第12話 帝国の逆襲!後編!!
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禁断の技を使わせない為に、試合は膠着状態になっていた。ワイバーンブリザードが使えない以上、雷門も攻めきれない。
残り時間はもう少ない。その時、明王ちゃんがタックルで夕弥からボールを奪った。
ディフェンスに入った一之瀬にボールを腹に蹴り込むことで押しのけて、ボールは佐久間の足元へ転がる。
「皇帝ペンギン1号!」
佐久間は何の躊躇いもなくまた赤いペンギンを呼び出すと、力強く足を振り抜いた。
ついに撃たれてしまった二度目の皇帝ペンギン1号。その弾道に飛び込んだ鬼道が、思いっきり右足を打ち付ける。
止めきれずに鬼道は弾かれてしまったけど、守兄のマジン・ザ・ハンドで2点目は防ぐことが出来た。
「次こそ決める……!」
「もうやめろ。これ以上撃つな!」
「止める訳にはいかない」
一歩踏み出した佐久間が激痛に叫ぶ。もう、佐久間の体は限界なんだ……!
「何故分からない!サッカーが二度と出来なくなるんだぞ!」
「分からないだろうな鬼道。俺はずっと羨ましかった。力を持っている者は先に進める」
「さっ君……」
「俺はどんなに努力しても追いつけない。同じフィールドを走っても、俺にはお前の世界が見えないんだ」
「佐久間、お前」
「そんなことない。佐久間は強いよ!努力をし続ければ、きっと佐久間だって」
「……美波ならそう言うだろうと思ったよ。けど、苦しいんだ。どれだけ足掻いても、先が見えないのは」
「でも、帝国は、これからだったのに」
「お前は眩しすぎる。そして、遠い。……分かってたさ、この道を選ぶことは、暗闇へ落ちていくのと同じだって。それでも、俺は……」
言葉が途切れる。そっと目を逸らした佐久間が酷く寂しそうに見えて、言葉が出てこない。
「皇帝ペンギン1号があれば……鬼道、お前に追いつける。いや、追い越せる!俺はお前すら手の届かないレベルに辿り着けるんだ!」
「くっ……」
「次撃ったら、もう二度とサッカー出来なくなっちゃうんだよ。あたしは、佐久間がそんなことになるなんて、嫌だ……」
「それでもいいさ。それに……強くなきゃお前は見てくれない」
「何、それ」
佐久間は何も答えない。再開を待つように、自分のポジションへ行ってしまった。
再び試合が動き始める。ボールを奪った明王ちゃんは、ニヤリとほくそ笑むと佐久間へパスを出した。
「これで決める!」
「やめろ佐久間!」
鬼道が止めに走るけど、思うように近づけない。このままじゃ佐久間が……!
「佐久間!やめて!撃たないで!」
「欲しいのは勝利だ!皇帝ペンギン1号!うっ、ぐ、うあ"あ"あ"!!!」
「佐久間ーーー!!!」
三度目の皇帝ペンギン1号。……撃たせてしまった。佐久間を、止められなかった……。
力が抜けそうになる足を叩いて、割り込むように走る。立ち止まってはいられない。鬼道がやったんだ。今度はあたしがやる!
鬼道が必死にあたしの呼ぶ声が聞こえる。大丈夫。威力を落とすくらいなら、あたしにだってやれる!
「バーカ」
「え……」
肩を掴まれて引き戻された。あたしの代わりにシュートの弾道に飛び込んだのは、背番号11。打ち付けられた右足が、悲鳴を上げたのが聞こえた気がした。
「うおおおお!!!」
「染岡!」
パワーを削がれたボールが跳ね飛んで転がる。慌てて駆け寄れば、染岡はふっと小さく笑みを浮かべた。
「なん、で」
「怪我人、増やす気かよ。オレを、残しといて、良かっただろ……」
そのまま染岡は気を失ってしまった。
立ち尽くすあたし達をよそに、明王ちゃんが佐久間へパスを出す。けれど、それが受け取られることはなかった。
ドサリ
佐久間が倒れ込んで、それと同時にホイッスルが鳴った。
試合は1-1で引き分け。
得たものは無く、失ったものは……大きかった。
染岡のそばにいたいけど、佐久間も心配で走り寄る。源田に抱き起された佐久間は、ぐったりとしていた。
「佐久間!しっかりしてよ佐久間!」
「美波……」
「何で、何で……何でだよ!どうして!」
「……見たかったんだ。鬼道が、見ている世界を。それに、強くなれば、美波の見ている世界に、俺も……」
「さっ君……」
「影山ァ!!!」
鬼道の叫びが響き渡った。
ドオンッ
爆発が起きて、揺れた。上空のヘリコプターから、鬼瓦さんが脱出するよう避けんでいる。
「逃げなきゃ……源田!げ、源田も、腕!」
「俺は大丈夫だ。……使ったのは一度だけだからな。それより今は脱出しなければ」
「そうだね。土門!一之瀬!こっち手貸して!」
「分かった!」
「任せろ!」
「さっ君はあたしが肩貸す。歩け……無いよね」
「ごめんな、美波」
「……何に謝ってるのそれ」
「……言っても言い切れないな」
「とにかく他に誰か、あ、一郎太!あの」
「分かってる。佐久間の右側は俺が支えるから、早く逃げよう」
「ごめん、一郎太。ありがとう」
「俺は美波の幼馴染みだからな」
春ちゃんの悲鳴が聞こえた。鬼道がいない。辺りを見回すと、あの特徴的な格好がどこにも見当たらなかった。
鬼道は、もしかして影山を?それにさっきから明王ちゃんの姿も見えない。どこに……?
