったからセキュリティ的なのが動いて強制終了したのか。
仕方ない。後で瞳子監督にチーム名のことだけ伝えよう。これだけでも監督なら何か知ってるかもしれない。
カードキーをポケットに仕舞って部屋を出ると、直ぐにドアが閉まる。もう一度開けようとしても、もうドアが開くことはなかった。
「うーん」
「美波ちゃん」
「わっ!?……あ、しろ君か。どしたの?」
「風丸くんに僕を探しに行ったって聞いたから、すれ違っちゃったかと思って」
「探しに来てくれたんだ。ありがとね」
「ううん。僕も美波ちゃんと話したかったから」
そう言って壁に背中を預けたしろ君の隣に並ぶ。話したいことってなんだろう。
「美波ちゃんは、僕はどうしたらいいと思う?」
「え、どうしたらって」
「止められちゃった、アツヤのシュート」
「大丈夫だよ!試合中もしろ君は進化してた。シュートの威力が上がってた。今は駄目でも、いつかドリルスマッシャーだって破れるよ!」
「……」
「あたし、しろ君が沢山頑張ってるの知ってるよ。誰よりも長く特訓してた。守兄も言ってたけど、だから負けなかったんだ。しろ君の努力はちゃんと実ってる!」
「……うん」
励まそうとしてもしろ君の表情は暗いままだ。どうしたら元気を出してくれるかな。
「……美波ちゃんは」
「しろ君?」
「美波ちゃんは、どこにもいかないよね」
「え?」
「僕と一緒に、いてくれる?」
「もちろんだよ!一緒に強くなろう!」
しろ君は大切な仲間だ。震える背中をぽんぽん叩いて、もう片方の手で握りしめられた拳を解く。大丈夫、大丈夫だから。伝わりますように。
伸びてきた腕があたしの背中に回った。されるがままに抱き寄せられる。暫くそうしてれば、しろ君はやっと笑ってくれた。
「ありがとう、美波ちゃん」
「どういたしまして!」
仲間がいれば、どんな高い壁だって、一緒に乗り越えていける。
そう、信じていたかった。
→あとがき