第19話 激震!最強のジェネシス!!
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「ヒロト……お前、宇宙人だったのか?」
「さあ円堂くん、サッカーやろうよ」
そう言ったヒロト君は、この場に似つかわしくないくらいの笑顔だ。だって、ここにいる人達の中で、笑っているのはヒロト君だけ。
「どういうことなんだ。なんで円堂の友達がエイリア学園に?」
「円堂さん……」
「まんまと騙されたみたいですね」
「騙された?」
「奴らの目的は友達になったふりをして円堂くんを動揺させること」
「そういうことだったんですね!」
「どう考えたって宇宙人の考えそうなことですよ」
違う。確かに最初は、雷門や瞳子監督のことで、探りを入れる為に近づいたのはあると思う。でも、会う度に変わっていった。それだけじゃなくなってた。
守兄や雷門のサッカーに興味がある。少なくとも、あたしが知ってる範囲では、言ってたことは本心だった……と思う。正確には、そう思いたい。
「それは違うよ。俺はただ、君達とサッカーしたいだけ」
良かった。その言葉に少しホッとした。けど、状況は全然安心出来ない。ヒロト君のチームが凄く強いのを肌で感じる。
「……そうだよね、美波ちゃん」
今度はあたしに視線が集中した。わざわざあたしに振ったのはわざとなのか、それとも。
「美波も知り合いだったのか?」
「……うん。ヒロトとは何度か会ったことがある」
体が震え出す。ジェネシスが怖いのか、もっと違う何かなのか、自分でも分からない。腕を擦っていると、横から伸びてきた手が腕を掴んだ。一郎太だ。
「大丈夫か、美波」
「……うん、ありがとう。一郎太も」
「奴ら、相当だな。……きっと、イプシロンよりも」
一郎太の視線を追って、ジェネシスに目を向ける。あたし達のサッカーが見たいと笑うヒロト君に対して、他のメンバーは乗り気ではなさそうだ。
許可を取らずに来た、ってことはこれはヒロト君の独断での試合なのか。陽花戸中を襲撃する訳でもない。ただ本当にサッカーがしたいだけ。
必要な許可?を受けずに試合の約束を取り付けて、エイリア学園のチームとして現れた。それが許されるくらいの、ヒロト君はエイリア学園の中でもそれなりの立場なのかもしれない。
容赦はしないと啖呵を切る守兄にも、もちろんだとヒロト君は笑みを浮かべる。ヒロト君がサッカーを楽しみたいと思っている。なのに嬉しく思えないのが、苦しい。
皆がベンチへ向かうの追いながら、少しだけ振り返ってジェネシスの様子を窺う。彼らも同じように、あたしに視線を向けては、逸らしていた。
全員見覚えがある。関わりが少なかった子もいるけど、皆、あの頃のお日さま園の子達だ。一瞬、玲ちゃんと目が合う。でもそれは直ぐに逸らされてしまった。
……ジェネシス、か。あのGは、やっぱりヒロト君のチームだったんだ。
「あれ、しろ君どこいくの?」
「……顔洗ってくるね」
ふらりとしろ君が離れていく。少し顔色が悪かった。……今のしろ君を、イプシロンより強いチームと戦わせるのは、良くない気がする。
他の皆もそうだ。イプシロンを倒せば終わりだと思っていたのが、更にチームが出てきたんだ。やっと見えたと思ったゴールが遠くなってくのは、辛い。
前向きになれるような、何か声をかけたいのに、上手い言葉が出てこない。知っていたあたしが言っても無責任なだけな気がして……。
「なんやなんや辛気臭い顔して」
「吹雪もそうだけど、美波も最近変だよ」
「リカ、一之瀬……。あー、なんか、ずっとしろ君に頼りっぱなしだなって」
「ふーん?」
「あっ、リカが頼りにならないって意味じゃないからね!?」
「そこまで言うてへんやろ。悔しいけど、雷門のエースストライカーは吹雪や。そんでウチはクイーン!」
「あはは……。まあ、皆の気持ちも分かるよ。デザームのゴールだって一度は破ったんだ。吹雪ならやってくれるって思っちゃうんだよね」