「佐久間をあんな目にあわせて満足か!」
「満足?出来る訳なかろう!常に勝利する最高のチームを作り上げるまではな!」
「貴様……!」
「これまで私が手がけた最高の作品を教えてやろう。それは、鬼道!お前だ!」
「っ、影山ァーーーッ!!!」
なんとか脱出してボートの上にいるあたし達は、影山と鬼道のやり取りを見ていることしか出来なかった。
鬼道は鬼瓦さんのヘリによって助けられて、真・帝国学園は……海に沈んだ。
埠頭まで戻ると、瞳子監督が呼んでくれた救急車が到着していた。佐久間と源田は、これから病院で精密検査を受ける。
「悪いな、鬼道。久しぶりだっていうのに、握手も出来ない……」
「……構わない」
「おかげで目が覚めたよ。……でも、嬉しかった。一瞬、お前が見ている世界が見えたから……。美波も、ありがとうな」
何でありがとうなんだろう。結局、あたし達は佐久間の体を守り切れなかったのに。視界が濡れてぐちゃぐちゃだ。
「何泣いてんだ。バカな俺の為に泣くお前は、やっぱり大バカだな……」
「じゃあ大バカに泣かれるさっ君はもっとバカだ」
「はは、それもそうだな……。でも、美波が俺の為に泣いてくれるなんて、少し嬉しいな」
「何それ。意味わかんない。酷いや」
「……嘘だよ。そんな顔させたくなかった。させるつもりは無かった。笑って欲しかった……本当は、わかってたのにな」
「佐久間……」
「鬼道、美波。体、治ったら、また一緒に……サッカーやろうな」
「ああ、待っている」
佐久間が救急車内へ運ばれていく。その隣で、じっとこちらを見ていた源田と目が合った。
「源田もまたサッカーやろうね。治るの待ってるから。鬼道と、一緒に」
「ああ。……必ずだ」
そして、あたし達は二人を見送った。
どうしようもない、無力感に苛まれながら。
→あとがき
残り時間はもう少ない。その時、明王ちゃんがタックルで夕弥からボールを奪った。
ディフェンスに入った一之瀬にボールを腹に蹴り込むことで押しのけて、ボールは佐久間の足元へ転がる。
「皇帝ペンギン1号!」
佐久間は何の躊躇いもなくまた赤いペンギンを呼び出すと、力強く足を振り抜いた。
ついに撃たれてしまった二度目の皇帝ペンギン1号。その弾道に飛び込んだ鬼道が、思いっきり右足を打ち付ける。
止めきれずに鬼道は弾かれてしまったけど、守兄のマジン・ザ・ハンドで2点目は防ぐことが出来た。
「次こそ決める……!」
「もうやめろ。これ以上撃つな!」
「止める訳にはいかない」
一歩踏み出した佐久間が激痛に叫ぶ。もう、佐久間の体は限界なんだ……!
「何故分からない!サッカーが二度と出来なくなるんだぞ!」
「分からないだろうな鬼道。俺はずっと羨ましかった。力を持っている者は先に進める」
「さっ君……」
「俺はどんなに努力しても追いつけない。同じフィールドを走っても、俺にはお前の世界が見えないんだ」
「佐久間、お前」
「そんなことない。佐久間は強いよ!努力をし続ければ、きっと佐久間だって」
「……美波ならそう言うだろうと思ったよ。けど、苦しいんだ。どれだけ足掻いても、先が見えないのは」
「でも、帝国は、これからだったのに」
「お前は眩しすぎる。そして、遠い。……分かってたさ、この道を選ぶことは、暗闇へ落ちていくのと同じだって。それでも、俺は……」
言葉が途切れる。そっと目を逸らした佐久間が酷く寂しそうに見えて、言葉が出てこない。
「皇帝ペンギン1号があれば……鬼道、お前に追いつける。いや、追い越せる!俺はお前すら手の届かないレベルに辿り着けるんだ!」
「くっ……」
「次撃ったら、もう二度とサッカー出来なくなっちゃうんだよ。あたしは、佐久間がそんなことになるなんて、嫌だ……」
「それでもいいさ。それに……強くなきゃお前は見てくれない」
「何、それ」
佐久間は何も答えない。再開を待つように、自分のポジションへ行ってしまった。
再び試合が動き始める。ボールを奪った明王ちゃんは、ニヤリとほくそ笑むと佐久間へパスを出した。
「これで決める!」
「やめろ佐久間!」
鬼道が止めに走るけど、思うように近づけない。このままじゃ佐久間が……!
