「…うるさいっすわ」

「え何も言うてない…」

放課後､部活の練習をしていると隣に立っていた財前に暴言を吐かれ舌打ちまでされてしまった｡

「雰囲気がうるさいんとちゃう？」

「あー何かゴテゴテしとるな」

「なになに？謙也クン恋煩い？」

遠山の発言に一氏､金色が続く。

「この前言うとった妹さんのことたいね？」

千歳に図星を突かれ､うぐ､と苦い声を出した。

「へぇ…忍足##NAME1##の事っすか」

「あ…？そういや財前､クラスどこやった!?」

「察しがええんですね｡席も隣や」

「隣ィ!?」

仰々しい謙也の反応に､財前がうるさ､と引いた顔をする｡

「あいつそこそこ人気ありますよな」

「…やっぱり？」

「性格ええし､可愛い方やし」

「何や良お分かっとるなっておいふざけんなお前そんな目で「ってクラスの奴が言いよった」

「何やねんそれ俺の知らん男に狙われとるん!?そんならまだ財前のがマシや…」

「狙われとる訳とはちゃうと思うけどな、あんま男と喋らんし｡何すかそれ俺にやったら取られてええん？」

「良ぉないわボケ!!頼む財前…##NAME1##のこと何とかして」

「無理やろアンタどこまでアホなん」

「そんなこと…あ､##NAME1##は何か男の話しとった？」

俯きながら言う謙也にこいつ病気かと思いつつ教室での風景を思い出す｡

「んー…特に何も｡一緒におんの白石妹やから当たり前やけど」

「友香里ちゃんか｡当たり前って何でなん？」

「あいつ男はあんま興味無さそうやし」

「イケメンに見慣れとるからちゃう？」

「自分で言うなや白石」

知らない内に財前とは反対側の隣に来ていた白石が腕を組みながら言い放った｡

「部活中やのに無駄話多いなんて余裕やなー素振り500回追加されたいんか？あ？」

「分かったっちゅーねん!!」

「ハァ…謙也さんのせいで俺まで「お前は何を人のせいにしよんぞ!!」

巷で噂される黒石を垣間見て身の危険を感じ､練習に集中することを考える｡
相談や言い訳を重ねた所で､彼女に振りかかる事実は何も変わらない｡

―やっぱり言うべきか？

いや､でも､と頭を抱えると

「謙也は外周して頭冷やして来い!!」

と言われラケットを放った｡

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「白石ぃ…殺す気…やろ……」

部室で息を切らず謙也に､白石は爽快に笑って見せる｡

「酸素不足で何も考えられんやろ？良かったやんそれで頭冷えたで」

「こんな死にそうな謙也初めてや」

「白石も厳しかねー」

一氏がこの世の終わりを見た様な表情をする反面､千歳は苦笑いを浮かべるが何処か屈託無さそうだった｡

「恋って大変なん？」

「金ちゃんにはまだ早いわよ」

難しそうな顔で見上げる遠山に､金色が人差し指を立てて答える｡

「ん､全員着替え終わったな｡解散！」

白石が言うと部室から部員がぞろぞろと抜けて行く中､謙也､白石､財前が残った｡

「…どうするんすか」

「どうしよかなぁ」

財前の問いに､空笑いをしながら返す｡

「好きなら好き言うたらええやん」

「は…？」

「ちょっ白石!?財前なんやその顔は!!」

「…え､妹…近親相姦もええとこですやん」

露骨に顔をしかめる財前に内心傷付いたがそれに関しては何も言うまいと諦めた｡

「財前は知らんのやっけ？謙也と##NAME1##ちゃんが血繋がっとらんの」

「はぁ？まためんどくさい話になりおったんですか」

ほんま謙也さんアホの癖にめんどくさいとその他文句がぶつぶつと聞こえたが慣れているもので全て無視に成功する｡

「で､本人はそれを知らん｡もう血縁関係無い事言うて想いも告げるのが彼女の為やし楽になるで」

白石の言うことも一理ある､と言うよりそれが正しいのだろう｡