第27話 凍てつく闇・ダイヤモンドダスト!
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豪炎寺が帰ってきた。イプシロンにも勝った。なのに、皆の表情は明るくない。
現れた風介、否ガゼル。そしてエイリア学園マスターランクチーム――ダイヤモンドダスト。新しいチームの存在が、勝利の喜びを吹き飛ばしてしまった。
あとどれだけのチームがあるのかと不安そうな表情が並ぶ。……あたしだけが知っていることが沢山ある。黙っているのを決めたものの、皆に対して罪悪感はどうしても湧く。
そんなチームの不安を振り払うように、守兄がボールを豪炎寺へ投げた。
「円堂……」
「分かってるって!お帰り、豪炎寺!」
蹴り返されたボールを受け止めた守兄が、満面の笑みでそう言った。その明るい声に、皆が段々と笑顔になっていく。
そうだ。後のことは後のこと。今はただ、目の前のことを喜んだっていい!
「待たせやがって!」
「ほんとっすよ!」
「ありがとう。……監督!」
豪炎寺が瞳子監督に向き直る。監督もお帰りなさいと豪炎寺を迎えてくれた。それに対して豪炎寺は、
「ありがとうございました!」
そうお礼を言って頭を下げた。皆驚いてるけど、ちゃんと理由はある。豪炎寺がチームを離れたのは、エイリア学園が原因なんだから。
「あの時、監督が行かせてくれなかったら、俺はアイツらの仲間に引き込まれていたかもしれません」
「さあ、なんのことかしら」
「監督……」
「アイツら?」
「そいつは俺が説明しよう」
やってきたのは刑事さんこと鬼瓦さんだった。しかも土方と一緒にいる。
鬼瓦さんが言うには、エイリア学園に賛同している人達が、夕香ちゃんを人質に仲間になるように脅してきたそうだ。
もし話したら夕香ちゃんがどうなるか。そう口止めされて、豪炎寺は黙ってキャラバンを去るのを選んだ。反撃のチャンスを待つ為に。
それまで身を隠す場所として提供されたのが、人を隠すなら人の中ということで、家族の多い土方の家だった。だから鬼瓦さんと一緒にいたんだ……。
そして夕香ちゃんの身辺を探って安全を確保して、漸く豪炎寺はチームに戻ることが出来た。
「ありがとうございます!刑事さん!」
「礼なら土方に言ってくれ」
「ええっ!やめてくれよ!おやっさんとは親父の代からの付き合いだ!これくらいどうってことないさ!」
「いや、お前がいなかったら……お前がいたから爆熱ストームを完成することを出来た。ありがとう、土方」
「へっ……」
「何はともあれまた一緒にサッカー出来て嬉しいよ!豪炎寺!」
「ああ。約束、守れたな」
「うん!凄く強くなって帰ってきた!でもまさか沖縄で、しかも土方のとこにいたなんて」
「待て、美波は豪炎寺がチームを離れた理由を知っていたのか?」
「詳しいことは知らなかったよ。稲妻町を発つ前に病院で会った時、様子がおかしかったから、もしかしたらって聞いてみたんだ」
持ち上がりかけた鬼道の手が下がっていく。……多分、返答次第ではまた頬をつねられてたな。
そんなあたしの頭の上に豪炎寺の手が乗った。こうして撫でられるのも久しぶりだ。なんだか落ち着く、ような?
「豪炎寺くん。どうだった?久しぶりの雷門は」
「ああ……最高だ!」
最高。その笑顔につられて笑った。そんなこと言われたら、やる事は一つだ。
「よーし、皆!サッカーやろうぜ!」
久しぶりの豪炎寺がいる雷門。豪炎寺がいるサッカー。心なしか豪炎寺の絡んだプレーが多いのは、皆がこの瞬間を心待ちにしてたからかな。
土門が楽しそうに豪炎寺へパスを出す。それを見た条兄が、ちょっとムッとした表情になった。
「なんだよ!俺とやる時もそれぐらい楽しそうにしろよな!」
「まあまあ。条兄とのサッカーも楽しいよ!」
リカはリカで豪炎寺に勝負を挑んだ末に認めてくれたようだった。試合の後とはいえあの猛攻をかわしきるのは凄いな……流石は豪炎寺だ。
豪炎寺がしろ君の方へ転がってったボールを拾いに行く。何か声をかけようとしてるのがなんとなく分かって、気になったのでついていくことにする。
ボールが怖くなったか。その問いかけにしろ君は答えられない。
「あの、豪炎寺」
「怖くて当然だ」
「え……?」
「俺も怖い」
「!」
「怖さを抱えて蹴る。それだけだ」
「怖さを抱えて、蹴る……」
ボールを受け取ったしろ君は、何か考え込んでいるようだった。
凄いな豪炎寺は。口数は少ないけど、どこまでも真っ直ぐな奴だから、その一言に込められた沢山の思いが伝わってくる。
「豪炎寺!立向居の相手をしてやってくれないか?」
「分かった!俺も円堂が認めたキーパーの力を見てみたい!」
豪炎寺対立向居か……。面白そう!豪炎寺相手に、立向居はどれだけやれるだろう。
守兄がしろ君にも声をかける。ちょっとだけ笑ったしろ君は、頷いてフィールドへ足を踏み入れた。
「しろ君、大丈夫だよね」
