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「背低くて…髪の毛ふわっとしとる」

段々##NAME1##の目が潤んできとるのが分かる。

「自分より他人のことばっかりで、いつも明るく笑っとって、駄目な兄ちゃんと嫌な顔せんと話してくれる…そんな##NAME1##が、俺は好きや」

『…うん…っ』

##NAME1##の返事と嗚咽と涙。はっとして掴んどった手を放した。

「ご、ごめん!痛かったやろ」

『ううん…大丈夫』

##NAME1##の手を見れば少し赤くなっとるのが分かる。まだ中学生や言うてももう男女の体格差は顕著になってまうことを思い知らされる。

『私やって…謙兄ちゃんのこと好きで…でもそんなこと言えんくて』

泣き続ける##NAME1##の頭に手回してゆっくり胸に埋めた。

「…今分かった」

冷静になってみれば、少し考えたら分かることやった。##NAME1##も俺と同じで。好きやのに何も出来んで、好きやから何も言えへんで。遠回しやけど、俺の事男としても見てくれとったんやな思う。

「鈍感な兄ちゃんですまんかった」

さらりと##NAME1##の髪に指を通す。

『ええよ…好きやから』

泣いた笑顔の美しさを、俺は初めて知った。

「こんなかわええ妹がおるなんて兄ちゃん幸せモンやな」

『あ…』

妹、なんて単語に不安げに##NAME1##の瞳が揺れる。

「あぁ…本題はこれとはちゃうかった」

"兄妹"なんて言葉ではもう縛らせへん。

「俺とお前はな」

振り切りたい。ヘタレた俺のままじゃこの子は守れへん。

「兄妹とちゃうねん…血は繋ごうてない」

『え…っ』

「せやけど!!俺はその方が良かったと思っとるから!そんな顔せんで?」

その方が良かった、なんてご都合主義過ぎるかな。

『私が…養女なん?』

辛そうに俯く##NAME1##に心が痛くなってまう。

「…せやで」

俺の肯定の言葉に##NAME1##の肩が強ばった。

『ほんまなん…よね』

「俺が嘘つけへんのはお前がよく知っとるやろ」

もう取り繕っただけの上辺の関係は嫌や。
今だけ、残酷な言葉を受け止めて。

『…せやな』

吹っ切れてもおらんのに無理矢理に頷く##NAME1##を見とったら胸が引き裂かれそうになる。

「##NAME1##のお母さんはな、ココの忍足病院でお前を生んですぐ…」

亡くなったんや。なんて最後まで言えへんわ。

「せやからウチで引き取った」

こんな事俺に言わした神様を許さへん。
こんな運命に##NAME1##を泣かせた神様を、俺は絶対に許さへん。

『お父さんも…?』

「お父さんは…」

これは詳しく聞かされとらんけど奥さん置いて自分どっか行きよんのは確かや。きっとロクな男やないんやろう。

「今頃どこに居るかも分からへん。期待出来るような人とちゃうで」

仮に今更##NAME1##を迎えに来たって渡さへん。

『私…皆のことずっと家族や思とった。お父さんもお母さんもそんなに帰って来んけど帰った日は優しくしてくれとったし、謙兄ちゃんがおるし』

嫌な予感が背筋を駆ける。

『せやけど…私、ただの他人ってことなんよな?』

聞いたらあかん。

『ここにおるべきちがうんやないの……?』

言い終わる前に##NAME1##を引き寄せて思い切り抱き締めた。

「そんなワケあらへんやろアホ!!」

血が繋がってないからただの他人とかそんな風に思った事は一度もない。

「皆…お前のこと大好きやねんで!?何で疑うん…?」

精神が不安定なんは俺だけやない。##NAME1##の方が辛い。分かっとるのに。
泣いとるままで顔を上げずにいる##NAME1##の方が苦しい。俺なんかより、ずっと。
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