第3話 倒せ!黒の11人!!

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その場に立ち尽くして、どれくらい経っただろう。携帯の着信音で、我に返った。

携帯を開くと、なっちゃんからだった。うわ、不在着信の件数が凄い。



「もっ、もしもし!美波です!」

美波!今、どこにいるの!』

「なっちゃん……。えっと、色々あって」

『とにかく、今から言う場所にすぐ来て頂戴!』



用件だけ言うと、電話は切られてしまった。……みんなに、何かあったのかもしれない。早く合流しないと!

そう思って全力ダッシュをして辿り着いた場所には、



「サッカーコート……?」



どうしてこんなところにサッカーコートが。そういえば、財前総理は大のサッカー好きだってニュースで見たことがある。

それよりもだ。皆がスーツを着た大人たちとサッカーをしている。あ、一人女の子も混じってる。あの子がキャプテン?対する雷門は何故かフィールドには七人だけ。

とりあえず立ち止まってないで、ンチに行かないと。もう後半戦に入ってる。



「遅くなってごめんなさい!」

「全く、どこに行ってたのよ!」

「本当にごめんなさい!」



早速なっちゃんにお叱りを受けてしまった。続いて、秋や春ちゃんにも声をかけられる。

随分心配をかけたみたいだ。……それもそうか。世間はエイリア学園事件で、持ち切りなんだから。



「で、何で試合やってるの?あの人たちは?」

「財前総理のSPだよ。俺達を宇宙人だって言ってきたんだ」



あいつと円堂が揉めたんだ、と一郎太が、相手チームの女の子を指さした。なんでも、サッカーで宇宙人かどうかを証明することになったらしい。



「……何で?」

「私が知りたいわよ……」



頭が痛いとでも言うように、なっちゃんは額に手を当てる。サッカーで証明って、何をどう証明しろっていうんだろう……。

とにかく、やるからには勝たないと。そうじゃなきゃ、エイリア学園には勝てない。……エイリア学園、か。

昔の思い出を掘り返す。あの頃、サッカーを通して友達になった人たち。エイリア学園は、人間……しかも子供だ。

彼らを、どうしたら助けられるだろう。エイリア学園にあるっていうチームを、全て倒せばいいのだろうか。

皆にはどう言おう。でも、リュウジは本当は言いたくなかったんだと思う。それでもあたしに教えてくれた。それにまだ分からないことの方が沢山だ。なら、黙っていた方が……。

せめて瞳子監督には伝えるとか?フィールドを見ている監督の横顔を窺う。その凛とした表情に、何かが引っ掛かった。何だっけ?思い出そうにもなかなか出てこない。

……今、考えるのはやめよう。まずは目の前の試合だ。……そういえば、



「どうして一郎太たちは試合に出てないの?」

「3人は怪我をしているからよ」



そう答えたのは、瞳子監督だった。……怪我!?



「怪我って、大丈夫なの!?」

「そこまで大した怪我じゃないさ」

「ああ、もうそんな心配そうな顔すんなって」

「俺たちなら大丈夫っス!」

「ならいいけど……」



安心しろと、ぐしゃぐしゃと染岡が髪をかき混ぜてくる。ずれたハチマキを巻き直しつつ、思い出すのは半田たちのこと。

今もベッドの上で、きっと悔しさを噛みしめている。一郎太や染岡、壁山までいなくなってしまったらどうしようと、思わずにはいられない。



「ほら、顔上げろよ。俺達はここにいる。そうだろ?」

「一郎太……ありがとう」



試合に出られなくて悔しい筈なのに、あたしが励まされてしまった。うん、切り替えよう!3人は大丈夫!



「円堂さん、アップをしておいて。貴女には試合に出てもらうわ」

「あっ……はい!」



返事をした時には、監督はもうフィールドを見ていた。残り時間もそう多くはないし、早くやらないと。

ベンチから少し離れた所で軽く柔軟をしていると、一郎太が背中を押しにきてくれた。



「……で、何があったんだ?」

「あ、やっぱりそれ聞く?」

「何かあった、って顔してるからな」



背中を押す一郎太の顔は見えないけれど、心配しているんだと思う。フィールドにいる守兄たちだってそうだ。

……エイリア学園のこと、今は言う訳にはいかない。



「なんでもないよ、大丈夫。ただちょっと、遠くまで行きすぎただけ。あ、メールくれてたよね。気づかなくてごめん」

「いや、それはいいんだけど……。……なんでもなかったんだよな」

「……うん」

「分かった。美波がそう言うなら、それでいい」



それ以上は、一郎太は何も聞かなかった。




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