第15話 デザームの罠!
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いつもより早く目が覚めた。二度寝しようにもテントの隙間から差し込む光は明るくて、そもそも昨日なかなか寝付けなかった割には眠気もそんなにない。
気分転換にウォーキングしよう。そう思ってまだ寝てる塔子と春ちゃんを起こさないよう外に出て、ボール磨きをしていた秋に声をかけて歩き出す。見当たらないなっちゃんも散歩か何かかな?天気いいし。
……今日も朝から練習なのはわかってたけど、瞳子監督から聞いたことを考えずにはいられなくて、結局寝たのは日付が変わってからだった。
ヒロト君達と遊んでた時期。休みの日になると、天気が悪くない限りはお日さま園まで自転車を走らせた。隣町で距離はあったし片道でも着く頃にはかなり疲れてたけど、それが苦にならないくらい楽しかったから。
――ねえ、君サッカー上手いね!
公園で一人ボールを蹴るヒロト君に声をかけたのが始まり。守兄も一郎太も知らない秘密の友達。
いつか紹介して驚かせてやるんだと思ってた反面、お日さま園という特別な場所を秘密のままにしていたい気持ちもあって……そのうちにヒロト君達がいなくなって、それっきりになった。
先生達はまた遊びに来てねと言ってくれた。でも皆のいない園は寂しくて、どうにも行く気になれなくて、結局あれ以来足を運ぶことはなくなった。
今考えると、あれはエイリア石?が落ちたことでエイリア学園が出来たから、皆いなくなってしまったんだと思う。……あの時、通うのをやめなかったら、何か変わったのかな。
――どうしたの?迷った?
しろ君と出会ったのはそれより後。北海道に旅行した時に、市街地で迷子になったあたしに声をかけてくれたのが、サッカークラブの帰りだというしろ君とアツヤだった。
ホテルまで送ってくれた道中で、沢山サッカーの話をした。ヒグマだって倒せると胸を張るアツヤに凄い凄いとはしゃいだのが記憶に残ってる。
熊も倒せるシュートを見てみたいと思ったけど、近くにサッカーを出来るような場所はなかった。それにあたしは東京でしろ君とアツヤは北海道。そう簡単には会えないし、サッカーも出来ない。
だからいつか、中学生になったら全国大会でまた会おうと約束した。それまでにお互い全国クラスの選手になれるよう頑張ろうって指切りして……。
「っ、アツヤ……」
会ったのは1回だけ。話したのもそう長い時間じゃない。それでもアツヤも大事なサッカー仲間だった。
もう二度と話すことも出来ないなんて初めてだ。じいちゃんとは違う。笑って怒って拗ねたりする、温かかったアツヤをあたしは知ってる。なのに、もう……。
「……いかんいかん!」
アツヤとサッカー出来ないのは悲しいし寂しい。けど、一番辛いのはしろ君なんだ。だって二人は最強のコンビだったんだから。あたしが落ち込んでたりしたら駄目だ。
気合を入れる為に頬を叩いてハチマキを結び直す。キャラバンに戻ると、もう皆揃っていた。練習したくていつもより早く起きたのは同じ。強くなれる道がそこにあるなら。
「今日も特訓開始だ!」
『おー!』
朝食の前に特訓して、食べて食休みを少ししてからまた特訓。休憩を挟みつつ特訓の繰り返し。
避けて攻めて攻守の切り替え。昨日は出来なかったことが、だんだん出来るようになってくる。マシンのレベルが上がっていくのが嬉しい。成長をより実感出来る。
途中鬼道がしろ君を呼んできて、しろ君を含めたポジショニングの確認。さっきまでシュート練してたのに、すぐ順応するしろ君はやっぱり凄い。
凄い、んだけど。縦横無尽に駆け回るしろ君を見て改めて思う。頼ってばかりじゃ駄目だ。しろ君が凄いで終わっちゃ駄目なんだ。あたしだってあれくらい動けるようになりたい!
