第27話 凍てつく闇・ダイヤモンドダスト!
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練習が終わってクールダウンしてたら、秋達がドリンクを持ってきた。土方からの差し入れ、沖縄特産シークワーサードリンク!これは美味しそう!
喉も渇いてたことだし、一気にドリンクを口に含む。甘くて冷たくて美味しいと感じた矢先、物凄い酸っぱい味が口いっぱいに広がった。まさかこんなに酸っぱいなんて。
「皆が飲んでから飲めばよかった……」
「ほう」
「面白い顔してたね鬼道、ポーカーフェイス崩れていたたた」
「安心しろ、美波も面白い顔だ」
「何一つ安心出来ない!」
でもこの酸っぱさが疲れた体に染みる。考えてみれば激闘と言える試合をした後、そのまま練習してるんだ。豪炎寺がいる嬉しさで疲れを忘れてただけで。
一之瀬の首に腕を回したリカが甘酸っぱい初恋の味だとはしゃいでる。……大丈夫かな、一之瀬。目が死んでるけど……。
「恋かあ……」
「え、何々?恋がしたいって?」
「言ってないよそんなこと」
「そんなこと言うて、ラブラブたこ焼き食べた癖に!」
「なっ、だから違うって!」
「そうだそうだ!##NAME##にはまだ早い!」
「やかましい!円堂がそんなんだからこんなボケボケ娘になっとんのや!」
「俺は何もしてないし美波はこれでいいんだ!」
「いいわけあるかあ!」
何でか言い合いを始めた守兄とリカ。更に何か言いかけたリカは、一之瀬によってズルズルと引き摺られていった。……やれやれ。
そして今日の夕飯は、カレーライス!少し慎重に口に運べば、普通の味だった。よし、タバスコは入ってない。よかった。
目の前では目金が火を吹いていて、これももう見慣れた光景になったな……。その犯人の夕弥は、期待した目で豪炎寺を見ている。こ、怖いもの知らず!
緊張しながら様子を窺う。けれどスプーンを動かす豪炎寺の表情は変わらない。あれ?と思った矢先、自分の分を食べた夕弥が火を吹いた。
「えっ」
「ああ、皿換えといたから」
何食わぬ顔でしれっと言う豪炎寺。お皿入れ替えて回避するなんて、流石というかしっかりしてる。……今度あたしもやってみようかな。
***
「あ、豪炎寺だ」
「美波か」
いつもみたいにキャラバンの上で星を見ようと登ったら、先客がいた。豪炎寺だ。
「もしかしてさっきまで守兄いた?」
「ああ。よく分かったな」
「勘!双子だからかな!」
「円堂が先に降りたのも双子だからか」
「かもしれないね」
多分さっきまで守兄がいた、豪炎寺の隣に寝転がる。沖縄の夜の空には、キラキラと星が輝いていた。
「皆もここでよく話したりしてるんだよ。あたしにとっては、星を見る時の特等席!」
「そうだったのか」
「稲妻町は夜でも明るいからさ、北海道とか福岡だと、よく見えるんだ」
すぐ横を見れば、豪炎寺がいる。本当に帰ってきたんだなあ……。やっと実感が湧いてきたというか……。
「豪炎寺!」
「何だ」
「なんでもないっ!」
「……美波」
「どしたの」
「なんでもない」
顔を見合わせて笑う。たわいもない、本当に何でもないやり取り。それすら久しぶりだから、どんなことでも嬉しくなる。
何を話そう。話したいことは沢山あったはずなのに、こうして一緒にいるだけで満足してしまいそうになる。
横を見ると豪炎寺と目が合った。あたしを見つめる豪炎寺の表情は穏やかで、またサッカー出来るようになって本当によかったと改めて思う。
豪炎寺とサッカー、といえば。
「豪炎寺もボールが怖いって思うことあるんだね」
「ん?ああ、吹雪に話したことか」
「エースだし、期待とかプレッシャーとかあるとは思ってたけどさ。あんなに直球に言うとは思ってなかった」
「そうじゃなきゃ伝わらないだろう。特に、今の吹雪には」
長らくチームを離れてたけど、豪炎寺はしろ君のことをよく理解してるようだった。……いや、関わりが少ないからこそかもしれない。
「吹雪と何かあったのか」
「……」
「今日の試合、前半は見てたんだ。デザームにシュートを止められた吹雪が倒れたのも」
「……そっか」
「あいつが何か重いものを抱えてるのは分かる。それを皆が知ってるのも」
