第33話 ついに来た!エイリア学園!!
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雷の音に肩が跳ねて、肌が粟立った。落ちた場所がさっきより近かったのか、その音に単純に驚いたのもある。
けれどそれより、さっきから膝を抱えて体を震わせているしろ君が心配だった。顔色は真っ青で、どうしようもなく焦る。
「……あの音……」
「音?」
「っあああああ!!」
「しろ君!」
また、雷が落ちた。悲鳴をあげパニックになっているのを少しでも落ち着けたくて抱き締めると、縋るようにジャージを掴まれた。
「あれは雪崩の音じゃない!しっかりしろ!」
「嫌だ!皆いなくなっちゃう!」
「大丈夫だ!誰もいなくならない!」
「ここにいるから!ちゃんと見て!」
豪炎寺と一緒に宥めるように声をかけて、背中を擦る。しろ君は顔を上げてあたし達を見ると、僅かながらに安心した表情を見せた。
ホッとして息を吐いたのも束の間で、しろ君は再び俯く。声をかけると、うっすらと苦笑いを浮かべながら言葉を紡いだ。
「……僕にはアツヤが必要だった」
「必要だった?」
「独りぼっちが怖かった。雪崩は、一瞬で僕を独りぼっちにした。僕は寂しくて寂しくて、どうにかなりそうだった……」
独りになったしろ君は強くなりたいと思った。けれど強くなって完璧になる為に、しろ君にはアツヤが必要だった。
しろ君は自分を弱いと思っていて、アツヤがいればそれを変えられると考えた。その時、声が聞こえたという。
サッカーをしていてボールを奪われてしまった時に、全然ダメだとアツヤの声が聞こえたと。
前に教えてくれた聞こえた声って、そういうことだったんだ。それで、しろ君の中にアツヤが生まれた……。
「アツヤに委ねると、心の底から力で満たされるようで、気持ちよかった。いつの間にか頼ってしまうようになって、でも段々それが怖くなってきた」
「怖い?」
「アツヤがいればいる程、本当の僕が……吹雪士郎がどこかに行ってしまいそうになる……」
アツヤがフォワードで、しろ君はディフェンダー。戦力を必要としてた雷門が欲しかったのは、フォワードの、アツヤの力。
アツヤの力を求められて、しろ君は必要なのは自分ではないとまで考えるようになってしまった……。
「……教えてくれ、吹雪。お前の考える完璧とはなんだ」
「……? 僕は、アツヤと一緒に……」
「それがお前の完璧なのか」
「だって、お父さんはそれが完璧なんだって……っ……」
しろ君の瞳が不安げに揺れる。ただでさえ不安定なのに、豪炎寺はどうしてそんなこと。
「俺は、完璧じゃなくてもサッカー楽しいぜ」
「豪炎寺くん……?」
「練習は一人でやれ。完璧になりたいなら、必要なものを間違えないことだ」
「な……そんな言い方!」
「美波は吹雪を甘やかし過ぎだ。いつまでも、このままでいる訳にはいかないことくらい、とっくに分かっているだろう」
「それは」
「自分は言える立場じゃない、か」
「うっ……」
豪炎寺の目がそれも逃げだと言っているようで、思わず視線を逸らした。
「吹雪も、美波だけじゃないんだ。目の前の現実から逃げるな。そして、仲間を信じろ」
「え……」
そう言って豪炎寺は背を向けた。そのまま振り向きもせずに歩いて行く。
「豪炎寺くんっ……!」
「豪炎寺!」
「待って!」
「ぐえっ」
思わず立ち上がって追いかけようとしたら、しろ君にユニフォームの裾を掴まれて引き戻された。
「ちょ、しろく、首しまって」
「行かないで」
「しろ」
「行かないで……!」
「……しろ君」
「美波ちゃんまでいなくなっちゃったら……僕は……僕は……。独りは……独りはやだよ!」
