第16話 激闘!最凶イプシロン!!
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「アクアストリームッ!」
僅かなチャンスでゴールを狙う。けれどデザームの守るゴールが割れる気配はない。
今の雷門にしろ君以上の決定力のあるフォワードやミッドフィルダーはいない。デザームに必殺技を使わせて、なおかつ点を取れる可能性があるのは、しろ君だけ。
そのしろ君へのマークは他より少し緩い。まるで誘導してるみたいだ。警戒か、油断か。どちらにせよ逃す手はないけど、負担を増やしたくない……。
「オレに回せって言っただろうが!」
「だから前半はディフェンス!」
「お前のヘボシュートでチャンスを無駄にするよりいいだろ」
「そこまで言わなくたっていいじゃん」
無駄、かあ……。少しでもデザームを消耗させられたらとも考えてたけど、しろ君というかアツヤ的にはそれすらまどろっこしいようで。
「美波!吹雪に回せ!」
「っ、鬼道……。しろ君!」
「それでいいんだよ」
ボールを持ったしろ君が猛然と駆け上がっていくのを横目に自陣に戻る。これで、良かったのかな。
「お前も気付いてるだろう。この試合、吹雪のオフェンスが鍵になる。エターナルブリザードが必要だ」
「でもしろ君の負担が大きい。今はディフェンスに集中してもらおうよ」
「もちろん点を取られないに越したことはない。だが取れなければ勝ちもない」
「……それはそうだけど」
ディフェンスもオフェンスも、しろ君には好きに動いて貰った方がいいのかもしれない。そうだとしても、どこかで本当にいいのかという疑問がどうしても残る。
エターナルブリザードが止められる度に、しろ君の焦りは強くなっている。……あれだけ特訓したのにまだ破れないんだ。焦って当然だ。
纏う雰囲気が荒立っていくのを見てることしか出来ないのか。しろ君にはちゃんと皆が見えてるだろうか。皆は、しろ君を、アツヤの力を……。
「攻撃せよ!戦術時間は7.4秒だ!」
「っ、ディフェンス来るよ!」
イプシロンのカウンターだ。しろ君が攻撃に集中するというなら、せめてディフェンスだけでも負担をかけないようにしないと。
正確なパス回し。流石はデザーム――治のチームだ。だからこそ、どこかに綻びがきっとある。そう思って、最初から意識して見てきた。
「(……間違いない)」
さっきからそうだ。9番――マキュアは、あたしがいる方には来ない。あたしがディフェンスに入ろうとすると、避けたりパスを出す。それは慎重と言うにはどこか不自然で。
その理由はなんとなく分かる。だってまるで、あたしと戦うのを嫌がってるみたいだから。あたしのこと、覚えてくれてるんだって、今でも友達だと思ってくれてるって……信じていいかな?
ゼルのガニメデプロトンを守兄がマジン・ザ・ハンドで止めて、そこで前半は終わった。両者得点無しで皆イプシロンの動きに負けてない。
強くなってる。それを改めて実感したことで、この調子で行ければと思えてくれる。絶対に勝つ。そう守兄達が意気込む中で、しろ君だけが暗い表情をしていた。
「吹雪くん。攻撃に気を取られ過ぎよ。ディフェンスに集中しなさい」
「監督。吹雪をフォワードに上げて下さい。今のままでは攻撃力が足りません」
リカが突っかかっても続ける鬼道は、前半でデザームのゴールを打ち破るにはしろ君の力が必要だと判断していた。でもそれは瞳子監督も分かっていての作戦だ。
この試合は1点勝負で絶対に失点出来ない。このままだと得点も出来ないという鬼道の言い分も分かるから難しい。……結局、しろ君頼みの作戦になる。
「吹雪くんはディフェンスから瞬時に攻撃に移れる。イプシロンの攻撃を防いだ時こそがチャンスよ。カウンター攻撃を繰り返せば必ず得点の機会はある」
「はい」
「しかし、それでは吹雪の負担が」
「大丈夫、任せてよ」
まただ。しろ君はどんなに負担が大きくても、何でもないように任せてって言うんだ。本当に大丈夫なのかな。そう聞きたくても、聞いてはいけないような、大丈夫だと言わせてしまう気がして……。
「あれ、吹雪は?」
「さっきまでいたけど……」
「じゃああたし探してくる!」
「あ、おい!美波」
地下は初めてきたから迷いかけたけど、微かに聞こえた流れる水の音を辿ればしろ君は直ぐ見つかった。……とはいえ流石に男子トイレは入れないな。どうしよ。
「点を取るんだ。僕が、取らなきゃ……。フォワードも、ディフェンスも、ちゃんとやらなくちゃ。完璧に、なるんだ」
