第16話 激闘!最凶イプシロン!!
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後半開始。前半と変わらない、一進一退で拮抗した展開だ。何としてでも点が欲しいのは雷門もイプシロンも同じ。
そんな中でディフェンスに走るしろ君の動きはぎこちない。何だろう、これ。苦しそうで、何かを押し留めようとしてる……?
「……アツヤ?」
アツヤはしろ君のもう一つの人格で、もう一人のしろ君のような存在だ。点を取りたい。デザームに勝ちたい。それを強く意識してるから、しろ君のディフェンスに影響が出て……?
ボールを受け取れば、直ぐに雰囲気が変わった。アツヤになったしろ君は鬼道の制止も聞かず、パスも出さずに攻め込むと、そのままシュート体勢に入る。
前半より威力の上がったエターナルブリザード。それでもワームホールは破れない。なおもより強いシュートを求めるデザームに、しろ君の苛立ちは募る一方だ。
「お前は撃たないのか」
「チャンスがあれば撃つかもね!」
あたしを見ながら聞いてきたデザームにそう返してポジションに戻る。……この状況、しろ君のフォローに専念した方がいい。あたしが、しろ君を支えるんだ。
イプシロンの攻撃陣が攻めてくる。しろ君が抜かれた。いや、抜かれたんじゃない。動けなかったんだ。
ゼル、メトロン、マキュアがゴールに迫る。鬼道と一之瀬とアイコンタクトして、あたしはマキュアの行く手を塞いだ。
「っ!邪魔!」
「邪魔してるからね!行かせないよ!」
舌打ちしたマキュアがボールを戻す。すかさず一之瀬がフレイムダンスで奪い取ると、鬼道がしろ君に繋ぐ。何度目かのエターナルブリザードを、デザームは笑って受け止めた。
撃つ度に威力が上がってるんだ。確かに少しずつ押してる。それでもまだ届かないなんて……なんか違和感が、ある気がする。
「ガイアブレイクだ!戦術時間2.7秒!」
「「「ラジャー!ガイアブレイク!!!」」」
強力な連携シュートがゴールへ飛ぶ。旋風陣で止めようとした夕弥も巻き込んで、守兄は一緒にゴールに叩き込まれた。取られた、先取点……。
「どうしよう、俺のせいで……」
「大丈夫だ。まだ時間はある。走り続ければなんとかなる!」
「そうだよ!諦めなければいける!」
「さあ!ここからだ!気持ちを切り替えていくぞ!」
『おう!』
「キャプテン……美波のバーカ」
「何であたしだけバカなの!?」
点を取り返したい雷門と引き離したいイプシロンのぶつかり合いが続く。後半も半分を切った。とにかく点が欲しい。湧き上がる焦りを抑え込んで、これ以上失点しないよう走る。
土門が地面を切り裂くように足を振ると、火が噴き出してボールをクリアした。新技、ボルケイノカット!……いつの間に作ったんだろ。しろ君だけじゃない。あたしも、皆に負けてられない。
特訓の積み重ねで荒波の威力と精度、速さは日に日に上がってる。だからこそもう一つ上を目指したい。って、それを考えるのは後!
マキュアのコースを塞ぐ。イプシロンの攻撃はコンマ単位。一人でも遅れれば、計算は狂う!
