第26話 復活の爆炎!!
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「試合再開!はたして帰ってきた豪炎寺は、どのような活躍を見せてくれるのか!」
角馬の実況がさっきよりハリがあるような気がする。そんなことを考えちゃうくらい精神的に余裕が出来たのは、やっぱり豪炎寺が帰ってきたからかな。
「見せてみろ!お前の実力を!」
向かってきたデザームにも、豪炎寺は揺らがない。跳躍してかわすようにボールを奪うとシュート体勢に入った。
何を撃つ気なのか。あのフォームを、あたしはよく知っている。あたし達の、始まりのシュートだ。
「ファイアトルネード!」
豪炎寺の十八番、ファイアトルネード!
螺旋を描いた炎の勢いは、チームを離れる前と全然違う。ワームホールもゼルも吹っ飛ばして、瞬く間に点を取ってしまった。
「やっぱり豪炎寺さんは凄い……!」
「かーっ!痺れるぜ!」
「何かカッコいいやん!」
「ひええ……」
「あの破壊力、今までと違う!」
「大きくパワーアップしたファイアトルネードだ!」
スコアは1ー1の同点。流石は雷門のエースストライカーだと声をかけようとして、思考を過ったのはしろ君で。言葉は喉でつっかえて止まった。
「どうした?」
「あ、いや……まさしく完全復活って感じだね!」
「これで終わりじゃないぞ」
「え?」
「約束したからな。強くなって、戻ってくると」
ニヤリと笑っていつものドヤ顔。もしかして、新必殺技?聞こうと思って口を開きかけた時、デザームがまたポジションチェンジを宣言した。
豪炎寺のシュートを止めると宣戦布告。あんなシュート見たら、誰だって燃えてくる。でも、全てを叩き壊すってのはいただけない。勝つのは絶対に雷門だ!
「フレイムダンス!」
豪炎寺の復帰からの得点で勢いづいて、一之瀬がイプシロンからボールを奪った。ボールは鬼道に渡る。
豪炎寺に回したいとこだけど、2人がかりの強烈なマークがついていて、迂闊にはパスを出せない。
奪われた時のことを考えてそろそろと動いてたら、鬼道が目配せしてきた。メトロンのスライディングを避けた鬼道が、フェイントをかけつつあたしへ下げる。
一瞬だけイプシロンの反応が遅れて、豪炎寺が動いた。マークが外れる。ゴール前、フリーだ!
「いっけえ!豪炎寺っ!」
そういえば、帝国学園と練習試合をした日も、こうやって豪炎寺にパスを出したなって。
パスを受け取った豪炎寺が、笑った気がした。
「来い!」
ゴールを一睨みした豪炎寺が跳躍する。腕を交差させて秘めたパワーを解き放つように構えれば、守兄のとはまた違った、炎を纏った魔神が現れた。
そこから更に高く高く飛び上がって、回転をかけると、左足を振り上げた。自陣にいても感じる威圧感に、唾を飲む。
「爆熱ストーム!!!」
「ドリルスマッシャー!」
強い熱と爆風を孕んだシュートとドリルスマッシャーがぶつかり合った。
せめぎ合う中、静かに豪炎寺が背を向ければ、ピキピキとドリルにヒビが入っていく。
「ぐわあっ!」
ドリルが砕け散る。デザームを押し退けて、シュートはゴールに突き刺さった。一拍置いて、辺りから歓声が上がった。
ゴールでは爆発音と共に爆炎が勢いよく立ち上っていて、まるでそれは、豪炎寺の復活を象徴しているようだった。
「新しい必殺技、爆熱ストームと共に!炎のストライカー豪炎寺修也!ここに大復活だーーーッ!!!そしてここで試合終了!」
「やったーっ!」
「っしゃあ!」
勝ったんだ!あのイプシロンに、今度こそ勝ったんだ!何より豪炎寺が帰ってきた。だから勝てた。ただ、しろ君は……。
守兄と豪炎寺が握手して頷き合っているのを見ていたら、鬼道に「何をぼんやりしているんだ」と叩かれた。
「あたし達、勝ったんだよね」
「ああ」
勝ったのは素直に嬉しい。けど、負けたデザームは、イプシロンはどうなるんだろう。ジェミニストームみたいに、エイリア学園から追放される?