苦しそうな声に思わず固まる。隠されていた、やっと聞けたしろ君の本音。ずっと悩んで、追い詰められて、苦しんで。何度も何度も、無理して笑っていたしろ君。
しろ君が苦しい思いをするくらいなら……いっそ、完璧なんて目指さなくていいと思う。ちゃんとって何だ。完璧って何だ。ミスしたって、皆でカバーすればいいじゃないか。
しろ君の完璧はそんな単純なことじゃないって、分かってはいるけれど。
「美波ちゃん?」
「え、あっ」
「どうしてここに?どうかしたの?」
「えーっと……しろ君を迎えに来た!後半も頑張ろう!」
「そっか、ありがとう。頑張ろうね」
「うんうん!」
「……僕、フォワードもディフェンダーもやれるよ。点は取るし、攻撃だって防いでみせる」
「うん……」
「完璧に、なる為に」
ゾワッとした。いつもみたいにまた笑って、戻ろっかと歩いていくしろ君を追う。
目が、金色だった。
グラウンドまで戻ると、もうハーフタイムも終わるところだった。案の定なっちゃんにお叱りを受けて思う。……豪炎寺のこと言えないくらいの遅刻癖がつきつつあるな。
「美波」
「どしたの鬼道」
「お前、吹雪のディフェンスに拘っていないか?」
「そう?」
「俺の考えすぎかもしれないが」
そうだろうか。鬼道がわざわざ声をかけてきたくらいなら、そうなのかも?
「……しろ君のディフェンスが凄くてああなりたいのと、あたしがディフェンダーで守りの方が意識が強いから?」
「疑問形か」
「いや分かんない」
「話してるとこ悪いんだけど、俺もちょっと聞こうと思ってたことがあるんだよね」
「あ、一之瀬」
「イプシロンの9番、美波のこと避けてない?」
「それは俺も気になっていた。何か心当たりは」
「……ううん、無いや。けど、あれはチャンスだよね」
変だけど、少なくともあたしと戦いたくないと思ってくれてるのは嬉しい。だからこそあたしは……そこを突く。エイリア学園に、勝つ為に。
.
僅かなチャンスでゴールを狙う。けれどデザームの守るゴールが割れる気配はない。
今の雷門にしろ君以上の決定力のあるフォワードやミッドフィルダーはいない。デザームに必殺技を使わせて、なおかつ点を取れる可能性があるのは、しろ君だけ。
そのしろ君へのマークは他より少し緩い。まるで誘導してるみたいだ。警戒か、油断か。どちらにせよ逃す手はないけど、負担を増やしたくない……。
「オレに回せって言っただろうが!」
「だから前半はディフェンス!」
「お前のヘボシュートでチャンスを無駄にするよりいいだろ」
「そこまで言わなくたっていいじゃん」
無駄、かあ……。少しでもデザームを消耗させられたらとも考えてたけど、しろ君というかアツヤ的にはそれすらまどろっこしいようで。
「美波!吹雪に回せ!」
「っ、鬼道……。しろ君!」
「それでいいんだよ」
ボールを持ったしろ君が猛然と駆け上がっていくのを横目に自陣に戻る。これで、良かったのかな。
「お前も気付いてるだろう。この試合、吹雪のオフェンスが鍵になる。エターナルブリザードが必要だ」
「でもしろ君の負担が大きい。今はディフェンスに集中してもらおうよ」
「もちろん点を取られないに越したことはない。だが取れなければ勝ちもない」
「……それはそうだけど」
ディフェンスもオフェンスも、しろ君には好きに動いて貰った方がいいのかもしれない。そうだとしても、どこかで本当にいいのかという疑問がどうしても残る。
エターナルブリザードが止められる度に、しろ君の焦りは強くなっている。……あれだけ特訓したのにまだ破れないんだ。焦って当然だ。
纏う雰囲気が荒立っていくのを見てることしか出来ないのか。しろ君にはちゃんと皆が見えてるだろうか。皆は、しろ君を、アツヤの力を……。
「攻撃せよ!戦術時間は7.4秒だ!」
「っ、ディフェンス来るよ!」
イプシロンのカウンターだ。しろ君が攻撃に集中するというなら、せめてディフェンスだけでも負担をかけないようにしないと。
正確なパス回し。流石はデザーム――治のチームだ。だからこそ、どこかに綻びがきっとある。そう思って、最初から意識して見てきた。
「(……間違いない)」
さっきからそうだ。9番――マキュアは、あたしがいる方には来ない。あたしがディフェンスに入ろうとすると、避けたりパスを出す。それは慎重と言うにはどこか不自然で。
その理由はなんとなく分かる。だってまるで、あたしと戦うのを嫌がってるみたいだから。あたしのこと、覚えてくれてるんだって、今でも友達だと思ってくれてるって……信じていいかな?
