第15話 デザームの罠!
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特訓再開して、近くの銭湯で汗を流して、夕飯を食べてあっという間に寝る時間。風介と再会、リカ達と試合、それから特訓と今日は盛り沢山だったな。
明日に備えて就寝!と塔子に続いてテントに入ろうとしたら、瞳子監督に呼び止められた。話したいことがあると言われて、キャラバンから少し離れた場所まで移動する。
皆には聞こえない場所まで来て、一体何の話だろう。身構えていれば、監督は迷った風に、けれど意を決したように口を開いた。
「単刀直入に聞くわ。円堂さん、貴女お日さま園を覚えてる?」
「え……」
お日さま園。ヒロト君達がいた場所。エイリア学園の正体。どうして、瞳子監督が。
「その様子だと覚えているようね。……風介とも会ったようだし」
「何で、監督が」
「私とは一度しか会ったことがないもの。覚えていなくても仕方ないわ」
「ま、待ってください!今思い出します!」
何だ、何なんだ。あたしはこの旅の前に瞳子監督と会ったことがあるのか。前々から監督のことで思い出せてないことがあるのはわかってたけど、多分それだ。
お日さま園を知ってるってことは、監督は園の関係者。遠い記憶を引っ張り出す。一回だけ会った人。吉良さんと、それから。姉さん。そうヒロト君に呼ばれた人が、綺麗な黒い髪が揺れて。
「……瞳子お姉さん!?」
そうだ、瞳子監督は瞳子お姉さんだ!ヒロト君が姉さんと呼んでいた人で、吉良さんの娘さん!
「どうして瞳子お姉さんが監督を?エイリア学園って何なんですか?お日さま園の、ヒロト君達は?」
「円堂さん」
「リュウジが父さんがって言ってたんです。もしかして吉良さんを人質に、ヒロト君達は言うことを聞かされてるんじゃないかって」
「落ち着いて聞いて頂戴。……エイリア学園の黒幕は、私の父――吉良星二郎よ」
ガツンと頭を殴られたような衝撃だった。今までの想像が全部ひっくり返った。エイリア学園の黒幕は、吉良さん?
父さんと呼び慕われていた人。ヒロト君達を優しい笑顔を浮かべながら、大事そうに撫でていた人。そんな吉良さんが、あんな酷いことを沢山させてる?
「何で、何でなんですか!じゃあ何の為にヒロト君達は、サッカーで破壊活動なんて!」
「……復讐よ」
「ふく、しゅう?」
「父はある事件の復讐を、そしてヒロト達はそんな父に従っているのよ。5年前に落ちた隕石……エイリア石が全てを変えてしまった」
「エイリア石?」
「人の能力を増幅させる石。そうね、貴方が知っている物で例えるなら……神のアクア。それを使って、手始めにこの国にエイリア学園の力を示している」
「じゃあエイリア学園のあの力は、そのエイリア石で?事件っていうのは、何が」
「……ごめんなさい。それを話すのは、また今度でいいかしら」
悲しげな瞳子監督に、それ以上は聞けなかった。あの優しかった吉良さんが復讐をしようとする程の事件があったんだ。きっと監督にとっても辛いことに違いない。
ヒロト君達は吉良さんが大好きだった。だからそれがどんなに酷いことでも、吉良さんの為なら何だって出来るんだ。
――お互いが信じるもの……守りたいものの為に戦おう。
風介が信じているのは吉良さん。守りたいのも。ヒロト君もそれは同じで……それなら何で協力しないんだろう?同じエイリア学園なのに敵対していて。ランクもあって。
考えても考えても何でばっかりが出てくる。戦いを続けていれば、いつか答えに辿り着けるかな。
「でも、どうしてあたしに教えてくれたんですか?」
「貴方がお日さま園のことを覚えている以上、確かめておきたかったの」
「何をですか?」
「貴方の覚悟を。……ヒロト達と仲の良かった貴方にとって、この戦いはこの先もっと辛くなるわ」
今までだって隠してたのでしょう?円堂くんにすらも。そう聞いてくる瞳子監督に、全てを見透かされたような気分になった。
どうしてわかったんだろう。……そっか、監督だって辛いんだ。吉良さんはお父さんで、ヒロト君達は弟分で可愛がっていた。そんな人達と戦うのが、苦しくない訳がない。
「……悩みましたし迷いました。半田達の仇で、でも友達で、助けたくて、けどそれを望んでるかもわからなくって」
「円堂さん……」
「でも決めたんです。エイリア学園を倒して、皆を助けるんだって!」
「そう。……決めたのね、円堂さんは。それなら、私から言うことはもう無いわ」
強いのね。そう言われて、あたしは黙って首を振った。あたしなんかまだまだ全然だ。本当に強かったら、きっと最初から迷ってない。