「うん……」
期待は力にもプレッシャーにもなる。しろ君にとって、応えたいと思う以上に重いと感じるものなら、それは……。
戻ってきたしろ君には、鬼道の案を監督が承諾する形でフォワードが頼まれた。
「頼むぞ吹雪。今日もエターナルブリザード、決めてくれよな!」
「! ……うん」
「行くぞ!皆!」
「「「おうっ!」」」
それぞれポジションにつくために散り散りになる。あたしもディフェンスにつこうとしたけど、しろ君にユニフォームの端を掴まれた。
「どしたのしろ君」
「……今日のシュートは僕が撃つ」
「え?」
「アツヤじゃなくて、僕が撃つんだ」
そう宣言するだけして、しろ君はフォワードの位置へ歩いていった。……どういう意味か考える暇なんて、ない。
「なあ、今日の美波、昨日より変だぞ」
「それ一之瀬にも言われた」
眉をひそめながら言う一郎太から目線を逸らして、動揺を抑え込む。……バレてるだろうけど。
エイリア学園の正体を知っているのを、皆に知られるのが怖い。しろ君のことだってそう。隠していることは、沢山ある。
全部話したら、黙っていたあたしのことを、皆はどう思うのだろうか。
試合が始まった。雷門の攻撃は早々に終わって、ジェミニストームやイプシロンよりも速いスピードで、あっという間に攻め込まれていく。
ウィーズ、アーク、コーマ、ウルビダ。無駄のないパスにカットすら出来ないままに、ヒロト君がボールを持つまでが一瞬のように感じた。ヒロト君はもう、ゴール前だ。
「いくよ、円堂くん!」
ヒロト君が撃ったのは普通のシュート。でも、今までに見てきたシュートとは桁違いの凄い威力で、マジン・ザ・ハンドすらも軽々と撃ち破った。
「入っちゃった……」
意外だとでも言うような言葉。皆がシュートの威力に呆然と立ち尽くしていた。もちろん、あたしも。今のだけで差が分かってしまった。
意気込む守兄をよそに、いとも簡単にボールを奪われては得点が重なっていく。一方的な試合は、もう10-0に達しようとしていた。
だと言うのにさっきから動いてるのはヒロト君ばかりだ。他のメンバーはブロックしてはパスを回してで、ドリブルは殆どない。それで十分なくらいの、差がある。
一郎太の足が止まった。しろ君も動けてない。かくいうあたしも全然で、ずっと翻弄されるだけ。またゴールネットが揺れた。15点目。
「もう終わりなの、円堂くん、美波ちゃん。君達の実力は、こんなものじゃないはずだよ」
「まだ、試合は終わっちゃいない。諦めなきゃ、必ず反撃のチャンスは来る……!だからそれまで、このゴールは俺が守る!」
「……そうだ、絶対に諦めない!点を取られたなら取り返せばいい!何度だって立ち上がってやる!」
「よし、まずは1点!奴らから奪うんだ!」
ここまでシュートすら撃たせて貰えてない。だから、繋げるんだ。……イプシロンの時と同じ。彼らがあたしを覚えてるなら、それを使う!
「貰った!」
「!」
パスを受けたアークに突進すれば、ほんの少しだけ動きが鈍った。無理やり出させたパスが乱れる。すかさず鬼道がパスカットをして、同時に攻撃へ移った。
前線へしろ君が走る。そしてシュート、と思いきやしろ君の動きが止まった。その隙を突かれてボールがクリアされる。……今日のしろ君は明らかにおかしい、よね。
「し、しろ」
「シュートを決めれば僕だって、皆が必要としてくれるんだ……!」
絞り出すような声に出てきかけた言葉が引っ込む。必要って、まさかしろ君は自分が必要とされてないと思って……。
「美波ちゃん、絶対に、僕が決めるから。アツヤじゃなくて、僕が!そうすれば、僕を必要としてくれる。そうだよね……!」
「しろ君」
「見てて、美波ちゃん。僕を……」
苦しそうなしろ君にかける言葉を探す間もなく、スローインに備えるよう指示が飛ぶ。……あたしは、何をすればいい?