……そうじゃなきゃ、エイリア学園を倒して皆を救うなんて、夢のまた夢だ。
「貰った!」
「やるな美波!あたしも負けてらんない!」
「へへっ、しろ君!」
ブロックに来た土門を避けて、しろ君へパスを出す。それを受けたしろ君は、誰にパスを出すでもドリブルでもなくマシンの外へボールを蹴り出した。
「しろ君?」
「……やめだ。こんなトロいことやってられるか!」
言うなり突然走り出したしろ君を追う。行き先は思った通り、シュート練習が出来る部屋。
「俺はシュートを決めなきゃいけねえ。完璧こそ全て!くらえデザーム!」
マシンをデザームに見立てて、殺気立ちながら何度も何度もシュートを撃つ。視界には誰も入ってなくて、頭にはデザームを倒すことしかないんだ。
短い間に沢山ありすぎて気持ちが追い付いてないけど、思えばあれからまだ1週間しか経ってない。……エターナルブリザードを止められたこと、ずっと引きずってたのかな。
そして染岡の離脱。せっかく完成したワイバーンブリザードも使えなくなってしまった。しろ君が気負うのも当然な状況で、あたしは何が出来るだろう。
「今は吹雪の思うようにさせよう。あの意気込みが試合でいい方に出るだろう」
「ああ……」
心配だけど、今は自分にやれることをするしかない。でもなかなか練習に集中出来ない。鬼道に一言断りを入れて少し休憩をとることにした。
端に寄って、座って皆の練習を眺める。最初はぎこちなかった攻守の切り替えも、スムーズになってきた。
チーム全体に余裕が出てきたのと反対に、しろ君はずっと思い詰めている。しろ君が今の雷門の攻撃の要で、エターナルブリザードに頼らざるを得ない状態だから。
……豪炎寺がいてくれたら。そう、思わずにはいられない。そしたらしろ君も、ちょっとは楽出来るかもしれない。
そんなことを考えたところで豪炎寺はいないのが現実で、戻って来る訳でもない。ならどうするか。あたしもシュート練しようかな。瞳子監督に聞いてみようか。
「美波」
「どしたの一郎太」
「俺も休憩。……吹雪のことが気になるか」
「え、あ、うん。ちょっとね」
「今は自分の練習に集中した方がいいぞ」
「……そうだよね。壁を乗り越えるのに必要なのは、自分自身の力だもんね」
「壁、か。……俺、吹雪の気持ちが少し分かる気がするんだ」
「しろ君の?」
小さく頷いた一郎太が壁に背中を預ける。少し上に視線を向けてる一郎太の表情は、座ってるあたしからは見えない。
「イプシロンを倒すには今以上の力が必要だ」
「うん」
「ここでの練習で確実に自分がレベルアップしてるのを感じる。これなら勝てるんじゃないかって」
「だね!皆間違いなく成長してる。今度こそいい勝負ができるよ!」
「でも……思うようにいかなくて、もどかしかった時期がある。どうして上手くいかないんだって。多分吹雪もそれなんだ」
「結果に繋がるまで努力し続けるのが途方もなく感じることもあるよね。だからこそ出来た時の達成感は凄いけど」
「そう、だな。俺さ、その時思ったんだよ。エイリア学園を倒す為なら、神のアクアを使ったって……」
「え……!?」
思いもよらない物が飛び出してきて思わず立ち上がる。神のアクアといえば影山が世宇子に与えていた身体能力強化のドリンクだ。それを使うなんて……。
「そんなの駄目だ!あんなの使って強くなったって意味ない!強さは努力して身に付けるものなんだ!」
「……円堂も同じこと言ってたよ」
守兄とも、この話したんだ。いつのことかを聞けば、北海道、と一言だけ。そんなに、前から……。
「美波はいつもそうだな。諦めないで無我夢中で、無茶苦茶で」
「無茶はあたしの一番の必殺技だからね!それに、大好きなサッカーに嘘付くようなこと、したくないから」
そう言ってから気づいた。大好きなサッカーに嘘をつきたくない。だからいつだって全力で練習して、プレーしてる。
……じゃあ、皆は?エイリア学園のこと、しろ君のこと。大好きな雷門の皆に、秘密にしてることは沢山ある。ここまで一緒にやってきた仲間に嘘をつくのは?