ゼルのガニメデプロトンを守兄がマジン・ザ・ハンドで止めて、そこで前半は終わった。両者得点無しで皆イプシロンの動きに負けてない。
強くなってる。それを改めて実感したことで、この調子で行ければと思えてくれる。絶対に勝つ。そう守兄達が意気込む中で、しろ君だけが暗い表情をしていた。
「吹雪くん。攻撃に気を取られ過ぎよ。ディフェンスに集中しなさい」
「監督。吹雪をフォワードに上げて下さい。今のままでは攻撃力が足りません」
リカが突っかかっても続ける鬼道は、前半でデザームのゴールを打ち破るにはしろ君の力が必要だと判断していた。でもそれは瞳子監督も分かっていての作戦だ。
この試合は1点勝負で絶対に失点出来ない。このままだと得点も出来ないという鬼道の言い分も分かるから難しい。……結局、しろ君頼みの作戦になる。
「吹雪くんはディフェンスから瞬時に攻撃に移れる。イプシロンの攻撃を防いだ時こそがチャンスよ。カウンター攻撃を繰り返せば必ず得点の機会はある」
「はい」
「しかし、それでは吹雪の負担が」
「大丈夫、任せてよ」
まただ。しろ君はどんなに負担が大きくても、何でもないように任せてって言うんだ。本当に大丈夫なのかな。そう聞きたくても、聞いてはいけないような、大丈夫だと言わせてしまう気がして……。
「あれ、吹雪は?」
「さっきまでいたけど……」
「じゃああたし探してくる!」
「あ、おい!美波」
地下は初めてきたから迷いかけたけど、微かに聞こえた流れる水の音を辿ればしろ君は直ぐ見つかった。……とはいえ流石に男子トイレは入れないな。どうしよ。
「点を取るんだ。僕が、取らなきゃ……。フォワードも、ディフェンスも、ちゃんとやらなくちゃ。完璧に、なるんだ」
苦しそうな声に思わず固まる。隠されていた、やっと聞けたしろ君の本音。ずっと悩んで、追い詰められて、苦しんで。何度も何度も、無理して笑っていたしろ君。
しろ君が苦しい思いをするくらいなら……いっそ、完璧なんて目指さなくていいと思う。ちゃんとって何だ。完璧って何だ。ミスしたって、皆でカバーすればいいじゃないか。
しろ君の完璧はそんな単純なことじゃないって、分かってはいるけれど。
「美波ちゃん?」
「え、あっ」
「どうしてここに?どうかしたの?」
「えーっと……しろ君を迎えに来た!後半も頑張ろう!」
「そっか、ありがとう。頑張ろうね」
「うんうん!」
「……僕、フォワードもディフェンダーもやれるよ。点は取るし、攻撃だって防いでみせる」
「うん……」
「完璧に、なる為に」
ゾワッとした。いつもみたいにまた笑って、戻ろっかと歩いていくしろ君を追う。
目が、金色だった。
グラウンドまで戻ると、もうハーフタイムも終わるところだった。案の定なっちゃんにお叱りを受けて思う。……豪炎寺のこと言えないくらいの遅刻癖がつきつつあるな。
「美波」
「どしたの鬼道」
「お前、吹雪のディフェンスに拘っていないか?」
「そう?」
「俺の考えすぎかもしれないが」
そうだろうか。鬼道がわざわざ声をかけてきたくらいなら、そうなのかも?
「……しろ君のディフェンスが凄くてああなりたいのと、あたしがディフェンダーで守りの方が意識が強いから?」
「疑問形か」
「いや分かんない」
「話してるとこ悪いんだけど、俺もちょっと聞こうと思ってたことがあるんだよね」
「あ、一之瀬」
「イプシロンの9番、美波のこと避けてない?」
「それは俺も気になっていた。何か心当たりは」
「……ううん、無いや。けど、あれはチャンスだよね」
変だけど、少なくともあたしと戦いたくないと思ってくれてるのは嬉しい。だからこそあたしは……そこを突く。エイリア学園に、勝つ為に。
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