「何でマキュアの邪魔するのっ!」
「これ以上点はやらせないからね!」
「どけ!」
「どかない!」
食い下がっていればプレーが乱れた。これなら取れる。荒波を発動させる前に聞こえてきたのは、絞り出すような声。
「……嫌い」
「え?」
「マキュア、アンタのこと嫌いっ!」
頭が真っ白になった。
動けないあたしを見向きもせずに、マキュアが走り抜けていく。まずい。止めないと。
「旋風陣!何やってんだよバカ美波!」
「……ごめん、夕弥。ナイスディフェンス!」
「ふんっ。しっかりしろよ!」
……嫌い、か。そう思われても仕方ないことしてる。明王ちゃんが言ってた通り、それだけの覚悟を挫こうとしてるんだから。
でも、こうして直接言われると、流石に堪えたな。
「(それでも)」
時間はもう少ない。悩むのも迷うのも考えるのも後。ハチマキをキツくしめて頬を叩く。シュートを止められたしろ君が気がかりだ。
放られたボールをクリアをして試合を止める。肩で息をするしろ君に駆け寄ると、あたしを一瞬だけ見てまたデザームの方を向いてしまった。
「オレがシュートを決めねえと。決めねえと、オレに居場所は……」
「しろ君!」
「もう、一人になるのは」
「こっち見て!」
肩を掴んで無理矢理振り返らせる。あたしを見るしろ君の瞳は、青くなったり金色になったりで、不安そうに揺れていた。
「美波……」
「居場所ならある。ここが、雷門がしろ君の居場所だよ」
「でも、みんな、オレが点を取らなくちゃ。そうしないと、僕は」
「大丈夫!あたしがいるよ。あたしが居場所になるからさ!」
雷門のエースストライカー。仲間から点を取ることを期待されている攻撃の要。その重圧は、あたしには計り知れない。
だから伝えたかった。確かに試合には勝ちたいけど、たとえ勝てなくても、雷門にはしろ君が必要なんだって。また皆でもっと強くなればいいんだって。
豪炎寺は……どう思ってたのかな。いざと言う時、必ず点を取ってくれた。見てるだけで焦げ付いてしまいそうな背中に憧れた。あの、背番号10は。
「美波ちゃん……。うん、ありがとう」
「どういたしまして。それでさ、ちょっと気になったことがあるんだ」
「気になったこと?」
「あれだけレベルアップしたのに、本当にまだ足りないのかなって思って。なんか、狙い過ぎてかえって威力が落ちてるっていうか」
「……」
「上手く言えないんだけど、シュートにパワーが乗り切ってないっていうか……ご、ごめん!余計なこと言った。次、ボール回すね」
「……待て」
「ん?」
「何か、策があるのか」
「……ちょっと考えたんだけど」
突発的に考えた作戦に、しろ君は頷いてくれた。これが鬼道ならもっと細かく案を出してくれただろうけど、そこまで余裕はない。
ゼルのガニメデプロトンを夕弥が旋風陣で止めた。雷門の攻撃だ。強引に攻めるしろ君を鬼道は無茶だと呼び止めようとするけど、あたしにはさっきまでとは違って見えた。
ゴール前の最終ライン。イプシロンのディフェンダーがブロックに入るより前に、体を反転させたしろ君が自陣へのボールを蹴り出した。
「吹雪!?」
「おおっとどうした吹雪!突然戻したぞ!」
大丈夫。届いた。
弧を描いたボールは、真っ直ぐ、あたしの元へ。
信じてくれたしろ君の為に。作れ、道を。
「アクアストリームッ!!」
すかさず蹴り上げて打ち返す。イプシロンのミッドフィルダーとディフェンダーを蹴散らして、あたしのシュートは、しろ君に届いた。
「見えたぜ……!エターナルブリザード!!」
シュートの軌道に合わせた今までで一番の威力のエターナルブリザード。猛吹雪はデザームが展開させたワームホールに抑え込まれることなく、勢いのままに吹き飛ばした。
一拍置いてホイッスルが鳴り響く。得点板は1-1。同点に追い付いた!デザームの守るゴールを、ついに破ったんだ!
「やった……やったー!」
「美波!」
「うわっ」
いつの間に戻ってきたのか、しろ君が飛び付いてきた。倒れないように踏ん張って様子を伺う。その橫顔はとても満足げだ。
「……お前のシュートで道が見えた。美波が、いてくれたから」
「それは違うよしろ君。あたしはちょっと手伝っただけ。決めたのはしろ君の実力!」
「美波ちゃん……ありがとう」
よっぽど嬉しいのかぎゅうぎゅうと抱き締めてくるしろ君。とりあえず豪炎寺の真似で頭を撫でてみたら力が強くなった。どうしよう。そろそろ試合再開だけど。
「吹雪、それくらいにしておけ」
「風丸くん……嫉妬はよくないよ」
「なっ吹雪!俺はただ、美波が困ってるから」
「そういうことにしておくね」
にっこり微笑んだしろ君がポジションに戻っていく。何だったんだ、一体。
「ありがと一郎太。どうしようかと思ってたんだ」
「……俺は美波の幼馴染みだからな」
「いつもありがとうね。さ、もう一息!」
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そんな中でディフェンスに走るしろ君の動きはぎこちない。何だろう、これ。苦しそうで、何かを押し留めようとしてる……?