「(嘘じゃ、ない)」
助けたいだけじゃない。エイリア学園を倒したいのは本当だ。許せないのも、勝ちたい気持ちも、強くなりたいのも……噓じゃない。
たとえ彼らがエイリア石というもので強くなってるらしくても、勝つ為ならあたし達が神のアクアを使っていい筈が無いんだ。特訓で身に付けた力で倒さなきゃ、それこそ意味が無い。
会話が途切れて、どちらともなく練習に戻る。それからあたしはなんとか皆の足を引っ張らないようにして、最高レベルをクリアすることが出来た。
明日はイプシロンとの再戦。次は絶対に勝つ。そう意気込んで、今日の練習は終わった。
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気分転換にウォーキングしよう。そう思ってまだ寝てる塔子と春ちゃんを起こさないよう外に出て、ボール磨きをしていた秋に声をかけて歩き出す。見当たらないなっちゃんも散歩か何かかな?天気いいし。
……今日も朝から練習なのはわかってたけど、瞳子監督から聞いたことを考えずにはいられなくて、結局寝たのは日付が変わってからだった。
ヒロト君達と遊んでた時期。休みの日になると、天気が悪くない限りはお日さま園まで自転車を走らせた。隣町で距離はあったし片道でも着く頃にはかなり疲れてたけど、それが苦にならないくらい楽しかったから。
――ねえ、君サッカー上手いね!
公園で一人ボールを蹴るヒロト君に声をかけたのが始まり。守兄も一郎太も知らない秘密の友達。
いつか紹介して驚かせてやるんだと思ってた反面、お日さま園という特別な場所を秘密のままにしていたい気持ちもあって……そのうちにヒロト君達がいなくなって、それっきりになった。
先生達はまた遊びに来てねと言ってくれた。でも皆のいない園は寂しくて、どうにも行く気になれなくて、結局あれ以来足を運ぶことはなくなった。
今考えると、あれはエイリア石?が落ちたことでエイリア学園が出来たから、皆いなくなってしまったんだと思う。……あの時、通うのをやめなかったら、何か変わったのかな。
――どうしたの?迷った?
しろ君と出会ったのはそれより後。北海道に旅行した時に、市街地で迷子になったあたしに声をかけてくれたのが、サッカークラブの帰りだというしろ君とアツヤだった。
ホテルまで送ってくれた道中で、沢山サッカーの話をした。ヒグマだって倒せると胸を張るアツヤに凄い凄いとはしゃいだのが記憶に残ってる。
熊も倒せるシュートを見てみたいと思ったけど、近くにサッカーを出来るような場所はなかった。それにあたしは東京でしろ君とアツヤは北海道。そう簡単には会えないし、サッカーも出来ない。
だからいつか、中学生になったら全国大会でまた会おうと約束した。それまでにお互い全国クラスの選手になれるよう頑張ろうって指切りして……。
「っ、アツヤ……」
会ったのは1回だけ。話したのもそう長い時間じゃない。それでもアツヤも大事なサッカー仲間だった。
もう二度と話すことも出来ないなんて初めてだ。じいちゃんとは違う。笑って怒って拗ねたりする、温かかったアツヤをあたしは知ってる。なのに、もう……。
「……いかんいかん!」
アツヤとサッカー出来ないのは悲しいし寂しい。けど、一番辛いのはしろ君なんだ。だって二人は最強のコンビだったんだから。あたしが落ち込んでたりしたら駄目だ。
気合を入れる為に頬を叩いてハチマキを結び直す。キャラバンに戻ると、もう皆揃っていた。練習したくていつもより早く起きたのは同じ。強くなれる道がそこにあるなら。
「今日も特訓開始だ!」
『おー!』
朝食の前に特訓して、食べて食休みを少ししてからまた特訓。休憩を挟みつつ特訓の繰り返し。
避けて攻めて攻守の切り替え。昨日は出来なかったことが、だんだん出来るようになってくる。マシンのレベルが上がっていくのが嬉しい。成長をより実感出来る。
途中鬼道がしろ君を呼んできて、しろ君を含めたポジショニングの確認。さっきまでシュート練してたのに、すぐ順応するしろ君はやっぱり凄い。
凄い、んだけど。縦横無尽に駆け回るしろ君を見て改めて思う。頼ってばかりじゃ駄目だ。しろ君が凄いで終わっちゃ駄目なんだ。あたしだってあれくらい動けるようになりたい!
