第34話 エイリア学園の正体!
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薄暗い部屋の奥に、それはあった。
鎮座する巨大な紫色の石。天井から伸びるパイプの中を、キラキラとした何かが通っていく。
「これが、エイリア石……」
瞳子監督の、吉良の、ヒロト君達の運命を狂わせた石。……見ているだけで引き込まれそう。
なんか、気持ち悪い。
人間に力を与える石。強い感情に共鳴する石。頭の中で警鐘が鳴り響く。これ以上は駄目だと、魅入ってはいけないと、本能が叫んだ。
「……さあ、もういいでしょう。ここに長居をしてはいけないわ」
「よく、分かりました。すみません、無理を言って」
「いいえ。貴方には、権利があると思ったのよ。だから、あの子もそれを託したんでしょう」
監督があたしが握りしめるカードキーに目をやった。あの子というのは風介のことだろう。
……次会った時は、お礼言わないと。友達として笑い合えるようになった世界で、今度こそ。
皆が待つ廊下へ向かう。背後のエイリア石が、怖い。動かない石のはずなのに、追いかけてきそうな気さえする。
とにかくこの場を離れたくて、足早に歩こうとした時だった。
――……美波ちゃん!
「……ヒロト君?」
まただ。今度はちゃんと聞こえた。聞き間違いじゃない。空耳でもない。これは、呼ばれたのはあたしの名前。そしてこの声はヒロト君のだ。
出所を探して振り向いた時、ガシャン!というけたたましい音を立てて、扉が閉まった。えっ……え!?
「う、うそ……」
カードキーを使っても、もう効力を失ってしまったのか、何も動かない。扉を叩いても揺れるだけ。嘘、閉じ込められた!?
「美波!無事か!」
「無事だけど、扉が開かない!」
どうして。何で今。いや、このエイリア石はエイリア学園にとってとても重要なものだ。より強固なセキュリティがあってもおかしくはない。
「美波さん、そのまま動かないで!こちらから開けるわ!」
「監督……!」
少しして、ビーッと音が鳴った。……開いた?扉に触れて伝わってきたのは、予想外の熱だった。
「あっつ!」
多分ロックは解除されてる。その代わりに、ドアのシステムがショートしたんだ。これじゃ、開けられない。
もう皆には先を急いでもらった方がいいかもしれない。そう思った時、何かが焼ける音がした。ま、まさか……!
「手を離してください!火傷しちゃいます!」
「誰も犠牲になんてしないわ……。皆、私が……守ってみせる……!」
「瞳子監督……!」
姿は見えなくても、瞳子監督が素手で扉を抉じ開けようとしているのが分かった。
目元が熱くなって、鼻の奥がツンとする。込み上げてくるものをどうにか抑えて、あたしも手を伸ばす。足さえあれば十分だ。
ジュッという音と扉の向こうの悲鳴、指先に走った痛み。力いっぱい左右へ押せば、重たい扉はやっと開いてくれた。
「美波さんっ!」
「監督!……瞳子さん!」
あたしが駆け寄るよりも早く、気付けば瞳子さんの腕の中にいた。本当に良かった。心からの安堵が伝わってきて、泣きたくなった。
パチパチ
その様子に何か言いたげな皆が口を開く前に、手を叩く音が響いた。良い余興を見せてもらった、といった風な拍手をするのは研崎だ。
エイリア石に気を取られてすっかり忘れてたけど、あたし達、研崎の先導で進んでたんだった。
「もう、よろしいでしょうか?」
旦那様がお待ちです。それだけ言って背を向けた研崎に、諸々を呑み込んで、あたし達もついていく。
警戒しながら連れて来られた場所は日本庭園に、教科書に載っていそうな書院造の建物。そこに、吉良が立っていた。
富士山麓の近未来的な施設にこんな部屋があるのは、なんだか違和感。ここだけ切り取られたかのように異質だ。
鹿威しのカコンという音が響く。切り出したのは、吉良からだった。
「プロモーションはどうでしたか?」
「お父さんは間違っています。ハイソルジャー計画を止めてください!」
強く言った瞳子さんに対して、吉良さんはやれやれとどこか呆れ混じりの小さなため息を吐いた。
「どうやら分かっていないようですね…。お前達も私の計画の一部に組み込まれていたという事が」
「……どういう意味ですか」
「エイリア学園との戦いで鍛え上げられたお前達が、ザ・ジェネシスにとっていずれ最高の対戦相手になると思ったからですよ」
瞳子監督が青ざめる。あたしだってそうだ。あたし達が強くなる事までもが計画の一部で、利用されてたなんて。
娘の瞳子監督の動きまで、手のひらの上だったって言うのか。吉良は表情一つ変えなくて、何を思っているのか読めない。
「私のしてきた事が……エイリア学園の、為だったというの?」
そんなことない。例えそうだったとしても、瞳子さんがあたし達を強くしてくれたのに変わりはないんだ……!
吉良の視線があたしに向く。それに対してあたしは身構えた。これからジェネシスと戦うわけだし、丁度いい。弱い自分なんかに負けるもんか。
「お久しぶりです。……とでも言っておきましょうか、美波さん」
吉良さんから発せられた言葉に、皆が凍りついたのを感じた。
皆の視線が、動揺が、色んな感情が、何も言われなくても、伝わってくる。
……焦るな、動揺するな。
.