絞り出すような悲鳴に力が抜ける。その場に座り込むと、しろ君はあたしに抱きついてきた。
ごめん、豪炎寺。豪炎寺の言う通りだ。辛いことから逃げて、先伸ばしにし続けて、そのツケが今になって全部回ってきてる。
……でも、これじゃ、ダメだ。
あたしもしろ君も、怯えてないで、怖がってないで、前に一歩進まなきゃ。進む時が、来たんだ。
「アツヤがいる。美波ちゃんもいる。なのにどうして、僕は完璧になれないんだ……!」
「……ねえ、しろ君。完璧ってなんなのかな」
「美波、ちゃん……?」
「あたしは……分かんないや。多分、皆が思う完璧は、全部形が違うんだろうけど」
裾を掴むしろ君の手をそっと外して、立ち上がる。遠くの雷雲は相変わらず。雨は少し弱くなってきた。
「しろ君なら、しろ君の完璧を見つけられるよ」
アツヤを生み出したのを間違いだとは思わない。でも、しろ君には、他にも完璧の在り方があるんじゃないかとも思うんだ。
「皆に隠し事してたあたしなんかが言うのもおかしいけど……仲間がいるからね!」
「美波ちゃん」
「ごめん。あたし、行くね」
そのまま背を向けて、全力で走り出す。名前を呼ばれた気がしたけれど、雨のおかげか聞こえなかった。
そのまま堤防を駆け上がって、でもまだ家に変える気分にもならなくて、とにかくガムシャラに走ろうと前をよく見てなかったのが悪かった。
衝撃と共にしりもちをつく。脇に白と黒のボールが転がった。見上げればそこには豪炎寺がいて、まだそう遠くには行ってなかったらしい。
「ぶつかってごめん」
「いや……前はちゃんと見た方がいい」
「本当にね」
落ちたボールを拾って立ち上がる。そのまま渡そうとして、あることを閃いた。これは名案かもしれない。
「豪炎寺に頼みがあるんだ」
「頼み?」
「一発入れてほしい」
「……は?」
「明日は決戦だから、気合入れたい」
強烈なシュートを食らえば、少しはすっきりする、かも。
「……ファイアトルネードの使い方を勘違いしてないか」
「守兄にも鬼道にもやってたじゃん」
「それはそれだ」
「変わらないよ」
「あのな」
「うん」
「仲間にボールを撃ち込めと言われる側にもなってくれ」
「自己申告かどうかの違い?」
「……お前がこういう言い方をされるのが嫌いなのは知ってるが、あえて言うぞ」
「……」
「美波は女子だ」
グサッと刺された。流石の豪炎寺も、異性にシュートをぶつける趣味はないってことなんだろうけど。いや前のが趣味ってわけでもないけど。
こういう時に限って女子扱いなんだから釈然としない。
「あにすんの」
「これで勘弁してくれないか」
みょんと頬が伸ばされた。いつも鬼道がやってるやつ。この全然痛くない。眉をハの字にした豪炎寺に、無理強いするつもりもないから、素直に引き下がることにする。
「俺からもいいか。さっき何を言いかけたんだ」
「何のこと?」
「雷で遮られた時のだ」
「……明日には分かるよ」
てっきり聞こえてないと思ってたのに、何かを明かそうとしてたのはバレてたらしい。
「好きなものに嘘をつくな。前に、お前が俺に言ったことだ」
「……あたし、皆に沢山嘘ついてたもんね」
「そうじゃない。後悔しない道を選べという話だ」
「もうしてるかな……」
「それならこれ以上後悔しないようにしろ」
豪炎寺の目はどこまでも真っ直ぐだ。眩しすぎるくらいで、それこそ、燃え盛る炎のような。
「……友達、なんだ」
「そうか」
「ヒロトも晴矢も風介も……大事な友達。だから、もう一度、皆で笑ってサッカーがしたい」
「それなら、明日は絶対に勝たないとな」
「うん」
豪炎寺の手が頭に乗せられた。優しい手だった。