俺にも持たせてくれないか。そう言われたら、話すしかない。
「しろ君、アツヤっていう弟がいたんだ。ディフェンダーのしろ君とフォワードのアツヤで、最強のコンビだった」
「だった、か」
「……うん。家族が、雪崩に巻き込まれて。だから大きな音とかも苦手みたい」
「そうか……」
黙り込んだ豪炎寺が空を見上げた。誰かを、思い浮かべてるような。夕香ちゃんが事故に遭った時の事を思い出してるのかな。
しろ君のこと、立向居や条兄はまだ知らないはずだ。二人にも説明はしておいた方がいいかもしれない。
「あたしさ、しろ君のこと前から知ってたんだ。一度会ったきりだけど」
「アツヤにも会ったのか」
「うん。だから思い悩んでるしろ君の力に、強くならなきゃって思ってたんだけど、全然上手くいかなかった」
知ってるだけじゃ意味がない。今日顔を合わせたばかりの豪炎寺の方が出来てるんじゃないか。
「強さと引き換えに失ったもの、か……」
「え?」
「円堂が言っていたんだ」
「失ったもの……」
ここに来るまでに、あたし達は格段に強くなった。一日中サッカーをした。エイリア学園を倒して、平和を取り戻すに。
強くなるのは、出来なかった事が出来るようになるのは、サッカーが上手くなるのは、楽しい。
けれど、試合中に感じる重圧は、フットボールフロンティアを勝ち抜いていた頃の比じゃない。負けられない戦い。倒せなかったら。そんなもしもを考えると、背筋が凍る。
サッカーは楽しいだけじゃない。そんなのとっくに知ってる。やるのが辛く感じる時だってある。それでも。
「……サッカーを楽しむ気持ちは、忘れちゃダメだよね」
「ああ。俺達は、サッカーが好きだから、戦っているんだ」
許せないのも、助けたいのも、原動力は好きだから。強さだけを求めたサッカーじゃ、ダメなんだ。
「ところでラブラブたこ焼きって何だ」
「それ聞くの!?……大阪のナニワランドで食べたんだよ。カップルで食べると一生ラブラブなんだってさ」
「誰と食べたんだ」
「あー、エイリアのアジト探しを手伝ってくれた現地で会った人」
風介について話す訳にはいかない。つい今日、ガゼルとして現れたんだから。
「そこから何でそのたこ焼きを食べるのに繋がるんだ」
「お腹空いてたから……。それに知らなかったんだよ、そんな噂があるなんて」
「……たこ焼きは俺も得意だな」
「作る方?」
「ああ。夕香にも作ってやってたんだ」
「そうなんだ!いつか食べさせてよ、豪炎寺のたこ焼き」
「そのうちな」
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喉も渇いてたことだし、一気にドリンクを口に含む。甘くて冷たくて美味しいと感じた矢先、物凄い酸っぱい味が口いっぱいに広がった。まさかこんなに酸っぱいなんて。
「皆が飲んでから飲めばよかった……」
「ほう」
「面白い顔してたね鬼道、ポーカーフェイス崩れていたたた」
「安心しろ、美波も面白い顔だ」
「何一つ安心出来ない!」
でもこの酸っぱさが疲れた体に染みる。考えてみれば激闘と言える試合をした後、そのまま練習してるんだ。豪炎寺がいる嬉しさで疲れを忘れてただけで。
一之瀬の首に腕を回したリカが甘酸っぱい初恋の味だとはしゃいでる。……大丈夫かな、一之瀬。目が死んでるけど……。
「恋かあ……」
「え、何々?恋がしたいって?」
「言ってないよそんなこと」
「そんなこと言うて、ラブラブたこ焼き食べた癖に!」
「なっ、だから違うって!」
「そうだそうだ!##NAME##にはまだ早い!」
「やかましい!円堂がそんなんだからこんなボケボケ娘になっとんのや!」
「俺は何もしてないし美波はこれでいいんだ!」
「いいわけあるかあ!」
何でか言い合いを始めた守兄とリカ。更に何か言いかけたリカは、一之瀬によってズルズルと引き摺られていった。……やれやれ。
そして今日の夕飯は、カレーライス!少し慎重に口に運べば、普通の味だった。よし、タバスコは入ってない。よかった。
目の前では目金が火を吹いていて、これももう見慣れた光景になったな……。その犯人の夕弥は、期待した目で豪炎寺を見ている。こ、怖いもの知らず!