「佐久間!やめて!撃たないで!」
「欲しいのは勝利だ!皇帝ペンギン1号!うっ、ぐ、うあ"あ"あ"!!!」
「佐久間ーーー!!!」
三度目の皇帝ペンギン1号。……撃たせてしまった。佐久間を、止められなかった……。
力が抜けそうになる足を叩いて、割り込むように走る。立ち止まってはいられない。鬼道がやったんだ。今度はあたしがやる!
鬼道が必死にあたしの呼ぶ声が聞こえる。大丈夫。威力を落とすくらいなら、あたしにだってやれる!
「バーカ」
「え……」
肩を掴まれて引き戻された。あたしの代わりにシュートの弾道に飛び込んだのは、背番号11。打ち付けられた右足が、悲鳴を上げたのが聞こえた気がした。
「うおおおお!!!」
「染岡!」
パワーを削がれたボールが跳ね飛んで転がる。慌てて駆け寄れば、染岡はふっと小さく笑みを浮かべた。
「なん、で」
「怪我人、増やす気かよ。オレを、残しといて、良かっただろ……」
そのまま染岡は気を失ってしまった。
立ち尽くすあたし達をよそに、明王ちゃんが佐久間へパスを出す。けれど、それが受け取られることはなかった。
ドサリ
佐久間が倒れ込んで、それと同時にホイッスルが鳴った。
試合は1-1で引き分け。
得たものは無く、失ったものは……大きかった。
染岡のそばにいたいけど、佐久間も心配で走り寄る。源田に抱き起された佐久間は、ぐったりとしていた。
「佐久間!しっかりしてよ佐久間!」
「美波……」
「何で、何で……何でだよ!どうして!」
「……見たかったんだ。鬼道が、見ている世界を。それに、強くなれば、美波の見ている世界に、俺も……」
「さっ君……」
「影山ァ!!!」
鬼道の叫びが響き渡った。
ドオンッ
爆発が起きて、揺れた。上空のヘリコプターから、鬼瓦さんが脱出するよう避けんでいる。
「逃げなきゃ……源田!げ、源田も、腕!」
「俺は大丈夫だ。……使ったのは一度だけだからな。それより今は脱出しなければ」
「そうだね。土門!一之瀬!こっち手貸して!」
「分かった!」
「任せろ!」
「さっ君はあたしが肩貸す。歩け……無いよね」
「ごめんな、美波」
「……何に謝ってるのそれ」
「……言っても言い切れないな」
「とにかく他に誰か、あ、一郎太!あの」
「分かってる。佐久間の右側は俺が支えるから、早く逃げよう」
「ごめん、一郎太。ありがとう」
「俺は美波の幼馴染みだからな」
春ちゃんの悲鳴が聞こえた。鬼道がいない。辺りを見回すと、あの特徴的な格好がどこにも見当たらなかった。
鬼道は、もしかして影山を?それにさっきから明王ちゃんの姿も見えない。どこに……?
「佐久間をあんな目にあわせて満足か!」
「満足?出来る訳なかろう!常に勝利する最高のチームを作り上げるまではな!」
「貴様……!」
「これまで私が手がけた最高の作品を教えてやろう。それは、鬼道!お前だ!」
「っ、影山ァーーーッ!!!」
なんとか脱出してボートの上にいるあたし達は、影山と鬼道のやり取りを見ていることしか出来なかった。
鬼道は鬼瓦さんのヘリによって助けられて、真・帝国学園は……海に沈んだ。
埠頭まで戻ると、瞳子監督が呼んでくれた救急車が到着していた。佐久間と源田は、これから病院で精密検査を受ける。
「悪いな、鬼道。久しぶりだっていうのに、握手も出来ない……」
「……構わない」
「おかげで目が覚めたよ。……でも、嬉しかった。一瞬、お前が見ている世界が見えたから……。美波も、ありがとうな」
何でありがとうなんだろう。結局、あたし達は佐久間の体を守り切れなかったのに。視界が濡れてぐちゃぐちゃだ。
「何泣いてんだ。バカな俺の為に泣くお前は、やっぱり大バカだな……」
「じゃあ大バカに泣かれるさっ君はもっとバカだ」
「はは、それもそうだな……。でも、美波が俺の為に泣いてくれるなんて、少し嬉しいな」
「何それ。意味わかんない。酷いや」
「……嘘だよ。そんな顔させたくなかった。させるつもりは無かった。笑って欲しかった……本当は、わかってたのにな」
「佐久間……」
「鬼道、美波。体、治ったら、また一緒に……サッカーやろうな」
「ああ、待っている」
佐久間が救急車内へ運ばれていく。その隣で、じっとこちらを見ていた源田と目が合った。
「源田もまたサッカーやろうね。治るの待ってるから。鬼道と、一緒に」
「ああ。……必ずだ」
そして、あたし達は二人を見送った。
どうしようもない、無力感に苛まれながら。
→あとがき