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けれどそれより、さっきから膝を抱えて体を震わせているしろ君が心配だった。顔色は真っ青で、どうしようもなく焦る。
「……あの音……」
「音?」
「っあああああ!!」
「しろ君!」
また、雷が落ちた。悲鳴をあげパニックになっているのを少しでも落ち着けたくて抱き締めると、縋るようにジャージを掴まれた。
「あれは雪崩の音じゃない!しっかりしろ!」
「嫌だ!皆いなくなっちゃう!」
「大丈夫だ!誰もいなくならない!」
「ここにいるから!ちゃんと見て!」
豪炎寺と一緒に宥めるように声をかけて、背中を擦る。しろ君は顔を上げてあたし達を見ると、僅かながらに安心した表情を見せた。
ホッとして息を吐いたのも束の間で、しろ君は再び俯く。声をかけると、うっすらと苦笑いを浮かべながら言葉を紡いだ。
「……僕にはアツヤが必要だった」
「必要だった?」
「独りぼっちが怖かった。雪崩は、一瞬で僕を独りぼっちにした。僕は寂しくて寂しくて、どうにかなりそうだった……」
独りになったしろ君は強くなりたいと思った。けれど強くなって完璧になる為に、しろ君にはアツヤが必要だった。
しろ君は自分を弱いと思っていて、アツヤがいればそれを変えられると考えた。その時、声が聞こえたという。
サッカーをしていてボールを奪われてしまった時に、全然ダメだとアツヤの声が聞こえたと。
前に教えてくれた聞こえた声って、そういうことだったんだ。それで、しろ君の中にアツヤが生まれた……。
「アツヤに委ねると、心の底から力で満たされるようで、気持ちよかった。いつの間にか頼ってしまうようになって、でも段々それが怖くなってきた」
「怖い?」
「アツヤがいればいる程、本当の僕が……吹雪士郎がどこかに行ってしまいそうになる……」
アツヤがフォワードで、しろ君はディフェンダー。戦力を必要としてた雷門が欲しかったのは、フォワードの、アツヤの力。
アツヤの力を求められて、しろ君は必要なのは自分ではないとまで考えるようになってしまった……。
「……教えてくれ、吹雪。お前の考える完璧とはなんだ」
「……? 僕は、アツヤと一緒に……」
「それがお前の完璧なのか」
「だって、お父さんはそれが完璧なんだって……っ……」
しろ君の瞳が不安げに揺れる。ただでさえ不安定なのに、豪炎寺はどうしてそんなこと。
「俺は、完璧じゃなくてもサッカー楽しいぜ」
「豪炎寺くん……?」
「練習は一人でやれ。完璧になりたいなら、必要なものを間違えないことだ」
「な……そんな言い方!」
「美波は吹雪を甘やかし過ぎだ。いつまでも、このままでいる訳にはいかないことくらい、とっくに分かっているだろう」
「それは」
「自分は言える立場じゃない、か」
「うっ……」
豪炎寺の目がそれも逃げだと言っているようで、思わず視線を逸らした。
「吹雪も、美波だけじゃないんだ。目の前の現実から逃げるな。そして、仲間を信じろ」
「え……」
そう言って豪炎寺は背を向けた。そのまま振り向きもせずに歩いて行く。
「豪炎寺くんっ……!」
「豪炎寺!」
「待って!」
「ぐえっ」
思わず立ち上がって追いかけようとしたら、しろ君にユニフォームの裾を掴まれて引き戻された。
「ちょ、しろく、首しまって」
「行かないで」
「しろ」
「行かないで……!」
「……しろ君」
「美波ちゃんまでいなくなっちゃったら……僕は……僕は……。独りは……独りはやだよ!」
絞り出すような悲鳴に力が抜ける。その場に座り込むと、しろ君はあたしに抱きついてきた。
