第22話 炎のストライカー!
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晴矢がボールをヒロト君へ蹴れば、それをヒロト君は軽々と蹴り返す。返されたボールをダンッと踏みつけると、晴矢は辺りを見回した。
「南雲、お前……」
「俺か?こっちが本当の俺、バーンってんだ。覚えときな」
「バーン?」
「エイリア学園プロミネンスのキャプテンだ」
エイリア学園。皆の視線は晴矢――バーンに向いているけど、鬼道と一之瀬は少しだけあたしの方を見た。
……鋭い二人相手に、どうやって誤魔化せばいいのかな。
「グランよお、こいつらはジェミニストームを倒した。イプシロンとも引き分けた。お前らとやった後、まだまだ強くなるかもしれねえ。
だからどれだけ面白い奴らが近くで見てやろうと思った。俺は俺のやりたいようにやる。もし俺の邪魔になるようなら、潰すぜ。お前より先にな!」
それを聞いたヒロト君は目を細めて、街灯から飛び降りた。着地したあたりで風が巻き起こる。砂煙が立ち込めて目が痛い。
「潰すと言ったね?それは得策じゃない。強い奴は俺達の仲間にしてもいい。違うか?」
「仲間?こんな奴らをねえ」
「仲間だって?」
「ハッ、教えてやろうか!豪炎寺って野郎もなあ!」
「お喋りが過ぎるぞ!」
「お前に言われたかねーな。……忘れてる癖によくやるぜ」
その言葉にヒロト君が、訝しげに眉をひそめる。……そっか、ヒロト君はあたしの事、覚えてないんだっけ。
ヒロト君は何も言わない。無言のままにボールを蹴ると、ボールから光が放たれた。眩しくて瞑って目を開けた時には、二人はいなかった。
「ジェネシスが最後じゃなかったんだね」
「話の内容からすると、ジェネシスと同格のチームということか……」
「エイリア学園には一体どれだけのチームがあるんだ?」
「まだまだ戦っていかなきゃならないんすねえ……」
「風丸さん、さっさと撤退してよかったかもね」
「木暮くんっ!」
新しいチームの登場。こうなるのも当たり前だ。イプシロンを倒せば、次はジェネシスだと思ってたんだから、同格のチームがまだあるなんて。
皆の表情は暗い。……皆は知らないけど、エイリア学園には風介のチームもある。まだ戦いは終わらない。終わりの見えない、いつまで戦い続ければいいのかわからない状況。……息苦しい。
「……美波はどう思う?南雲は、バーンは知り合いだったんだろ?」
「分かんない。けど……嘘、つかれてたのかも」
「嘘、か。だとしたら、エイリア学園は相当前から侵略を進めていたという事になるな」
違う。嘘をついてるのは、あたし。こんなの、ただのその場しのぎの、適当な誤魔化しだ。
我ながら下手な嘘だ。きっと鬼道も一之瀬も嘘だって気づいてる。気づいてて、でもそれ以上は追及しないのが、怖い。
「とにかく、炎のストライカーは奴じゃなかった。さあ、また一から出直しだ!切り替えていくぞ!」
鬼道の言葉に、返事は出来なかった。
***
夜、借りてる小屋からこっそり抜け出して、あたしは浜辺を散歩していた。
昼間は綺麗な青だった海も、夜だと黒々としている。それでも澄んでるように見えるのは、沖縄の海っていう先入観かな。
歩いて、歩いて、人の気配がした気がして立ち止まった。
「こんばんはヒロト」
「……どうしてここに?」
「一人でいればヒロトに会えるかと思って。会うのはいつも夜、あたしが一人の時だったから」
「俺が来なかったらどうするつもりだったんだい」
「そりゃあ、会えるまで毎日夜更かし。なっちゃんに怒られちゃうだろうけど」
青筋を立てて、腕組みして仁王立ちするなっちゃんの姿が目に浮かぶ。今日すぐ会えて良かった。
「ヒロトの方こそ、もう会いに来れないとか言ってたのに」
「それは……」
ヒロト君が口ごもって目を逸らした。そうだ。今なら、聞けるかもしれない。
「ヒロトはサッカーをどう思ってる?サッカー好き?」
「……分からない」
ずきりと胸が痛い。だって昔は、好きだよって言ってたのに。
……今は分からないなら、また好きになってもらえばいい。また楽しくサッカーをやれるように、その為に頑張ってるんだから。