ヒロト君、風介、晴矢。他にもエイリア学園にはチームがあって、まだ戦いは終わらない。
胸騒ぎがしてデザームに近づけば、倒れ伏しているデザームに守兄が手を差し出した。デザームは守兄を一瞥すると、意地なのかなんなのか、その手は取らずに立ち上がる。
「地球では、試合が終われば敵も味方もない。お前達がしていることは許せないけど、俺はサッカーの楽しさをお前達にも分かって欲しいんだ」
握手をしようって、守兄は改めて手を差し出す。なんとなく、あたしも手を出した。
守兄がいつもみたいに笑ったら、デザーム――治は少し驚いたような表情を浮かべる。
「もう敵も味方もない。……敵だなんて、思ってないよ。プレーを凄いとも思ってる。だから次は、楽しいサッカーをしたい」
「お前」
「美波……」
「綺麗事を!」
「確かに綺麗事かもしれない。でも、使命とか命令とか、それだけじゃあんなに強くなれないと思うんだ」
好きだからこそ頑張れる。リュウジ風に言えば、好きこそものの上手なれ、だ。
エイリア学園の人達の好きは、サッカーにも向いてるんじゃないかって。そうだったらいいなって、あたしが思ってるだけだけど。
「……ごめん」
小さな呟きが落ちた。溢したのはマキュア――じゃない、マキだ。
「ごめんって、何が?」
「前、嫌いって言ったの」
「……ああ、あの時の!気にしてないから大丈夫!」
「嘘つき。美波、凄く辛そうな顔してた癖に」
「そんなことないよ。敵対してるんだし言われて当然だって思ったから」
「でも傷ついてた」
「立ち直りは早い方だよ!」
「……だからごめんって言ってるじゃん!」
「だから平気だってば!」
「あーあ、二人共よくやる」
「言った方も言われた方も落ち込んでるんだからな」
「そこ!聞こえてるからね!?」
笑ってる。治も、マキも、隆一郎も。イプシロンのメンバーが笑ってる。なんだかちょっとだけ、あの頃に戻れた気がして。
「……次は、必ず勝つ」
そんなやり取りに治も笑って、手を差し出してくれた。
大丈夫。あたし達は戻れる。沢山回り道をしたけれど、前みたいな関係に、また友達になれるって……そう思っていたのに。
『!』
突然青白い光が辺りに広がって、ひんやりとした冷気が漂った。その光の中心には、風介――ガゼルが立っていた。
「ガゼル様!」
「私はマスターランクチーム、ダイヤモンドダストを率いるガゼル。君が円堂か?新しい練習相手も見つかった。今回の負けで、イプシロンは完全に用済みだ」
「よう、ずみ……」
信じられないくらいの感情の無い声で言葉を紡ぐと、風介は右腕を振り上げた。脳裏を過ったのは北海道でのこと。酷く絶望した表情をしていた、リュウジ。
横を見れば微笑んだ治が、まるであたし達を巻き込まないようにと距離を取っていた。
「!」
腕が振り下ろされる動きに呼応するように黒いサッカーボールがイプシロン・改へ飛んで、発光する。
いとも簡単に、彼らは目の前で消された。
「何で……!!」
何でも何も無い。風介は信じる道に従っただけ。それでも、何でだと思わずにはいられない。
ここまで来ても甘い考えを捨てられないあたしは、やっぱり弱くて。
皆の声を振り切って、青白い光に包まれる風介に手を伸ばす。瞬間、乾いた音。少しの痛み。
手を叩き落とされたのが直ぐ理解出来なかったのは、どうしてだろうね、風介。
薄っすらと微笑む風介の目は全く笑っていない。風介は敵。分かってた、筈なのに……!