……そうじゃなきゃ、エイリア学園を倒して皆を救うなんて、夢のまた夢だ。
「貰った!」
「やるな美波!あたしも負けてらんない!」
「へへっ、しろ君!」
ブロックに来た土門を避けて、しろ君へパスを出す。それを受けたしろ君は、誰にパスを出すでもドリブルでもなくマシンの外へボールを蹴り出した。
「しろ君?」
「……やめだ。こんなトロいことやってられるか!」
言うなり突然走り出したしろ君を追う。行き先は思った通り、シュート練習が出来る部屋。
「俺はシュートを決めなきゃいけねえ。完璧こそ全て!くらえデザーム!」
マシンをデザームに見立てて、殺気立ちながら何度も何度もシュートを撃つ。視界には誰も入ってなくて、頭にはデザームを倒すことしかないんだ。
短い間に沢山ありすぎて気持ちが追い付いてないけど、思えばあれからまだ1週間しか経ってない。……エターナルブリザードを止められたこと、ずっと引きずってたのかな。
そして染岡の離脱。せっかく完成したワイバーンブリザードも使えなくなってしまった。しろ君が気負うのも当然な状況で、あたしは何が出来るだろう。
「今は吹雪の思うようにさせよう。あの意気込みが試合でいい方に出るだろう」
「ああ……」
心配だけど、今は自分にやれることをするしかない。でもなかなか練習に集中出来ない。鬼道に一言断りを入れて少し休憩をとることにした。
端に寄って、座って皆の練習を眺める。最初はぎこちなかった攻守の切り替えも、スムーズになってきた。
チーム全体に余裕が出てきたのと反対に、しろ君はずっと思い詰めている。しろ君が今の雷門の攻撃の要で、エターナルブリザードに頼らざるを得ない状態だから。
……豪炎寺がいてくれたら。そう、思わずにはいられない。そしたらしろ君も、ちょっとは楽出来るかもしれない。
そんなことを考えたところで豪炎寺はいないのが現実で、戻って来る訳でもない。ならどうするか。あたしもシュート練しようかな。瞳子監督に聞いてみようか。
「美波」
「どしたの一郎太」
「俺も休憩。……吹雪のことが気になるか」
「え、あ、うん。ちょっとね」
「今は自分の練習に集中した方がいいぞ」
「……そうだよね。壁を乗り越えるのに必要なのは、自分自身の力だもんね」
「壁、か。……俺、吹雪の気持ちが少し分かる気がするんだ」
「しろ君の?」
小さく頷いた一郎太が壁に背中を預ける。少し上に視線を向けてる一郎太の表情は、座ってるあたしからは見えない。
「イプシロンを倒すには今以上の力が必要だ」
「うん」
「ここでの練習で確実に自分がレベルアップしてるのを感じる。これなら勝てるんじゃないかって」
「だね!皆間違いなく成長してる。今度こそいい勝負ができるよ!」
「でも……思うようにいかなくて、もどかしかった時期がある。どうして上手くいかないんだって。多分吹雪もそれなんだ」
「結果に繋がるまで努力し続けるのが途方もなく感じることもあるよね。だからこそ出来た時の達成感は凄いけど」
「そう、だな。俺さ、その時思ったんだよ。エイリア学園を倒す為なら、神のアクアを使ったって……」
「え……!?」
思いもよらない物が飛び出してきて思わず立ち上がる。神のアクアといえば影山が世宇子に与えていた身体能力強化のドリンクだ。それを使うなんて……。
「そんなの駄目だ!あんなの使って強くなったって意味ない!強さは努力して身に付けるものなんだ!」
「……円堂も同じこと言ってたよ」
守兄とも、この話したんだ。いつのことかを聞けば、北海道、と一言だけ。そんなに、前から……。
「美波はいつもそうだな。諦めないで無我夢中で、無茶苦茶で」
「無茶はあたしの一番の必殺技だからね!それに、大好きなサッカーに嘘付くようなこと、したくないから」
そう言ってから気づいた。大好きなサッカーに嘘をつきたくない。だからいつだって全力で練習して、プレーしてる。
……じゃあ、皆は?エイリア学園のこと、しろ君のこと。大好きな雷門の皆に、秘密にしてることは沢山ある。ここまで一緒にやってきた仲間に嘘をつくのは?
「(嘘じゃ、ない)」
助けたいだけじゃない。エイリア学園を倒したいのは本当だ。許せないのも、勝ちたい気持ちも、強くなりたいのも……噓じゃない。
たとえ彼らがエイリア石というもので強くなってるらしくても、勝つ為ならあたし達が神のアクアを使っていい筈が無いんだ。特訓で身に付けた力で倒さなきゃ、それこそ意味が無い。
会話が途切れて、どちらともなく練習に戻る。それからあたしはなんとか皆の足を引っ張らないようにして、最高レベルをクリアすることが出来た。
明日はイプシロンとの再戦。次は絶対に勝つ。そう意気込んで、今日の練習は終わった。
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