「あたしは、ヒロトにサッカーを好きになって欲しい」
「どうして?」
「どうしてって……」
「俺は楽しむ為にサッカーをやってる訳じゃないんだ。君とは違う」
「違わないよ!」
「違うさ。だからサッカーで人を傷つける」
「じゃあ何で、福岡での試合、楽しみにしてるなんて言ったの」
ヒロト君の表情が強張った。苦々しげな色を浮かべて、痛いところを突かれた、みたいな。やっぱりヒロト君は、サッカーを。
「諦めない守兄に嬉しそうにしてた。倒れたしろ君のことも心配してた。ヒロトはあの試合で何を思ったの?」
「……あの時の俺はグランだよ、美波ちゃん」
「ヒロト、っ!」
突然爆風が巻き起こった。強い風で目を開けてられない。風が収まった時には、もうそこにヒロト君の姿は見えなかった。
「あの時のって、何」
じゃあ楽しみだって言ったヒロト君は、どこに行ったって言うんだ。
あたしにとっては、ヒロト君もグランも……基山ヒロトだ。
***
次の日。炎のストライカー探しは秋達に任せて、あたし達は今日もイプシロンの勝つのを目指して特訓だ。
張り切って特訓だと意気込む皆にホッとして息を吐いてると、土方が沢山の野菜を持ってやってきた。
「よかったら食ってくれ!うちで取れた新鮮野菜だ!」
「おお!助かるねえ!」
「ありがとう、土方!」
「なーに地球を守ってくれてるんだ!いつも元気でいてもらわないとな!」
地球を守る、か。そう、あたし達雷門が戦っているのは、サッカーで破壊活動を行う宇宙人――エイリア学園。
……ただ、あたしの場合は、友達を助けたいっていうのもあるだけで。平和とか、安全とか。雷門としての方を時々忘れそうになる。
その時、「円堂!」と守兄を呼ぶ聞き覚えのある声が海の方から聞こえた。
「いやっほーーー!!!」
テンションの高い声を上げて、みるみるうちに違づいてくる。あの時みたいに、条兄が海から飛んできた。
ドスッと音を立てて地面に突き刺さったボードに、皆の表情がひきつる。……危ないもんね。危うく目金にぶつかるとこだったよ。
「探したぜ、円堂!」
そう言って笑みを溢す条兄に、雷門に新しい風が吹き込んできたような、そんな気がした。
→あとがき
「南雲、お前……」
「俺か?こっちが本当の俺、バーンってんだ。覚えときな」
「バーン?」
「エイリア学園プロミネンスのキャプテンだ」
エイリア学園。皆の視線は晴矢――バーンに向いているけど、鬼道と一之瀬は少しだけあたしの方を見た。
……鋭い二人相手に、どうやって誤魔化せばいいのかな。
「グランよお、こいつらはジェミニストームを倒した。イプシロンとも引き分けた。お前らとやった後、まだまだ強くなるかもしれねえ。
だからどれだけ面白い奴らが近くで見てやろうと思った。俺は俺のやりたいようにやる。もし俺の邪魔になるようなら、潰すぜ。お前より先にな!」
それを聞いたヒロト君は目を細めて、街灯から飛び降りた。着地したあたりで風が巻き起こる。砂煙が立ち込めて目が痛い。
「潰すと言ったね?それは得策じゃない。強い奴は俺達の仲間にしてもいい。違うか?」
「仲間?こんな奴らをねえ」
「仲間だって?」
「ハッ、教えてやろうか!豪炎寺って野郎もなあ!」
「お喋りが過ぎるぞ!」
「お前に言われたかねーな。……忘れてる癖によくやるぜ」
その言葉にヒロト君が、訝しげに眉をひそめる。……そっか、ヒロト君はあたしの事、覚えてないんだっけ。
ヒロト君は何も言わない。無言のままにボールを蹴ると、ボールから光が放たれた。眩しくて瞑って目を開けた時には、二人はいなかった。
「ジェネシスが最後じゃなかったんだね」
「話の内容からすると、ジェネシスと同格のチームということか……」
「エイリア学園には一体どれだけのチームがあるんだ?」
「まだまだ戦っていかなきゃならないんすねえ……」
「風丸さん、さっさと撤退してよかったかもね」
「木暮くんっ!」
新しいチームの登場。こうなるのも当たり前だ。イプシロンを倒せば、次はジェネシスだと思ってたんだから、同格のチームがまだあるなんて。