.
「さあ円堂くん、サッカーやろうよ」
そう言ったヒロト君は、この場に似つかわしくないくらいの笑顔だ。だって、ここにいる人達の中で、笑っているのはヒロト君だけ。
「どういうことなんだ。なんで円堂の友達がエイリア学園に?」
「円堂さん……」
「まんまと騙されたみたいですね」
「騙された?」
「奴らの目的は友達になったふりをして円堂くんを動揺させること」
「そういうことだったんですね!」
「どう考えたって宇宙人の考えそうなことですよ」
違う。確かに最初は、雷門や瞳子監督のことで、探りを入れる為に近づいたのはあると思う。でも、会う度に変わっていった。それだけじゃなくなってた。
守兄や雷門のサッカーに興味がある。少なくとも、あたしが知ってる範囲では、言ってたことは本心だった……と思う。正確には、そう思いたい。
「それは違うよ。俺はただ、君達とサッカーしたいだけ」
良かった。その言葉に少しホッとした。けど、状況は全然安心出来ない。ヒロト君のチームが凄く強いのを肌で感じる。
「……そうだよね、美波ちゃん」
今度はあたしに視線が集中した。わざわざあたしに振ったのはわざとなのか、それとも。
「美波も知り合いだったのか?」
「……うん。ヒロトとは何度か会ったことがある」
体が震え出す。ジェネシスが怖いのか、もっと違う何かなのか、自分でも分からない。腕を擦っていると、横から伸びてきた手が腕を掴んだ。一郎太だ。
「大丈夫か、美波」
「……うん、ありがとう。一郎太も」
「奴ら、相当だな。……きっと、イプシロンよりも」
一郎太の視線を追って、ジェネシスに目を向ける。あたし達のサッカーが見たいと笑うヒロト君に対して、他のメンバーは乗り気ではなさそうだ。
許可を取らずに来た、ってことはこれはヒロト君の独断での試合なのか。陽花戸中を襲撃する訳でもない。ただ本当にサッカーがしたいだけ。
必要な許可?を受けずに試合の約束を取り付けて、エイリア学園のチームとして現れた。それが許されるくらいの、ヒロト君はエイリア学園の中でもそれなりの立場なのかもしれない。
容赦はしないと啖呵を切る守兄にも、もちろんだとヒロト君は笑みを浮かべる。ヒロト君がサッカーを楽しみたいと思っている。なのに嬉しく思えないのが、苦しい。
皆がベンチへ向かうの追いながら、少しだけ振り返ってジェネシスの様子を窺う。彼らも同じように、あたしに視線を向けては、逸らしていた。
全員見覚えがある。関わりが少なかった子もいるけど、皆、あの頃のお日さま園の子達だ。一瞬、玲ちゃんと目が合う。でもそれは直ぐに逸らされてしまった。
……ジェネシス、か。あのGは、やっぱりヒロト君のチームだったんだ。
「あれ、しろ君どこいくの?」
「……顔洗ってくるね」
ふらりとしろ君が離れていく。少し顔色が悪かった。……今のしろ君を、イプシロンより強いチームと戦わせるのは、良くない気がする。
他の皆もそうだ。イプシロンを倒せば終わりだと思っていたのが、更にチームが出てきたんだ。やっと見えたと思ったゴールが遠くなってくのは、辛い。
前向きになれるような、何か声をかけたいのに、上手い言葉が出てこない。知っていたあたしが言っても無責任なだけな気がして……。
「なんやなんや辛気臭い顔して」
「吹雪もそうだけど、美波も最近変だよ」
「リカ、一之瀬……。あー、なんか、ずっとしろ君に頼りっぱなしだなって」
「ふーん?」
「あっ、リカが頼りにならないって意味じゃないからね!?」
「そこまで言うてへんやろ。悔しいけど、雷門のエースストライカーは吹雪や。そんでウチはクイーン!」
「あはは……。まあ、皆の気持ちも分かるよ。デザームのゴールだって一度は破ったんだ。吹雪ならやってくれるって思っちゃうんだよね」
「うん……」
期待は力にもプレッシャーにもなる。しろ君にとって、応えたいと思う以上に重いと感じるものなら、それは……。