緊張しながら様子を窺う。けれどスプーンを動かす豪炎寺の表情は変わらない。あれ?と思った矢先、自分の分を食べた夕弥が火を吹いた。
「えっ」
「ああ、皿換えといたから」
何食わぬ顔でしれっと言う豪炎寺。お皿入れ替えて回避するなんて、流石というかしっかりしてる。……今度あたしもやってみようかな。
***
「あ、豪炎寺だ」
「美波か」
いつもみたいにキャラバンの上で星を見ようと登ったら、先客がいた。豪炎寺だ。
「もしかしてさっきまで守兄いた?」
「ああ。よく分かったな」
「勘!双子だからかな!」
「円堂が先に降りたのも双子だからか」
「かもしれないね」
多分さっきまで守兄がいた、豪炎寺の隣に寝転がる。沖縄の夜の空には、キラキラと星が輝いていた。
「皆もここでよく話したりしてるんだよ。あたしにとっては、星を見る時の特等席!」
「そうだったのか」
「稲妻町は夜でも明るいからさ、北海道とか福岡だと、よく見えるんだ」
すぐ横を見れば、豪炎寺がいる。本当に帰ってきたんだなあ……。やっと実感が湧いてきたというか……。
「豪炎寺!」
「何だ」
「なんでもないっ!」
「……美波」
「どしたの」
「なんでもない」
顔を見合わせて笑う。たわいもない、本当に何でもないやり取り。それすら久しぶりだから、どんなことでも嬉しくなる。
何を話そう。話したいことは沢山あったはずなのに、こうして一緒にいるだけで満足してしまいそうになる。
横を見ると豪炎寺と目が合った。あたしを見つめる豪炎寺の表情は穏やかで、またサッカー出来るようになって本当によかったと改めて思う。
豪炎寺とサッカー、といえば。
「豪炎寺もボールが怖いって思うことあるんだね」
「ん?ああ、吹雪に話したことか」
「エースだし、期待とかプレッシャーとかあるとは思ってたけどさ。あんなに直球に言うとは思ってなかった」
「そうじゃなきゃ伝わらないだろう。特に、今の吹雪には」
長らくチームを離れてたけど、豪炎寺はしろ君のことをよく理解してるようだった。……いや、関わりが少ないからこそかもしれない。
「吹雪と何かあったのか」
「……」
「今日の試合、前半は見てたんだ。デザームにシュートを止められた吹雪が倒れたのも」
「……そっか」
「あいつが何か重いものを抱えてるのは分かる。それを皆が知ってるのも」
俺にも持たせてくれないか。そう言われたら、話すしかない。
「しろ君、アツヤっていう弟がいたんだ。ディフェンダーのしろ君とフォワードのアツヤで、最強のコンビだった」
「だった、か」
「……うん。家族が、雪崩に巻き込まれて。だから大きな音とかも苦手みたい」
「そうか……」
黙り込んだ豪炎寺が空を見上げた。誰かを、思い浮かべてるような。夕香ちゃんが事故に遭った時の事を思い出してるのかな。
しろ君のこと、立向居や条兄はまだ知らないはずだ。二人にも説明はしておいた方がいいかもしれない。
「あたしさ、しろ君のこと前から知ってたんだ。一度会ったきりだけど」
「アツヤにも会ったのか」
「うん。だから思い悩んでるしろ君の力に、強くならなきゃって思ってたんだけど、全然上手くいかなかった」
知ってるだけじゃ意味がない。今日顔を合わせたばかりの豪炎寺の方が出来てるんじゃないか。
「強さと引き換えに失ったもの、か……」
「え?」
「円堂が言っていたんだ」
「失ったもの……」
ここに来るまでに、あたし達は格段に強くなった。一日中サッカーをした。エイリア学園を倒して、平和を取り戻すに。
強くなるのは、出来なかった事が出来るようになるのは、サッカーが上手くなるのは、楽しい。
けれど、試合中に感じる重圧は、フットボールフロンティアを勝ち抜いていた頃の比じゃない。負けられない戦い。倒せなかったら。そんなもしもを考えると、背筋が凍る。
サッカーは楽しいだけじゃない。そんなのとっくに知ってる。やるのが辛く感じる時だってある。それでも。
「……サッカーを楽しむ気持ちは、忘れちゃダメだよね」
「ああ。俺達は、サッカーが好きだから、戦っているんだ」
許せないのも、助けたいのも、原動力は好きだから。強さだけを求めたサッカーじゃ、ダメなんだ。
「ところでラブラブたこ焼きって何だ」
「それ聞くの!?……大阪のナニワランドで食べたんだよ。カップルで食べると一生ラブラブなんだってさ」
「誰と食べたんだ」
「あー、エイリアのアジト探しを手伝ってくれた現地で会った人」
風介について話す訳にはいかない。つい今日、ガゼルとして現れたんだから。
「そこから何でそのたこ焼きを食べるのに繋がるんだ」
「お腹空いてたから……。それに知らなかったんだよ、そんな噂があるなんて」
「……たこ焼きは俺も得意だな」
「作る方?」
「ああ。夕香にも作ってやってたんだ」
「そうなんだ!いつか食べさせてよ、豪炎寺のたこ焼き」
「そのうちな」
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