第37話 終わりなき脅威!
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真っ直ぐと、寸分の狂いもなく、玲名の放ったシュートは吉良さんへと一直線に飛ぶ。
「(ぶつかる――!)」
咄嗟に伸びた手。踏み出した足。皆の叫び声が聞こえたけど、止まれない、はずだった。
押し戻されるあたしの体。代わりに飛び出したのは、鮮やかな赤で。
「ヒロト君!」
「っ……」
シュートから吉良さんを庇ったのは、ヒロト君だった。
強力なシュートを腹に受けたヒロト君は、苦痛に顔を歪めながらも、それでも少しだけ笑みを浮かべて、フィールドへ倒れ込んだ。
背筋が、冷えた。
「ヒロト君ッ!」
「ヒロト!大丈夫か、ヒロト!」
「美波ちゃん、円堂くん……っ………」
「何故だ……何故だグラン!そいつは私達の存在を否定したんだぞ!そいつを信じて、戦ってきた私達の存在を!」
「玲名……」
怒鳴りつける玲名の言い分はもっともだ。ハイソルジャー。人間を兵器に。その為に、彼らが何をしてきたかなんて、想像もつかない。
――日本を揺るがす事も辞さない覚悟。お前はそれを壊しにいくんだ。
いつか言われた言葉。……その通りだよ、明王ちゃん。あたし達はこの試合で、エイリア学園の数年間を、兵器になるのも厭わない覚悟も、全部を終わらせた。
「美波もだ!お前は何より大切な仲間を侮辱された。なのに何故庇う!憎くはないのか!」
「……このシュートが当たってたら、絶対に、後悔するよ」
「何を」
「玲名達も大事な友達だからさ、ボールを憎しみをぶつける為に使って欲しくない」
「な……。私達は全てをかけて戦ってきた!ただ、強くなるために!それを今更間違っていた!?そんなことが許されるのか!グラン!」
昂った感情をそのままぶつけるかのように糾弾をする玲名に、ふらつきながらも立ち上がって、ヒロト君は口を開く。
「確かに……確かに、ウルビダの言う通りかもしれない。お前の気持ちも分かる。でも、それでもこの人は、俺の大事な父さんなんだ!」
後方で、吉良さんが身動ぎした。視線を向けると、呆然とヒロト君を見つめている。
「……もちろん、本当の父さんじゃないってことは分かっている。ヒロトって名前が、ずっと前に死んだ、父さんの本当の息子だってことも」
「本当の息子?」
「ええ」
本当の息子。もしかしてその人が、瞳子監督のお兄さんの……?
それでも構わなかったのだとヒロト君は言う。"本当のヒロト"を重ね合わせるだけでも、良かったのだと。
吉良さんが施設に来る日が、楽しみでしょうがなかったヒロト君。喜ぶ顔を見てるだけで、それだけでヒロト君は嬉しかった……。
「たとえ存在を否定されようと、父さんがもう、俺達のことを必要としなくなったとしても、それでも……父さんは、俺にはたった一人の父さんなんだ!」
絞り出すような叫びだった。辛そうで、だけど、ヒロト君の強い思いが伝わってくる。吉良さんが、大好きなんだって。
「ヒロト、お前はそこまで私を。……私が間違っていた。私にはもう、お前に父さんと呼んでもらえる資格などない」
そう言った吉良さんが、ボールを玲名の足元へ放った。まさか!