「ああ。吹雪、頑張れよ」
豪炎寺と立向居が対峙する。漂う緊張した空気に、全員が足を止めて、二人を見守っていた。
「ファイアトルネード!」
「ゴッドハンド!」
豪炎寺の回転に合わせて渦巻いた炎が、立向居のゴッドハンドを打ち砕いた。
何度見ても惚れ惚れするようなシュートって、こういうことだとつくづく思う。初めて会った時から変わらない、豪炎寺のシュートだ。
「やっぱり豪炎寺だよな」
「すげえ、円堂が言った通りだ」
「立向居のゴッドハンドじゃ、手も足も出ないか」
「まだ経験だって浅いしね」
でも立向居はこれからどんどん伸びる。なんてったって、マジン・ザ・ハンドだって使えるんだから。
立向居が投げたボールを目で追う。受け取った鬼道は少し考え込むと、しろ君にパスを出した。
「っあ……!」
漏れた声には、確かに怯えの色が乗っていた。迫るボールにしろ君は動けない。触れられることなく、ボールは地面に転がった。
悔しげに唇をかみ締めるしろ君の元へ、皆が集まる。
「……僕、このチームのお荷物になっちゃったね」
「お荷物って、そんなことない!このチームに必要ない選手なんていない!」
絞り出すような、今にも消えてしまいそうな声に、思わずそう叫んだ。お荷物なんて誰も思ってない。
しろ君のディフェンスに、オフェンスに、雷門は何度助けられただろう。今度は、あたし達の番!
「美波の言う通りだ!雷門には、お前が必要なんだ!」
「しろ君にはあたし達が、仲間がいるよ!」
「……うん」
「よーし皆!もうひと踏ん張りだ!ボールはいつも、俺達の前にある!」
意気込む皆に、どこか戸惑っているようなしろ君。……時間が必要だ。今すぐじゃなくていい。だから、それまでは。
「しろ君。絶対、置いてかないよ。フィールドで待ってる!」
「……ありがとう、美波ちゃん」
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現れた風介、否ガゼル。そしてエイリア学園マスターランクチーム――ダイヤモンドダスト。新しいチームの存在が、勝利の喜びを吹き飛ばしてしまった。
あとどれだけのチームがあるのかと不安そうな表情が並ぶ。……あたしだけが知っていることが沢山ある。黙っているのを決めたものの、皆に対して罪悪感はどうしても湧く。
そんなチームの不安を振り払うように、守兄がボールを豪炎寺へ投げた。
「円堂……」
「分かってるって!お帰り、豪炎寺!」
蹴り返されたボールを受け止めた守兄が、満面の笑みでそう言った。その明るい声に、皆が段々と笑顔になっていく。
そうだ。後のことは後のこと。今はただ、目の前のことを喜んだっていい!
「待たせやがって!」
「ほんとっすよ!」
「ありがとう。……監督!」
豪炎寺が瞳子監督に向き直る。監督もお帰りなさいと豪炎寺を迎えてくれた。それに対して豪炎寺は、
「ありがとうございました!」
そうお礼を言って頭を下げた。皆驚いてるけど、ちゃんと理由はある。豪炎寺がチームを離れたのは、エイリア学園が原因なんだから。
「あの時、監督が行かせてくれなかったら、俺はアイツらの仲間に引き込まれていたかもしれません」
「さあ、なんのことかしら」
「監督……」
「アイツら?」
「そいつは俺が説明しよう」
やってきたのは刑事さんこと鬼瓦さんだった。しかも土方と一緒にいる。
鬼瓦さんが言うには、エイリア学園に賛同している人達が、夕香ちゃんを人質に仲間になるように脅してきたそうだ。
もし話したら夕香ちゃんがどうなるか。そう口止めされて、豪炎寺は黙ってキャラバンを去るのを選んだ。反撃のチャンスを待つ為に。
それまで身を隠す場所として提供されたのが、人を隠すなら人の中ということで、家族の多い土方の家だった。だから鬼瓦さんと一緒にいたんだ……。
そして夕香ちゃんの身辺を探って安全を確保して、漸く豪炎寺はチームに戻ることが出来た。
「ありがとうございます!刑事さん!」
「礼なら土方に言ってくれ」
「ええっ!やめてくれよ!おやっさんとは親父の代からの付き合いだ!これくらいどうってことないさ!」
「いや、お前がいなかったら……お前がいたから爆熱ストームを完成することを出来た。ありがとう、土方」
「へっ……」
「何はともあれまた一緒にサッカー出来て嬉しいよ!豪炎寺!」
「ああ。約束、守れたな」
「うん!凄く強くなって帰ってきた!でもまさか沖縄で、しかも土方のとこにいたなんて」
「待て、美波は豪炎寺がチームを離れた理由を知っていたのか?」
「詳しいことは知らなかったよ。稲妻町を発つ前に病院で会った時、様子がおかしかったから、もしかしたらって聞いてみたんだ」
持ち上がりかけた鬼道の手が下がっていく。……多分、返答次第ではまた頬をつねられてたな。
そんなあたしの頭の上に豪炎寺の手が乗った。こうして撫でられるのも久しぶりだ。なんだか落ち着く、ような?