もう寝るように促す監督を今度はあたしが引き留める。エイリア学園のことはなんとなくわかったけど、もう一つ。聞くなら今だ。
「あたしからもいいですか。しろ君のことなんですけど」
「……」
「あたし、アツヤに会ったことがあります。事故があったのも、知ってます」
「!」
「だからしろ君の状態ももしかしてっていうのがあって、でも確信も持てなくて。監督が知ってることを教えてくれませんか?お願いします!」
「……そこまで知っているのなら、貴方には話しておいた方が良さそうね」
しろ君の事情は、あたしの想像と大体合っていた。雪崩で家族を喪ったしろ君は、自分の中にアツヤの人格を作り出した。今のしろ君には二つの人格が宿っている。
アツヤの技であるエターナルブリザードを使う時のしろ君はアツヤ人格になってる。つまりディフェンダーのしろ君とフォワードのしろ君がいて、フォワードの方はアツヤでもあるということだ。
ぽつぽつと語る瞳子監督の表情は暗い。家族を亡くしたしろ君にお日さま園の子達を重ねているのかもしれない。
「……私は酷い大人ね。あんなに良い子達を、こんなことに巻き込んで」
「っ、監督が巻き込んだんじゃありません!」
「え?」
「サッカーが好きだから、エイリア学園が許せなくて、止めたくて。戦うって決めたのはあたし達自身です!だから巻き込まれに行ったんです!」
発端は吉良さん。瞳子監督は家族として責任を感じてるんだ。このままにはしておけないからいつも必死で、止めたい気持ちはあたし達と同じ。
「……円堂さん。いえ、美波さん。このこと、皆には」
「はい、言いません。言うべきは今じゃないと思うから」
「貴方にばかり重荷を背負わせてごめんなさい」
「そんなことないです。少しでも監督と一緒に荷物を持てたら……あ、じゃああたしは監督と共犯ですね!」
エイリア学園、吉良さん、お日さま園、しろ君のこと。皆に秘密にしていることを共有してるあたし達は共犯と言ってもいい。
……だって、あたしはヒロト君達は助けたい。皆みたくただエイリア学園を許せないだけじゃない。ある意味、利用してみたいなもんだ。
「あたし、ヒロト君達が笑ってサッカーするのをまた見たいんです」
「……ええ、私もよ」
「その時は瞳子監督にも笑っててほしいです!あの頃みたいに!」
「そう、ね……。美波さんなら、きっとヒロト達を助けられるわ」
「あたしだけじゃないです。助けましょう!監督も一緒に!」
この戦いに一番強い思いを持って臨んでいるのは瞳子監督の筈だ。試合をするのはあたし達でも、思いはいつも一緒にある。そう信じたい。
ほんの少しだけ、監督は笑ってくれた。
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明日に備えて就寝!と塔子に続いてテントに入ろうとしたら、瞳子監督に呼び止められた。話したいことがあると言われて、キャラバンから少し離れた場所まで移動する。
皆には聞こえない場所まで来て、一体何の話だろう。身構えていれば、監督は迷った風に、けれど意を決したように口を開いた。
「単刀直入に聞くわ。円堂さん、貴女お日さま園を覚えてる?」
「え……」
お日さま園。ヒロト君達がいた場所。エイリア学園の正体。どうして、瞳子監督が。
「その様子だと覚えているようね。……風介とも会ったようだし」
「何で、監督が」
「私とは一度しか会ったことがないもの。覚えていなくても仕方ないわ」
「ま、待ってください!今思い出します!」
何だ、何なんだ。あたしはこの旅の前に瞳子監督と会ったことがあるのか。前々から監督のことで思い出せてないことがあるのはわかってたけど、多分それだ。
お日さま園を知ってるってことは、監督は園の関係者。遠い記憶を引っ張り出す。一回だけ会った人。吉良さんと、それから。姉さん。そうヒロト君に呼ばれた人が、綺麗な黒い髪が揺れて。
「……瞳子お姉さん!?」
そうだ、瞳子監督は瞳子お姉さんだ!ヒロト君が姉さんと呼んでいた人で、吉良さんの娘さん!
「どうして瞳子お姉さんが監督を?エイリア学園って何なんですか?お日さま園の、ヒロト君達は?」
「円堂さん」
「リュウジが父さんがって言ってたんです。もしかして吉良さんを人質に、ヒロト君達は言うことを聞かされてるんじゃないかって」
「落ち着いて聞いて頂戴。……エイリア学園の黒幕は、私の父――吉良星二郎よ」
ガツンと頭を殴られたような衝撃だった。今までの想像が全部ひっくり返った。エイリア学園の黒幕は、吉良さん?
父さんと呼び慕われていた人。ヒロト君達を優しい笑顔を浮かべながら、大事そうに撫でていた人。そんな吉良さんが、あんな酷いことを沢山させてる?