「……アツヤ?」
アツヤはしろ君のもう一つの人格で、もう一人のしろ君のような存在だ。点を取りたい。デザームに勝ちたい。それを強く意識してるから、しろ君のディフェンスに影響が出て……?
ボールを受け取れば、直ぐに雰囲気が変わった。アツヤになったしろ君は鬼道の制止も聞かず、パスも出さずに攻め込むと、そのままシュート体勢に入る。
前半より威力の上がったエターナルブリザード。それでもワームホールは破れない。なおもより強いシュートを求めるデザームに、しろ君の苛立ちは募る一方だ。
「お前は撃たないのか」
「チャンスがあれば撃つかもね!」
あたしを見ながら聞いてきたデザームにそう返してポジションに戻る。……この状況、しろ君のフォローに専念した方がいい。あたしが、しろ君を支えるんだ。
イプシロンの攻撃陣が攻めてくる。しろ君が抜かれた。いや、抜かれたんじゃない。動けなかったんだ。
ゼル、メトロン、マキュアがゴールに迫る。鬼道と一之瀬とアイコンタクトして、あたしはマキュアの行く手を塞いだ。
「っ!邪魔!」
「邪魔してるからね!行かせないよ!」
舌打ちしたマキュアがボールを戻す。すかさず一之瀬がフレイムダンスで奪い取ると、鬼道がしろ君に繋ぐ。何度目かのエターナルブリザードを、デザームは笑って受け止めた。
撃つ度に威力が上がってるんだ。確かに少しずつ押してる。それでもまだ届かないなんて……なんか違和感が、ある気がする。
「ガイアブレイクだ!戦術時間2.7秒!」
「「「ラジャー!ガイアブレイク!!!」」」
強力な連携シュートがゴールへ飛ぶ。旋風陣で止めようとした夕弥も巻き込んで、守兄は一緒にゴールに叩き込まれた。取られた、先取点……。
「どうしよう、俺のせいで……」
「大丈夫だ。まだ時間はある。走り続ければなんとかなる!」
「そうだよ!諦めなければいける!」
「さあ!ここからだ!気持ちを切り替えていくぞ!」
『おう!』
「キャプテン……美波のバーカ」
「何であたしだけバカなの!?」
点を取り返したい雷門と引き離したいイプシロンのぶつかり合いが続く。後半も半分を切った。とにかく点が欲しい。湧き上がる焦りを抑え込んで、これ以上失点しないよう走る。
土門が地面を切り裂くように足を振ると、火が噴き出してボールをクリアした。新技、ボルケイノカット!……いつの間に作ったんだろ。しろ君だけじゃない。あたしも、皆に負けてられない。
特訓の積み重ねで荒波の威力と精度、速さは日に日に上がってる。だからこそもう一つ上を目指したい。って、それを考えるのは後!
マキュアのコースを塞ぐ。イプシロンの攻撃はコンマ単位。一人でも遅れれば、計算は狂う!