戻ってきたしろ君には、鬼道の案を監督が承諾する形でフォワードが頼まれた。
「頼むぞ吹雪。今日もエターナルブリザード、決めてくれよな!」
「! ……うん」
「行くぞ!皆!」
「「「おうっ!」」」
それぞれポジションにつくために散り散りになる。あたしもディフェンスにつこうとしたけど、しろ君にユニフォームの端を掴まれた。
「どしたのしろ君」
「……今日のシュートは僕が撃つ」
「え?」
「アツヤじゃなくて、僕が撃つんだ」
そう宣言するだけして、しろ君はフォワードの位置へ歩いていった。……どういう意味か考える暇なんて、ない。
「なあ、今日の美波、昨日より変だぞ」
「それ一之瀬にも言われた」
眉をひそめながら言う一郎太から目線を逸らして、動揺を抑え込む。……バレてるだろうけど。
エイリア学園の正体を知っているのを、皆に知られるのが怖い。しろ君のことだってそう。隠していることは、沢山ある。
全部話したら、黙っていたあたしのことを、皆はどう思うのだろうか。
試合が始まった。雷門の攻撃は早々に終わって、ジェミニストームやイプシロンよりも速いスピードで、あっという間に攻め込まれていく。
ウィーズ、アーク、コーマ、ウルビダ。無駄のないパスにカットすら出来ないままに、ヒロト君がボールを持つまでが一瞬のように感じた。ヒロト君はもう、ゴール前だ。
「いくよ、円堂くん!」
ヒロト君が撃ったのは普通のシュート。でも、今までに見てきたシュートとは桁違いの凄い威力で、マジン・ザ・ハンドすらも軽々と撃ち破った。
「入っちゃった……」
意外だとでも言うような言葉。皆がシュートの威力に呆然と立ち尽くしていた。もちろん、あたしも。今のだけで差が分かってしまった。
意気込む守兄をよそに、いとも簡単にボールを奪われては得点が重なっていく。一方的な試合は、もう10-0に達しようとしていた。
だと言うのにさっきから動いてるのはヒロト君ばかりだ。他のメンバーはブロックしてはパスを回してで、ドリブルは殆どない。それで十分なくらいの、差がある。
一郎太の足が止まった。しろ君も動けてない。かくいうあたしも全然で、ずっと翻弄されるだけ。またゴールネットが揺れた。15点目。
「もう終わりなの、円堂くん、美波ちゃん。君達の実力は、こんなものじゃないはずだよ」
「まだ、試合は終わっちゃいない。諦めなきゃ、必ず反撃のチャンスは来る……!だからそれまで、このゴールは俺が守る!」
「……そうだ、絶対に諦めない!点を取られたなら取り返せばいい!何度だって立ち上がってやる!」
「よし、まずは1点!奴らから奪うんだ!」
ここまでシュートすら撃たせて貰えてない。だから、繋げるんだ。……イプシロンの時と同じ。彼らがあたしを覚えてるなら、それを使う!
「貰った!」
「!」
パスを受けたアークに突進すれば、ほんの少しだけ動きが鈍った。無理やり出させたパスが乱れる。すかさず鬼道がパスカットをして、同時に攻撃へ移った。
前線へしろ君が走る。そしてシュート、と思いきやしろ君の動きが止まった。その隙を突かれてボールがクリアされる。……今日のしろ君は明らかにおかしい、よね。
「し、しろ」
「シュートを決めれば僕だって、皆が必要としてくれるんだ……!」
絞り出すような声に出てきかけた言葉が引っ込む。必要って、まさかしろ君は自分が必要とされてないと思って……。
「美波ちゃん、絶対に、僕が決めるから。アツヤじゃなくて、僕が!そうすれば、僕を必要としてくれる。そうだよね……!」
「しろ君」
「見てて、美波ちゃん。僕を……」
苦しそうなしろ君にかける言葉を探す間もなく、スローインに備えるよう指示が飛ぶ。……あたしは、何をすればいい?
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