鎮座する巨大な紫色の石。天井から伸びるパイプの中を、キラキラとした何かが通っていく。
「これが、エイリア石……」
瞳子監督の、吉良の、ヒロト君達の運命を狂わせた石。……見ているだけで引き込まれそう。
なんか、気持ち悪い。
人間に力を与える石。強い感情に共鳴する石。頭の中で警鐘が鳴り響く。これ以上は駄目だと、魅入ってはいけないと、本能が叫んだ。
「……さあ、もういいでしょう。ここに長居をしてはいけないわ」
「よく、分かりました。すみません、無理を言って」
「いいえ。貴方には、権利があると思ったのよ。だから、あの子もそれを託したんでしょう」
監督があたしが握りしめるカードキーに目をやった。あの子というのは風介のことだろう。
……次会った時は、お礼言わないと。友達として笑い合えるようになった世界で、今度こそ。
皆が待つ廊下へ向かう。背後のエイリア石が、怖い。動かない石のはずなのに、追いかけてきそうな気さえする。
とにかくこの場を離れたくて、足早に歩こうとした時だった。
――……美波ちゃん!
「……ヒロト君?」
まただ。今度はちゃんと聞こえた。聞き間違いじゃない。空耳でもない。これは、呼ばれたのはあたしの名前。そしてこの声はヒロト君のだ。
出所を探して振り向いた時、ガシャン!というけたたましい音を立てて、扉が閉まった。えっ……え!?
「う、うそ……」
カードキーを使っても、もう効力を失ってしまったのか、何も動かない。扉を叩いても揺れるだけ。嘘、閉じ込められた!?
「美波!無事か!」
「無事だけど、扉が開かない!」
どうして。何で今。いや、このエイリア石はエイリア学園にとってとても重要なものだ。より強固なセキュリティがあってもおかしくはない。
「美波さん、そのまま動かないで!こちらから開けるわ!」
「監督……!」
少しして、ビーッと音が鳴った。……開いた?扉に触れて伝わってきたのは、予想外の熱だった。
「あっつ!」
多分ロックは解除されてる。その代わりに、ドアのシステムがショートしたんだ。これじゃ、開けられない。
もう皆には先を急いでもらった方がいいかもしれない。そう思った時、何かが焼ける音がした。ま、まさか……!
「手を離してください!火傷しちゃいます!」
「誰も犠牲になんてしないわ……。皆、私が……守ってみせる……!」
「瞳子監督……!」
姿は見えなくても、瞳子監督が素手で扉を抉じ開けようとしているのが分かった。
目元が熱くなって、鼻の奥がツンとする。込み上げてくるものをどうにか抑えて、あたしも手を伸ばす。足さえあれば十分だ。
ジュッという音と扉の向こうの悲鳴、指先に走った痛み。力いっぱい左右へ押せば、重たい扉はやっと開いてくれた。
「美波さんっ!」
「監督!……瞳子さん!」
あたしが駆け寄るよりも早く、気付けば瞳子さんの腕の中にいた。本当に良かった。心からの安堵が伝わってきて、泣きたくなった。
パチパチ
その様子に何か言いたげな皆が口を開く前に、手を叩く音が響いた。良い余興を見せてもらった、といった風な拍手をするのは研崎だ。
エイリア石に気を取られてすっかり忘れてたけど、あたし達、研崎の先導で進んでたんだった。
「もう、よろしいでしょうか?」
旦那様がお待ちです。それだけ言って背を向けた研崎に、諸々を呑み込んで、あたし達もついていく。
警戒しながら連れて来られた場所は日本庭園に、教科書に載っていそうな書院造の建物。そこに、吉良が立っていた。
富士山麓の近未来的な施設にこんな部屋があるのは、なんだか違和感。ここだけ切り取られたかのように異質だ。
鹿威しのカコンという音が響く。切り出したのは、吉良からだった。
「プロモーションはどうでしたか?」
「お父さんは間違っています。ハイソルジャー計画を止めてください!」
強く言った瞳子さんに対して、吉良さんはやれやれとどこか呆れ混じりの小さなため息を吐いた。
「どうやら分かっていないようですね…。お前達も私の計画の一部に組み込まれていたという事が」
「……どういう意味ですか」
「エイリア学園との戦いで鍛え上げられたお前達が、ザ・ジェネシスにとっていずれ最高の対戦相手になると思ったからですよ」
瞳子監督が青ざめる。あたしだってそうだ。あたし達が強くなる事までもが計画の一部で、利用されてたなんて。
娘の瞳子監督の動きまで、手のひらの上だったって言うのか。吉良は表情一つ変えなくて、何を思っているのか読めない。
「私のしてきた事が……エイリア学園の、為だったというの?」
そんなことない。例えそうだったとしても、瞳子さんがあたし達を強くしてくれたのに変わりはないんだ……!
吉良の視線があたしに向く。それに対してあたしは身構えた。これからジェネシスと戦うわけだし、丁度いい。弱い自分なんかに負けるもんか。
「お久しぶりです。……とでも言っておきましょうか、美波さん」
吉良さんから発せられた言葉に、皆が凍りついたのを感じた。
皆の視線が、動揺が、色んな感情が、何も言われなくても、伝わってくる。
……焦るな、動揺するな。
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