皆の表情は暗い。……皆は知らないけど、エイリア学園には風介のチームもある。まだ戦いは終わらない。終わりの見えない、いつまで戦い続ければいいのかわからない状況。……息苦しい。
「……美波はどう思う?南雲は、バーンは知り合いだったんだろ?」
「分かんない。けど……嘘、つかれてたのかも」
「嘘、か。だとしたら、エイリア学園は相当前から侵略を進めていたという事になるな」
違う。嘘をついてるのは、あたし。こんなの、ただのその場しのぎの、適当な誤魔化しだ。
我ながら下手な嘘だ。きっと鬼道も一之瀬も嘘だって気づいてる。気づいてて、でもそれ以上は追及しないのが、怖い。
「とにかく、炎のストライカーは奴じゃなかった。さあ、また一から出直しだ!切り替えていくぞ!」
鬼道の言葉に、返事は出来なかった。
***
夜、借りてる小屋からこっそり抜け出して、あたしは浜辺を散歩していた。
昼間は綺麗な青だった海も、夜だと黒々としている。それでも澄んでるように見えるのは、沖縄の海っていう先入観かな。
歩いて、歩いて、人の気配がした気がして立ち止まった。
「こんばんはヒロト」
「……どうしてここに?」
「一人でいればヒロトに会えるかと思って。会うのはいつも夜、あたしが一人の時だったから」
「俺が来なかったらどうするつもりだったんだい」
「そりゃあ、会えるまで毎日夜更かし。なっちゃんに怒られちゃうだろうけど」
青筋を立てて、腕組みして仁王立ちするなっちゃんの姿が目に浮かぶ。今日すぐ会えて良かった。
「ヒロトの方こそ、もう会いに来れないとか言ってたのに」
「それは……」
ヒロト君が口ごもって目を逸らした。そうだ。今なら、聞けるかもしれない。
「ヒロトはサッカーをどう思ってる?サッカー好き?」
「……分からない」
ずきりと胸が痛い。だって昔は、好きだよって言ってたのに。
……今は分からないなら、また好きになってもらえばいい。また楽しくサッカーをやれるように、その為に頑張ってるんだから。
「あたしは、ヒロトにサッカーを好きになって欲しい」
「どうして?」
「どうしてって……」
「俺は楽しむ為にサッカーをやってる訳じゃないんだ。君とは違う」
「違わないよ!」
「違うさ。だからサッカーで人を傷つける」
「じゃあ何で、福岡での試合、楽しみにしてるなんて言ったの」
ヒロト君の表情が強張った。苦々しげな色を浮かべて、痛いところを突かれた、みたいな。やっぱりヒロト君は、サッカーを。
「諦めない守兄に嬉しそうにしてた。倒れたしろ君のことも心配してた。ヒロトはあの試合で何を思ったの?」
「……あの時の俺はグランだよ、美波ちゃん」
「ヒロト、っ!」
突然爆風が巻き起こった。強い風で目を開けてられない。風が収まった時には、もうそこにヒロト君の姿は見えなかった。
「あの時のって、何」
じゃあ楽しみだって言ったヒロト君は、どこに行ったって言うんだ。
あたしにとっては、ヒロト君もグランも……基山ヒロトだ。
***
次の日。炎のストライカー探しは秋達に任せて、あたし達は今日もイプシロンの勝つのを目指して特訓だ。
張り切って特訓だと意気込む皆にホッとして息を吐いてると、土方が沢山の野菜を持ってやってきた。
「よかったら食ってくれ!うちで取れた新鮮野菜だ!」
「おお!助かるねえ!」
「ありがとう、土方!」
「なーに地球を守ってくれてるんだ!いつも元気でいてもらわないとな!」
地球を守る、か。そう、あたし達雷門が戦っているのは、サッカーで破壊活動を行う宇宙人――エイリア学園。
……ただ、あたしの場合は、友達を助けたいっていうのもあるだけで。平和とか、安全とか。雷門としての方を時々忘れそうになる。
その時、「円堂!」と守兄を呼ぶ聞き覚えのある声が海の方から聞こえた。
「いやっほーーー!!!」
テンションの高い声を上げて、みるみるうちに違づいてくる。あの時みたいに、条兄が海から飛んできた。
ドスッと音を立てて地面に突き刺さったボードに、皆の表情がひきつる。……危ないもんね。危うく目金にぶつかるとこだったよ。
「探したぜ、円堂!」
そう言って笑みを溢す条兄に、雷門に新しい風が吹き込んできたような、そんな気がした。
→あとがき