第17話 じいちゃんの究極奥義!
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本日の夕飯はカレー!陽花戸中校庭の一角を借りて、陽花戸サッカー部メンバーも一緒だ。うん、今日も秋達が作ったカレーは美味しい!舌鼓を打っていれば、悲鳴が響いた。
何事だと声の方を見れば、目金が火を吹いていた。こんなイタズラをする犯人は、言わずもがな、タバスコ片手に笑ってる夕弥だ。
「ねえ、立向居を見てるってことは……」
「うしし、仕込んじゃったもんね!」
「やっぱり」
でもその立向居はというと平然と食べていた。それを見た夕弥が少し取って食べると、火を吹き出した。本人が言うには、辛いのは平気なんだと。
けろりとした顔で美味しそうに食べる立向居。かなりの量が入ってるはずなのに、物凄い辛党なんだな……。
「夕弥のあれには困ったもんだよね、しろ君……しろ君?」
「え?あ、うん。ごめんね、何だっけ」
「いや、いつものイタズラがあってね」
「ああ……」
返事はどこか上の空で、食べる速さも心なしか遅い。……食欲、あんまりないのかな。
この前のイプシロン戦。同点に終わって一歩前進したのに皆喜んでたけど、しろ君だけはもう1点を取れなかったのを気にしていた。次こそはと前向きな雰囲気な中、しろ君だけが違った。
エターナルブリザード……しろ君の、アツヤのシュートが止めれらた。デザームにはまだ隠し玉があった。本気じゃなかった。
沢山の練習を積み重ねて、漸く乗り越えた壁の向こうには、もっと大きな壁があった。あれだけ沢山特訓して出来たのは、本気を引き出すことまでだった。
それを更に越えるにはまたどれだけ特訓すればいいのか。……先の見えない戦いに、疲れが見えてきてるのはしろ君だけじゃない。じいちゃんのノートが、突破口になるといいんだけど。
寝る時間になっても、夕飯の時のしろ君が気になって、どうしても眠気が来ない。なら、こういう時は、だ。
皆を起こさないようにテントを抜け出して、キャラバンを登る。なんとなく守兄もいる気がして、話がしたかった。
「あ、いたいた」
「美波も寝てなかったのか」
「何か寝付けなくてさ……あ、しろ君も一緒だったんだ」
「うん」
「それで、どうした?何かあったか」
「えっと、明日の試合楽しみだなって!楽しみすぎてなかなか寝れないくらい!」
「……そうか!俺も楽しみだ!」
しろ君の前でしろ君の相談はするのは気まずくて、無理矢理はぐらかす。……守兄には、バレてるだろうな。
守兄としろ君の間にお邪魔して、寝転がって空を見上げる。
「綺麗だね。稲妻町だとここまで綺麗には見えないから」
「だな。北海道もこんな感じだったっけ」
北海道。それに反応したしろ君は、ぽつりと呟いた。北海道の空はもっと高かった、と。
「凍てついた空に星が張り付いてるように見えるけど、こっちはもっと近いように見える。……アツヤとの距離も」
「ん?」
「ううん、なんでもない」
アツヤ、か。しろ君の弟で、会ったのはたった一度だけ。いつか全国大会で会おうという約束は叶わなかった。アツヤともサッカー、やりたかったな。
北海道では遠く感じて、福岡だともっと近いように感じる、アツヤとの距離。それはしろ君にとって何を意味してるんだろう。良い事だと、いいんだけど。
手を伸ばしてみる。当然星は掴めない。死んだ人は星になるっていうけど、あの沢山の星の中にアツヤもいるのかな。……なんて。
「あ、ブレスレットつけてるんだな」
「せっかくしろ君に貰ったしね。もう寝るし」
「……ふーん。まあ、いいけど。寝返りして潰すなよ」
「潰さないよ!?ね、しろ君!」
「うん。……ねえ、イプシロン戦の時、僕変じゃなかった?」
「変?そんなことないよ。お前のおかげで同点にできたんじゃないか。流石、伝説のストライカーだよ」
「……そうだったね、君達が北海道に来たのはストライカーを探しにだった」
「ああ。そしてお前はその力を完璧に証明してみせたじゃないか!」