「豪炎寺くん。どうだった?久しぶりの雷門は」
「ああ……最高だ!」
最高。その笑顔につられて笑った。そんなこと言われたら、やる事は一つだ。
「よーし、皆!サッカーやろうぜ!」
久しぶりの豪炎寺がいる雷門。豪炎寺がいるサッカー。心なしか豪炎寺の絡んだプレーが多いのは、皆がこの瞬間を心待ちにしてたからかな。
土門が楽しそうに豪炎寺へパスを出す。それを見た条兄が、ちょっとムッとした表情になった。
「なんだよ!俺とやる時もそれぐらい楽しそうにしろよな!」
「まあまあ。条兄とのサッカーも楽しいよ!」
リカはリカで豪炎寺に勝負を挑んだ末に認めてくれたようだった。試合の後とはいえあの猛攻をかわしきるのは凄いな……流石は豪炎寺だ。
豪炎寺がしろ君の方へ転がってったボールを拾いに行く。何か声をかけようとしてるのがなんとなく分かって、気になったのでついていくことにする。
ボールが怖くなったか。その問いかけにしろ君は答えられない。
「あの、豪炎寺」
「怖くて当然だ」
「え……?」
「俺も怖い」
「!」
「怖さを抱えて蹴る。それだけだ」
「怖さを抱えて、蹴る……」
ボールを受け取ったしろ君は、何か考え込んでいるようだった。
凄いな豪炎寺は。口数は少ないけど、どこまでも真っ直ぐな奴だから、その一言に込められた沢山の思いが伝わってくる。
「豪炎寺!立向居の相手をしてやってくれないか?」
「分かった!俺も円堂が認めたキーパーの力を見てみたい!」
豪炎寺対立向居か……。面白そう!豪炎寺相手に、立向居はどれだけやれるだろう。
守兄がしろ君にも声をかける。ちょっとだけ笑ったしろ君は、頷いてフィールドへ足を踏み入れた。
「しろ君、大丈夫だよね」
「ああ。吹雪、頑張れよ」
豪炎寺と立向居が対峙する。漂う緊張した空気に、全員が足を止めて、二人を見守っていた。
「ファイアトルネード!」
「ゴッドハンド!」
豪炎寺の回転に合わせて渦巻いた炎が、立向居のゴッドハンドを打ち砕いた。
何度見ても惚れ惚れするようなシュートって、こういうことだとつくづく思う。初めて会った時から変わらない、豪炎寺のシュートだ。
「やっぱり豪炎寺だよな」
「すげえ、円堂が言った通りだ」
「立向居のゴッドハンドじゃ、手も足も出ないか」
「まだ経験だって浅いしね」
でも立向居はこれからどんどん伸びる。なんてったって、マジン・ザ・ハンドだって使えるんだから。
立向居が投げたボールを目で追う。受け取った鬼道は少し考え込むと、しろ君にパスを出した。
「っあ……!」
漏れた声には、確かに怯えの色が乗っていた。迫るボールにしろ君は動けない。触れられることなく、ボールは地面に転がった。
悔しげに唇をかみ締めるしろ君の元へ、皆が集まる。
「……僕、このチームのお荷物になっちゃったね」
「お荷物って、そんなことない!このチームに必要ない選手なんていない!」
絞り出すような、今にも消えてしまいそうな声に、思わずそう叫んだ。お荷物なんて誰も思ってない。
しろ君のディフェンスに、オフェンスに、雷門は何度助けられただろう。今度は、あたし達の番!
「美波の言う通りだ!雷門には、お前が必要なんだ!」
「しろ君にはあたし達が、仲間がいるよ!」
「……うん」
「よーし皆!もうひと踏ん張りだ!ボールはいつも、俺達の前にある!」
意気込む皆に、どこか戸惑っているようなしろ君。……時間が必要だ。今すぐじゃなくていい。だから、それまでは。
「しろ君。絶対、置いてかないよ。フィールドで待ってる!」
「……ありがとう、美波ちゃん」
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