「さあ撃て。私に向かって撃て、ウルビダ」
「父さん!」
「こんなことで、許してもらおうなどとは思っていない。だが、少しでもお前の気が収まるのなら!さあ撃て!」
足元のボールに目を落とし、吉良さんを見つめる玲名の表情が険しくなって、その足を振り上げた。
今度は別の意味で背筋が冷える。訓練を積み重ねている上に、リミッターを解除した玲名のシュートを吉良さんが受けたら、ひとたまりもない。
「はああああっ!」
「ウルビダ!」
「玲名止めて!」
今度こそ庇う為に前へ飛び出す。玲名に当てさせちゃ駄目だ。吉良さんを、傷つけさせては。
――けど、その足が振り抜かれることはなかった。その場に崩れ落ちた玲名は、体を震わせて、泣いていた。
「撃てない……撃てるわけない!だって、だって貴方は、私にとっても、大切な父さんなんだ……っ!」
堰を切ったように涙を流す玲名に影響されたのか、他のジェネシスメンバー……布美子達も泣き出した。
しん……と辺りが静まり返る中、守兄にヒロト君を預けると、あたしは玲名の所へ足を向けた。
「ありがとう、玲名。撃たないでくれて」
「美波っ……う……ああっ………」
「……私は人として恥ずかしい。こんなにも私を思ってくれる子供達を、単なる復讐の道具に」
「話してもらえませんか、吉良さん。何故ジェネシス計画というものを企てたのか。どこで道を誤ってしまったのか」
巻き込んでしまったあの子達のためにも。やってきた鬼瓦さんがそう訊ねると、吉良さんは重い口を開いた。
「グランの言う通り、私にはヒロトという息子がいた」
"ヒロトさん"はサッカーがとても好きな子で、夢はサッカー選手になることだった。
でも、サッカー留学をした海外の地で、謎の死を遂げた。
吉良さんは真相の解明を求めたけど、事件には政府要人の一人息子が関わっていたために"ヒロト"さんは事故死として処理されてしまった。
吉良さんは何もしてやれなかったという悔しさと喪失感に心に穴が開いて、生きる気力さえも無くしてしまったそうだ。
そんな吉良さんに、瞳子さんは、親をなくした子供達の施設――お日さま園の設立を薦めた。
「初めは娘の頼みと思い作ったお日さま園。子供達の笑顔に、私の心の傷も癒えていった。本当に、お前達には感謝している。お前達がだけが、私の生きがいだった」
そして、5年前。……エイリア石が飛来した。
エイリア石のエナジーに魅了されて、復讐心が再燃した吉良さん。それに反発した瞳子さんは、吉良さんを止める為に今まで動いてきたのだった。
「私は、愚かだった」
「父さん……」
「美波も、この事を知っていたのか?」
「ううん。これは初めて知った」
「知っていた?そういえば、ウルビダの名前を……」
「貴様、まさかまだ」
「え……?」
ギリ、と鋭い目付きで玲名がヒロトを睨み付ける。対するヒロトは、心当たりがないと言いたげに、困惑していた。
……ま、忘れてるのはもう仕方ないか。寂しくないと言ったら嘘になるけど、戦いも終わったんだし、サッカープレイヤーとして、また一から関係を築いていけばいいや。
その時、物凄い爆音と共に地面が揺れた。エイリア石の装置を止めた時とじゃ比べ物にならないくらいの揺れ。
しかも一回じゃない。何回も揺れて、上からバラバラと瓦礫が落ちてきた。瓦礫を避けながら考える。一体、何が起きて……?
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「(ぶつかる――!)」
咄嗟に伸びた手。踏み出した足。皆の叫び声が聞こえたけど、止まれない、はずだった。
押し戻されるあたしの体。代わりに飛び出したのは、鮮やかな赤で。
「ヒロト君!」
「っ……」
シュートから吉良さんを庇ったのは、ヒロト君だった。
強力なシュートを腹に受けたヒロト君は、苦痛に顔を歪めながらも、それでも少しだけ笑みを浮かべて、フィールドへ倒れ込んだ。
背筋が、冷えた。
「ヒロト君ッ!」
「ヒロト!大丈夫か、ヒロト!」
「美波ちゃん、円堂くん……っ………」
「何故だ……何故だグラン!そいつは私達の存在を否定したんだぞ!そいつを信じて、戦ってきた私達の存在を!」
「玲名……」
怒鳴りつける玲名の言い分はもっともだ。ハイソルジャー。人間を兵器に。その為に、彼らが何をしてきたかなんて、想像もつかない。
――日本を揺るがす事も辞さない覚悟。お前はそれを壊しにいくんだ。
いつか言われた言葉。……その通りだよ、明王ちゃん。あたし達はこの試合で、エイリア学園の数年間を、兵器になるのも厭わない覚悟も、全部を終わらせた。
「美波もだ!お前は何より大切な仲間を侮辱された。なのに何故庇う!憎くはないのか!」
「……このシュートが当たってたら、絶対に、後悔するよ」
「何を」
「玲名達も大事な友達だからさ、ボールを憎しみをぶつける為に使って欲しくない」
「な……。私達は全てをかけて戦ってきた!ただ、強くなるために!それを今更間違っていた!?そんなことが許されるのか!グラン!」
昂った感情をそのままぶつけるかのように糾弾をする玲名に、ふらつきながらも立ち上がって、ヒロト君は口を開く。
「確かに……確かに、ウルビダの言う通りかもしれない。お前の気持ちも分かる。でも、それでもこの人は、俺の大事な父さんなんだ!」
後方で、吉良さんが身動ぎした。視線を向けると、呆然とヒロト君を見つめている。
「……もちろん、本当の父さんじゃないってことは分かっている。ヒロトって名前が、ずっと前に死んだ、父さんの本当の息子だってことも」
「本当の息子?」
「ええ」
本当の息子。もしかしてその人が、瞳子監督のお兄さんの……?