ごめん、豪炎寺。豪炎寺の言う通りだ。辛いことから逃げて、先伸ばしにし続けて、そのツケが今になって全部回ってきてる。
……でも、これじゃ、ダメだ。
あたしもしろ君も、怯えてないで、怖がってないで、前に一歩進まなきゃ。進む時が、来たんだ。
「アツヤがいる。美波ちゃんもいる。なのにどうして、僕は完璧になれないんだ……!」
「……ねえ、しろ君。完璧ってなんなのかな」
「美波、ちゃん……?」
「あたしは……分かんないや。多分、皆が思う完璧は、全部形が違うんだろうけど」
裾を掴むしろ君の手をそっと外して、立ち上がる。遠くの雷雲は相変わらず。雨は少し弱くなってきた。
「しろ君なら、しろ君の完璧を見つけられるよ」
アツヤを生み出したのを間違いだとは思わない。でも、しろ君には、他にも完璧の在り方があるんじゃないかとも思うんだ。
「皆に隠し事してたあたしなんかが言うのもおかしいけど……仲間がいるからね!」
「美波ちゃん」
「ごめん。あたし、行くね」
そのまま背を向けて、全力で走り出す。名前を呼ばれた気がしたけれど、雨のおかげか聞こえなかった。
そのまま堤防を駆け上がって、でもまだ家に変える気分にもならなくて、とにかくガムシャラに走ろうと前をよく見てなかったのが悪かった。
衝撃と共にしりもちをつく。脇に白と黒のボールが転がった。見上げればそこには豪炎寺がいて、まだそう遠くには行ってなかったらしい。
「ぶつかってごめん」
「いや……前はちゃんと見た方がいい」
「本当にね」
落ちたボールを拾って立ち上がる。そのまま渡そうとして、あることを閃いた。これは名案かもしれない。
「豪炎寺に頼みがあるんだ」
「頼み?」
「一発入れてほしい」
「……は?」
「明日は決戦だから、気合入れたい」
強烈なシュートを食らえば、少しはすっきりする、かも。
「……ファイアトルネードの使い方を勘違いしてないか」
「守兄にも鬼道にもやってたじゃん」
「それはそれだ」
「変わらないよ」
「あのな」
「うん」
「仲間にボールを撃ち込めと言われる側にもなってくれ」
「自己申告かどうかの違い?」
「……お前がこういう言い方をされるのが嫌いなのは知ってるが、あえて言うぞ」
「……」
「美波は女子だ」
グサッと刺された。流石の豪炎寺も、異性にシュートをぶつける趣味はないってことなんだろうけど。いや前のが趣味ってわけでもないけど。
こういう時に限って女子扱いなんだから釈然としない。
「あにすんの」
「これで勘弁してくれないか」
みょんと頬が伸ばされた。いつも鬼道がやってるやつ。この全然痛くない。眉をハの字にした豪炎寺に、無理強いするつもりもないから、素直に引き下がることにする。
「俺からもいいか。さっき何を言いかけたんだ」
「何のこと?」
「雷で遮られた時のだ」
「……明日には分かるよ」
てっきり聞こえてないと思ってたのに、何かを明かそうとしてたのはバレてたらしい。
「好きなものに嘘をつくな。前に、お前が俺に言ったことだ」
「……あたし、皆に沢山嘘ついてたもんね」
「そうじゃない。後悔しない道を選べという話だ」
「もうしてるかな……」
「それならこれ以上後悔しないようにしろ」
豪炎寺の目はどこまでも真っ直ぐだ。眩しすぎるくらいで、それこそ、燃え盛る炎のような。
「……友達、なんだ」
「そうか」
「ヒロトも晴矢も風介も……大事な友達。だから、もう一度、皆で笑ってサッカーがしたい」
「それなら、明日は絶対に勝たないとな」
「うん」
豪炎寺の手が頭に乗せられた。優しい手だった。
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