完璧。しろ君は目を伏せると、横を向いてしまった。……しろ君は十二分に凄いのに、自分に厳しい。あたし達が思う完璧としろ君が求める完璧には、大きな溝がある気がする。
守兄はというと、下に来ていた立向居呼んで、じいちゃんのノートの究極奥義について話しだした。守兄はまず正義の鉄拳というパンチ技をマスターするつもりらしい。
パッと開かずグッと握って、ダン、ギューン、ドカン。じいちゃんが考えた必殺技、しかも究極奥義なんて、これはまた苦戦しそうだ。
「……美波ちゃん」
「ん?」
「キャプテンはストライカーとしての、僕を、アツヤを、完璧だって言ってくれた」
「……うん」
「なら僕は、僕は……完璧に、チームの為になれてるかな」
「なれてるよ!しろ君のスピードにもディフェンス力にもいつも助けられてて、負けてられないってくらい!」
「そう、かな」
「うん!しろ君のこと、頼りにしてるよ!だからしろ君もあたしを頼って!力になるから!」
「ありがとう、美波ちゃん」
ふんわりと笑ったしろ君。少しは、伝わったかな。
こういう時こそ仲間を頼って欲しい。力を合わせれば、パワーは何倍にもなるんだから。
***
今日は陽花戸中との練習試合だ。今回しろ君はフォワードに入っている。
雷門のキックオフで試合は始まった。ボールを受けて上がったしろ君は、戸田にボールを奪われてしまった。
……しろ君はまだ本調子じゃない。フォローしないと。
「荒波!」
ボールを掻っ攫って、そのまま鬼道へ回す。一郎太、リカ、そしてゴール前へ持ち込んだ一之瀬がシュート体勢に入った。
放たれたスパイラルショットは立向居のゴッドハンドでがっちり止められた。やっぱ立向居は凄いな……。
「やはりスパイラルショットではゴッドハンドを破れないか」
「手強いね、立向居」
「ああ、だからこそ崩し甲斐がある。そうだろう?」
「へへっ、そうだね。天才ゲームメーカーのお手並み拝見!」
「後ろは任せたぞ」
「任された!」
一転、陽花戸中の攻撃だ。ボールを持った松林がレインボーループを放つ。
「よーし!やってみるぜ、じいちゃん!正義の鉄拳!」
じいちゃんが残した究極奥義。……一体、どんな技なんだろう。
→あとがき
何事だと声の方を見れば、目金が火を吹いていた。こんなイタズラをする犯人は、言わずもがな、タバスコ片手に笑ってる夕弥だ。
「ねえ、立向居を見てるってことは……」
「うしし、仕込んじゃったもんね!」
「やっぱり」
でもその立向居はというと平然と食べていた。それを見た夕弥が少し取って食べると、火を吹き出した。本人が言うには、辛いのは平気なんだと。
けろりとした顔で美味しそうに食べる立向居。かなりの量が入ってるはずなのに、物凄い辛党なんだな……。
「夕弥のあれには困ったもんだよね、しろ君……しろ君?」
「え?あ、うん。ごめんね、何だっけ」
「いや、いつものイタズラがあってね」
「ああ……」
返事はどこか上の空で、食べる速さも心なしか遅い。……食欲、あんまりないのかな。
この前のイプシロン戦。同点に終わって一歩前進したのに皆喜んでたけど、しろ君だけはもう1点を取れなかったのを気にしていた。次こそはと前向きな雰囲気な中、しろ君だけが違った。
エターナルブリザード……しろ君の、アツヤのシュートが止めれらた。デザームにはまだ隠し玉があった。本気じゃなかった。
沢山の練習を積み重ねて、漸く乗り越えた壁の向こうには、もっと大きな壁があった。あれだけ沢山特訓して出来たのは、本気を引き出すことまでだった。
それを更に越えるにはまたどれだけ特訓すればいいのか。……先の見えない戦いに、疲れが見えてきてるのはしろ君だけじゃない。じいちゃんのノートが、突破口になるといいんだけど。
寝る時間になっても、夕飯の時のしろ君が気になって、どうしても眠気が来ない。なら、こういう時は、だ。
皆を起こさないようにテントを抜け出して、キャラバンを登る。なんとなく守兄もいる気がして、話がしたかった。
「あ、いたいた」
「美波も寝てなかったのか」