「何でマキュアの邪魔するのっ!」
「これ以上点はやらせないからね!」
「どけ!」
「どかない!」
食い下がっていればプレーが乱れた。これなら取れる。荒波を発動させる前に聞こえてきたのは、絞り出すような声。
「……嫌い」
「え?」
「マキュア、アンタのこと嫌いっ!」
頭が真っ白になった。
動けないあたしを見向きもせずに、マキュアが走り抜けていく。まずい。止めないと。
「旋風陣!何やってんだよバカ美波!」
「……ごめん、夕弥。ナイスディフェンス!」
「ふんっ。しっかりしろよ!」
……嫌い、か。そう思われても仕方ないことしてる。明王ちゃんが言ってた通り、それだけの覚悟を挫こうとしてるんだから。
でも、こうして直接言われると、流石に堪えたな。
「(それでも)」
時間はもう少ない。悩むのも迷うのも考えるのも後。ハチマキをキツくしめて頬を叩く。シュートを止められたしろ君が気がかりだ。
放られたボールをクリアをして試合を止める。肩で息をするしろ君に駆け寄ると、あたしを一瞬だけ見てまたデザームの方を向いてしまった。
「オレがシュートを決めねえと。決めねえと、オレに居場所は……」
「しろ君!」
「もう、一人になるのは」
「こっち見て!」
肩を掴んで無理矢理振り返らせる。あたしを見るしろ君の瞳は、青くなったり金色になったりで、不安そうに揺れていた。
「美波……」
「居場所ならある。ここが、雷門がしろ君の居場所だよ」
「でも、みんな、オレが点を取らなくちゃ。そうしないと、僕は」
「大丈夫!あたしがいるよ。あたしが居場所になるからさ!」
雷門のエースストライカー。仲間から点を取ることを期待されている攻撃の要。その重圧は、あたしには計り知れない。
だから伝えたかった。確かに試合には勝ちたいけど、たとえ勝てなくても、雷門にはしろ君が必要なんだって。また皆でもっと強くなればいいんだって。
豪炎寺は……どう思ってたのかな。いざと言う時、必ず点を取ってくれた。見てるだけで焦げ付いてしまいそうな背中に憧れた。あの、背番号10は。
「美波ちゃん……。うん、ありがとう」
「どういたしまして。それでさ、ちょっと気になったことがあるんだ」
「気になったこと?」
「あれだけレベルアップしたのに、本当にまだ足りないのかなって思って。なんか、狙い過ぎてかえって威力が落ちてるっていうか」
「……」
「上手く言えないんだけど、シュートにパワーが乗り切ってないっていうか……ご、ごめん!余計なこと言った。次、ボール回すね」
「……待て」
「ん?」
「何か、策があるのか」
「……ちょっと考えたんだけど」
突発的に考えた作戦に、しろ君は頷いてくれた。これが鬼道ならもっと細かく案を出してくれただろうけど、そこまで余裕はない。
ゼルのガニメデプロトンを夕弥が旋風陣で止めた。雷門の攻撃だ。強引に攻めるしろ君を鬼道は無茶だと呼び止めようとするけど、あたしにはさっきまでとは違って見えた。
ゴール前の最終ライン。イプシロンのディフェンダーがブロックに入るより前に、体を反転させたしろ君が自陣へのボールを蹴り出した。
「吹雪!?」
「おおっとどうした吹雪!突然戻したぞ!」
大丈夫。届いた。
弧を描いたボールは、真っ直ぐ、あたしの元へ。
信じてくれたしろ君の為に。作れ、道を。
「アクアストリームッ!!」
すかさず蹴り上げて打ち返す。イプシロンのミッドフィルダーとディフェンダーを蹴散らして、あたしのシュートは、しろ君に届いた。
「見えたぜ……!エターナルブリザード!!」
シュートの軌道に合わせた今までで一番の威力のエターナルブリザード。猛吹雪はデザームが展開させたワームホールに抑え込まれることなく、勢いのままに吹き飛ばした。
一拍置いてホイッスルが鳴り響く。得点板は1-1。同点に追い付いた!デザームの守るゴールを、ついに破ったんだ!
「やった……やったー!」
「美波!」
「うわっ」
いつの間に戻ってきたのか、しろ君が飛び付いてきた。倒れないように踏ん張って様子を伺う。その橫顔はとても満足げだ。
「……お前のシュートで道が見えた。美波が、いてくれたから」
「それは違うよしろ君。あたしはちょっと手伝っただけ。決めたのはしろ君の実力!」
「美波ちゃん……ありがとう」
よっぽど嬉しいのかぎゅうぎゅうと抱き締めてくるしろ君。とりあえず豪炎寺の真似で頭を撫でてみたら力が強くなった。どうしよう。そろそろ試合再開だけど。
「吹雪、それくらいにしておけ」
「風丸くん……嫉妬はよくないよ」
「なっ吹雪!俺はただ、美波が困ってるから」
「そういうことにしておくね」
にっこり微笑んだしろ君がポジションに戻っていく。何だったんだ、一体。
「ありがと一郎太。どうしようかと思ってたんだ」
「……俺は美波の幼馴染みだからな」
「いつもありがとうね。さ、もう一息!」
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