それでも構わなかったのだとヒロト君は言う。"本当のヒロト"を重ね合わせるだけでも、良かったのだと。
吉良さんが施設に来る日が、楽しみでしょうがなかったヒロト君。喜ぶ顔を見てるだけで、それだけでヒロト君は嬉しかった……。
「たとえ存在を否定されようと、父さんがもう、俺達のことを必要としなくなったとしても、それでも……父さんは、俺にはたった一人の父さんなんだ!」
絞り出すような叫びだった。辛そうで、だけど、ヒロト君の強い思いが伝わってくる。吉良さんが、大好きなんだって。
「ヒロト、お前はそこまで私を。……私が間違っていた。私にはもう、お前に父さんと呼んでもらえる資格などない」
そう言った吉良さんが、ボールを玲名の足元へ放った。まさか!
「さあ撃て。私に向かって撃て、ウルビダ」
「父さん!」
「こんなことで、許してもらおうなどとは思っていない。だが、少しでもお前の気が収まるのなら!さあ撃て!」
足元のボールに目を落とし、吉良さんを見つめる玲名の表情が険しくなって、その足を振り上げた。
今度は別の意味で背筋が冷える。訓練を積み重ねている上に、リミッターを解除した玲名のシュートを吉良さんが受けたら、ひとたまりもない。
「はああああっ!」
「ウルビダ!」
「玲名止めて!」
今度こそ庇う為に前へ飛び出す。玲名に当てさせちゃ駄目だ。吉良さんを、傷つけさせては。
――けど、その足が振り抜かれることはなかった。その場に崩れ落ちた玲名は、体を震わせて、泣いていた。
「撃てない……撃てるわけない!だって、だって貴方は、私にとっても、大切な父さんなんだ……っ!」
堰を切ったように涙を流す玲名に影響されたのか、他のジェネシスメンバー……布美子達も泣き出した。
しん……と辺りが静まり返る中、守兄にヒロト君を預けると、あたしは玲名の所へ足を向けた。
「ありがとう、玲名。撃たないでくれて」
「美波っ……う……ああっ………」
「……私は人として恥ずかしい。こんなにも私を思ってくれる子供達を、単なる復讐の道具に」
「話してもらえませんか、吉良さん。何故ジェネシス計画というものを企てたのか。どこで道を誤ってしまったのか」
巻き込んでしまったあの子達のためにも。やってきた鬼瓦さんがそう訊ねると、吉良さんは重い口を開いた。
「グランの言う通り、私にはヒロトという息子がいた」
"ヒロトさん"はサッカーがとても好きな子で、夢はサッカー選手になることだった。
でも、サッカー留学をした海外の地で、謎の死を遂げた。
吉良さんは真相の解明を求めたけど、事件には政府要人の一人息子が関わっていたために"ヒロト"さんは事故死として処理されてしまった。
吉良さんは何もしてやれなかったという悔しさと喪失感に心に穴が開いて、生きる気力さえも無くしてしまったそうだ。
そんな吉良さんに、瞳子さんは、親をなくした子供達の施設――お日さま園の設立を薦めた。
「初めは娘の頼みと思い作ったお日さま園。子供達の笑顔に、私の心の傷も癒えていった。本当に、お前達には感謝している。お前達がだけが、私の生きがいだった」
そして、5年前。……エイリア石が飛来した。
エイリア石のエナジーに魅了されて、復讐心が再燃した吉良さん。それに反発した瞳子さんは、吉良さんを止める為に今まで動いてきたのだった。
「私は、愚かだった」
「父さん……」
「美波も、この事を知っていたのか?」
「ううん。これは初めて知った」
「知っていた?そういえば、ウルビダの名前を……」
「貴様、まさかまだ」
「え……?」
ギリ、と鋭い目付きで玲名がヒロトを睨み付ける。対するヒロトは、心当たりがないと言いたげに、困惑していた。
……ま、忘れてるのはもう仕方ないか。寂しくないと言ったら嘘になるけど、戦いも終わったんだし、サッカープレイヤーとして、また一から関係を築いていけばいいや。
その時、物凄い爆音と共に地面が揺れた。エイリア石の装置を止めた時とじゃ比べ物にならないくらいの揺れ。
しかも一回じゃない。何回も揺れて、上からバラバラと瓦礫が落ちてきた。瓦礫を避けながら考える。一体、何が起きて……?
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