「何か寝付けなくてさ……あ、しろ君も一緒だったんだ」
「うん」
「それで、どうした?何かあったか」
「えっと、明日の試合楽しみだなって!楽しみすぎてなかなか寝れないくらい!」
「……そうか!俺も楽しみだ!」
しろ君の前でしろ君の相談はするのは気まずくて、無理矢理はぐらかす。……守兄には、バレてるだろうな。
守兄としろ君の間にお邪魔して、寝転がって空を見上げる。
「綺麗だね。稲妻町だとここまで綺麗には見えないから」
「だな。北海道もこんな感じだったっけ」
北海道。それに反応したしろ君は、ぽつりと呟いた。北海道の空はもっと高かった、と。
「凍てついた空に星が張り付いてるように見えるけど、こっちはもっと近いように見える。……アツヤとの距離も」
「ん?」
「ううん、なんでもない」
アツヤ、か。しろ君の弟で、会ったのはたった一度だけ。いつか全国大会で会おうという約束は叶わなかった。アツヤともサッカー、やりたかったな。
北海道では遠く感じて、福岡だともっと近いように感じる、アツヤとの距離。それはしろ君にとって何を意味してるんだろう。良い事だと、いいんだけど。
手を伸ばしてみる。当然星は掴めない。死んだ人は星になるっていうけど、あの沢山の星の中にアツヤもいるのかな。……なんて。
「あ、ブレスレットつけてるんだな」
「せっかくしろ君に貰ったしね。もう寝るし」
「……ふーん。まあ、いいけど。寝返りして潰すなよ」
「潰さないよ!?ね、しろ君!」
「うん。……ねえ、イプシロン戦の時、僕変じゃなかった?」
「変?そんなことないよ。お前のおかげで同点にできたんじゃないか。流石、伝説のストライカーだよ」
「……そうだったね、君達が北海道に来たのはストライカーを探しにだった」
「ああ。そしてお前はその力を完璧に証明してみせたじゃないか!」
完璧。しろ君は目を伏せると、横を向いてしまった。……しろ君は十二分に凄いのに、自分に厳しい。あたし達が思う完璧としろ君が求める完璧には、大きな溝がある気がする。
守兄はというと、下に来ていた立向居呼んで、じいちゃんのノートの究極奥義について話しだした。守兄はまず正義の鉄拳というパンチ技をマスターするつもりらしい。
パッと開かずグッと握って、ダン、ギューン、ドカン。じいちゃんが考えた必殺技、しかも究極奥義なんて、これはまた苦戦しそうだ。
「……美波ちゃん」
「ん?」
「キャプテンはストライカーとしての、僕を、アツヤを、完璧だって言ってくれた」
「……うん」
「なら僕は、僕は……完璧に、チームの為になれてるかな」
「なれてるよ!しろ君のスピードにもディフェンス力にもいつも助けられてて、負けてられないってくらい!」
「そう、かな」
「うん!しろ君のこと、頼りにしてるよ!だからしろ君もあたしを頼って!力になるから!」
「ありがとう、美波ちゃん」
ふんわりと笑ったしろ君。少しは、伝わったかな。
こういう時こそ仲間を頼って欲しい。力を合わせれば、パワーは何倍にもなるんだから。
***
今日は陽花戸中との練習試合だ。今回しろ君はフォワードに入っている。
雷門のキックオフで試合は始まった。ボールを受けて上がったしろ君は、戸田にボールを奪われてしまった。
……しろ君はまだ本調子じゃない。フォローしないと。
「荒波!」
ボールを掻っ攫って、そのまま鬼道へ回す。一郎太、リカ、そしてゴール前へ持ち込んだ一之瀬がシュート体勢に入った。
放たれたスパイラルショットは立向居のゴッドハンドでがっちり止められた。やっぱ立向居は凄いな……。
「やはりスパイラルショットではゴッドハンドを破れないか」
「手強いね、立向居」
「ああ、だからこそ崩し甲斐がある。そうだろう?」
「へへっ、そうだね。天才ゲームメーカーのお手並み拝見!」
「後ろは任せたぞ」
「任された!」
一転、陽花戸中の攻撃だ。ボールを持った松林がレインボーループを放つ。
「よーし!やってみるぜ、じいちゃん!正義の鉄拳!」
じいちゃんが残した究極奥義。……一体、どんな技なんだろう。
→あとがき