「次の相手は私だ、美波」
「風介……!」
冷たく笑った風介の姿が見えなくなっていく。
「円堂守。君と戦う日を、楽しみにしているよ」
響く声に、ただ立ち尽くすことしか出来ない。
その場には、まだ冷気が残っていた。
→あとがき
角馬の実況がさっきよりハリがあるような気がする。そんなことを考えちゃうくらい精神的に余裕が出来たのは、やっぱり豪炎寺が帰ってきたからかな。
「見せてみろ!お前の実力を!」
向かってきたデザームにも、豪炎寺は揺らがない。跳躍してかわすようにボールを奪うとシュート体勢に入った。
何を撃つ気なのか。あのフォームを、あたしはよく知っている。あたし達の、始まりのシュートだ。
「ファイアトルネード!」
豪炎寺の十八番、ファイアトルネード!
螺旋を描いた炎の勢いは、チームを離れる前と全然違う。ワームホールもゼルも吹っ飛ばして、瞬く間に点を取ってしまった。
「やっぱり豪炎寺さんは凄い……!」
「かーっ!痺れるぜ!」
「何かカッコいいやん!」
「ひええ……」
「あの破壊力、今までと違う!」
「大きくパワーアップしたファイアトルネードだ!」
スコアは1ー1の同点。流石は雷門のエースストライカーだと声をかけようとして、思考を過ったのはしろ君で。言葉は喉でつっかえて止まった。
「どうした?」
「あ、いや……まさしく完全復活って感じだね!」
「これで終わりじゃないぞ」
「え?」
「約束したからな。強くなって、戻ってくると」
ニヤリと笑っていつものドヤ顔。もしかして、新必殺技?聞こうと思って口を開きかけた時、デザームがまたポジションチェンジを宣言した。
豪炎寺のシュートを止めると宣戦布告。あんなシュート見たら、誰だって燃えてくる。でも、全てを叩き壊すってのはいただけない。勝つのは絶対に雷門だ!
「フレイムダンス!」
豪炎寺の復帰からの得点で勢いづいて、一之瀬がイプシロンからボールを奪った。ボールは鬼道に渡る。
豪炎寺に回したいとこだけど、2人がかりの強烈なマークがついていて、迂闊にはパスを出せない。
奪われた時のことを考えてそろそろと動いてたら、鬼道が目配せしてきた。メトロンのスライディングを避けた鬼道が、フェイントをかけつつあたしへ下げる。
一瞬だけイプシロンの反応が遅れて、豪炎寺が動いた。マークが外れる。ゴール前、フリーだ!
「いっけえ!豪炎寺っ!」
そういえば、帝国学園と練習試合をした日も、こうやって豪炎寺にパスを出したなって。
パスを受け取った豪炎寺が、笑った気がした。
「来い!」
ゴールを一睨みした豪炎寺が跳躍する。腕を交差させて秘めたパワーを解き放つように構えれば、守兄のとはまた違った、炎を纏った魔神が現れた。
そこから更に高く高く飛び上がって、回転をかけると、左足を振り上げた。自陣にいても感じる威圧感に、唾を飲む。
「爆熱ストーム!!!」
「ドリルスマッシャー!」
強い熱と爆風を孕んだシュートとドリルスマッシャーがぶつかり合った。
せめぎ合う中、静かに豪炎寺が背を向ければ、ピキピキとドリルにヒビが入っていく。
「ぐわあっ!」
ドリルが砕け散る。デザームを押し退けて、シュートはゴールに突き刺さった。一拍置いて、辺りから歓声が上がった。
ゴールでは爆発音と共に爆炎が勢いよく立ち上っていて、まるでそれは、豪炎寺の復活を象徴しているようだった。
「新しい必殺技、爆熱ストームと共に!炎のストライカー豪炎寺修也!ここに大復活だーーーッ!!!そしてここで試合終了!」
「やったーっ!」
「っしゃあ!」
勝ったんだ!あのイプシロンに、今度こそ勝ったんだ!何より豪炎寺が帰ってきた。だから勝てた。ただ、しろ君は……。
守兄と豪炎寺が握手して頷き合っているのを見ていたら、鬼道に「何をぼんやりしているんだ」と叩かれた。
「あたし達、勝ったんだよね」
「ああ」
勝ったのは素直に嬉しい。けど、負けたデザームは、イプシロンはどうなるんだろう。ジェミニストームみたいに、エイリア学園から追放される?