「何で、何でなんですか!じゃあ何の為にヒロト君達は、サッカーで破壊活動なんて!」
「……復讐よ」
「ふく、しゅう?」
「父はある事件の復讐を、そしてヒロト達はそんな父に従っているのよ。5年前に落ちた隕石……エイリア石が全てを変えてしまった」
「エイリア石?」
「人の能力を増幅させる石。そうね、貴方が知っている物で例えるなら……神のアクア。それを使って、手始めにこの国にエイリア学園の力を示している」
「じゃあエイリア学園のあの力は、そのエイリア石で?事件っていうのは、何が」
「……ごめんなさい。それを話すのは、また今度でいいかしら」
悲しげな瞳子監督に、それ以上は聞けなかった。あの優しかった吉良さんが復讐をしようとする程の事件があったんだ。きっと監督にとっても辛いことに違いない。
ヒロト君達は吉良さんが大好きだった。だからそれがどんなに酷いことでも、吉良さんの為なら何だって出来るんだ。
――お互いが信じるもの……守りたいものの為に戦おう。
風介が信じているのは吉良さん。守りたいのも。ヒロト君もそれは同じで……それなら何で協力しないんだろう?同じエイリア学園なのに敵対していて。ランクもあって。
考えても考えても何でばっかりが出てくる。戦いを続けていれば、いつか答えに辿り着けるかな。
「でも、どうしてあたしに教えてくれたんですか?」
「貴方がお日さま園のことを覚えている以上、確かめておきたかったの」
「何をですか?」
「貴方の覚悟を。……ヒロト達と仲の良かった貴方にとって、この戦いはこの先もっと辛くなるわ」
今までだって隠してたのでしょう?円堂くんにすらも。そう聞いてくる瞳子監督に、全てを見透かされたような気分になった。
どうしてわかったんだろう。……そっか、監督だって辛いんだ。吉良さんはお父さんで、ヒロト君達は弟分で可愛がっていた。そんな人達と戦うのが、苦しくない訳がない。
「……悩みましたし迷いました。半田達の仇で、でも友達で、助けたくて、けどそれを望んでるかもわからなくって」
「円堂さん……」
「でも決めたんです。エイリア学園を倒して、皆を助けるんだって!」
「そう。……決めたのね、円堂さんは。それなら、私から言うことはもう無いわ」
強いのね。そう言われて、あたしは黙って首を振った。あたしなんかまだまだ全然だ。本当に強かったら、きっと最初から迷ってない。
もう寝るように促す監督を今度はあたしが引き留める。エイリア学園のことはなんとなくわかったけど、もう一つ。聞くなら今だ。
「あたしからもいいですか。しろ君のことなんですけど」
「……」
「あたし、アツヤに会ったことがあります。事故があったのも、知ってます」
「!」
「だからしろ君の状態ももしかしてっていうのがあって、でも確信も持てなくて。監督が知ってることを教えてくれませんか?お願いします!」
「……そこまで知っているのなら、貴方には話しておいた方が良さそうね」
しろ君の事情は、あたしの想像と大体合っていた。雪崩で家族を喪ったしろ君は、自分の中にアツヤの人格を作り出した。今のしろ君には二つの人格が宿っている。
アツヤの技であるエターナルブリザードを使う時のしろ君はアツヤ人格になってる。つまりディフェンダーのしろ君とフォワードのしろ君がいて、フォワードの方はアツヤでもあるということだ。
ぽつぽつと語る瞳子監督の表情は暗い。家族を亡くしたしろ君にお日さま園の子達を重ねているのかもしれない。
「……私は酷い大人ね。あんなに良い子達を、こんなことに巻き込んで」
「っ、監督が巻き込んだんじゃありません!」
「え?」
「サッカーが好きだから、エイリア学園が許せなくて、止めたくて。戦うって決めたのはあたし達自身です!だから巻き込まれに行ったんです!」
発端は吉良さん。瞳子監督は家族として責任を感じてるんだ。このままにはしておけないからいつも必死で、止めたい気持ちはあたし達と同じ。
「……円堂さん。いえ、美波さん。このこと、皆には」
「はい、言いません。言うべきは今じゃないと思うから」
「貴方にばかり重荷を背負わせてごめんなさい」
「そんなことないです。少しでも監督と一緒に荷物を持てたら……あ、じゃああたしは監督と共犯ですね!」
エイリア学園、吉良さん、お日さま園、しろ君のこと。皆に秘密にしていることを共有してるあたし達は共犯と言ってもいい。
……だって、あたしはヒロト君達は助けたい。皆みたくただエイリア学園を許せないだけじゃない。ある意味、利用してみたいなもんだ。
「あたし、ヒロト君達が笑ってサッカーするのをまた見たいんです」
「……ええ、私もよ」
「その時は瞳子監督にも笑っててほしいです!あの頃みたいに!」
「そう、ね……。美波さんなら、きっとヒロト達を助けられるわ」
「あたしだけじゃないです。助けましょう!監督も一緒に!」
この戦いに一番強い思いを持って臨んでいるのは瞳子監督の筈だ。試合をするのはあたし達でも、思いはいつも一緒にある。そう信じたい。
ほんの少しだけ、監督は笑ってくれた。
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