ヒロト君、風介、晴矢。他にもエイリア学園にはチームがあって、まだ戦いは終わらない。
胸騒ぎがしてデザームに近づけば、倒れ伏しているデザームに守兄が手を差し出した。デザームは守兄を一瞥すると、意地なのかなんなのか、その手は取らずに立ち上がる。
「地球では、試合が終われば敵も味方もない。お前達がしていることは許せないけど、俺はサッカーの楽しさをお前達にも分かって欲しいんだ」
握手をしようって、守兄は改めて手を差し出す。なんとなく、あたしも手を出した。
守兄がいつもみたいに笑ったら、デザーム――治は少し驚いたような表情を浮かべる。
「もう敵も味方もない。……敵だなんて、思ってないよ。プレーを凄いとも思ってる。だから次は、楽しいサッカーをしたい」
「お前」
「美波……」
「綺麗事を!」
「確かに綺麗事かもしれない。でも、使命とか命令とか、それだけじゃあんなに強くなれないと思うんだ」
好きだからこそ頑張れる。リュウジ風に言えば、好きこそものの上手なれ、だ。
エイリア学園の人達の好きは、サッカーにも向いてるんじゃないかって。そうだったらいいなって、あたしが思ってるだけだけど。
「……ごめん」
小さな呟きが落ちた。溢したのはマキュア――じゃない、マキだ。
「ごめんって、何が?」
「前、嫌いって言ったの」
「……ああ、あの時の!気にしてないから大丈夫!」
「嘘つき。美波、凄く辛そうな顔してた癖に」
「そんなことないよ。敵対してるんだし言われて当然だって思ったから」
「でも傷ついてた」
「立ち直りは早い方だよ!」
「……だからごめんって言ってるじゃん!」
「だから平気だってば!」
「あーあ、二人共よくやる」
「言った方も言われた方も落ち込んでるんだからな」
「そこ!聞こえてるからね!?」
笑ってる。治も、マキも、隆一郎も。イプシロンのメンバーが笑ってる。なんだかちょっとだけ、あの頃に戻れた気がして。
「……次は、必ず勝つ」
そんなやり取りに治も笑って、手を差し出してくれた。
大丈夫。あたし達は戻れる。沢山回り道をしたけれど、前みたいな関係に、また友達になれるって……そう思っていたのに。
『!』
突然青白い光が辺りに広がって、ひんやりとした冷気が漂った。その光の中心には、風介――ガゼルが立っていた。
「ガゼル様!」
「私はマスターランクチーム、ダイヤモンドダストを率いるガゼル。君が円堂か?新しい練習相手も見つかった。今回の負けで、イプシロンは完全に用済みだ」
「よう、ずみ……」
信じられないくらいの感情の無い声で言葉を紡ぐと、風介は右腕を振り上げた。脳裏を過ったのは北海道でのこと。酷く絶望した表情をしていた、リュウジ。
横を見れば微笑んだ治が、まるであたし達を巻き込まないようにと距離を取っていた。
「!」
腕が振り下ろされる動きに呼応するように黒いサッカーボールがイプシロン・改へ飛んで、発光する。
いとも簡単に、彼らは目の前で消された。
「何で……!!」
何でも何も無い。風介は信じる道に従っただけ。それでも、何でだと思わずにはいられない。
ここまで来ても甘い考えを捨てられないあたしは、やっぱり弱くて。
皆の声を振り切って、青白い光に包まれる風介に手を伸ばす。瞬間、乾いた音。少しの痛み。
手を叩き落とされたのが直ぐ理解出来なかったのは、どうしてだろうね、風介。
薄っすらと微笑む風介の目は全く笑っていない。風介は敵。分かってた、筈なのに……!
「次の相手は私だ、美波」
「風介……!」
冷たく笑った風介の姿が見えなくなっていく。
「円堂守。君と戦う日を、楽しみにしているよ」
響く声に、ただ立ち尽くすことしか出来ない。
その場には、まだ冷気が残っていた。
→あとがき