Ⅰ
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『あ』
一時間目が終わり、そう言えば忘れ物を届けるんだったと思い出し、兄である謙也の体操着が入った袋を持って席を立つ。
「どこ行くん?」
『謙兄ちゃんに忘れ物届けに行く』
「あ、そうなん」
―妹に届けに行かせるなんてアホな兄貴やな
教室を出て行く##NAME1##を見届けながら財前は一人思った。
3年2組の教室に着き、開け放たれた扉から顔を覗かせてきょろきょろと謙也を探すと、
「誰か探しとるん?」
と上から声が降りる。見上げると、端麗な顔立ちの左腕に包帯を巻いた少年が立っていた。
『あ…はい。兄を探してます』
「へぇーここに兄貴おるんや。自分、名前教えてくれるか?」
『忍足##NAME1##です』
彼女が返すと、白石が驚いたように目を見開く。
「あぁ!##NAME1##ちゃんな。謙也から話聞いとるで。俺は白石蔵ノ介や」
『白石さん…って友香里のお兄さんですか?』
「せやで。名前で呼んでる言う事は妹が世話になっとるみたいやな」
ははは、と爽やかに笑う姿を見ていると、
「白石ィ!!」
なんて思いきり叫ぶ声が聞こえた。
『謙兄ちゃん!これ忘れ物』
「お、ありがとうな##NAME1##。白石お前俺の妹に何しよんねん!!」
##NAME1##を自分の背に庇うように引っ張り、白石に噛み付きかかる。
「うわーこわ。ちょっと喋っただけでこれや」
「お前何するか分からんのや!!ええか##NAME1##、絶対こいつには近付いたらあかんで!?」
##NAME1##の両肩に手を置き目線を合わせるように屈まれ、その剣幕に黙って顎を引くしかできない。
「ええなー謙也はかわええ妹さんおって。俺の妹は鬼畜やから「誰が鬼畜やって?」
青ざめた顔をして振り返ると、友香里がわざとらしく笑っていた。
「…角が生えそうな思いやでクーちゃん。あぁちょうどウチに同じ様に角が生えたんがおったなぁ。勝負したろかな」
「分かった兄ちゃんが悪かった!せやからやめてカブリエルにだけは手ェ出さんとって…」
「なんちゅう妹や…俺の妹##NAME1##で良かったわホンマに」
項垂れる白石を横目にこっそり謙也が呟き、友香里が##NAME1##へ向き直る。
「次の時間調理実習らしいねん。##NAME1##が戻って来んから財前に聞いたら兄ちゃんの教室行った言うから」
『あっ…そうやった!ごめん』
「ええよー。あとこれ机の横にかかっとったん勝手に持って来てもうたんやけど…」
控え目に差し出されたそれは、実習の為に用意するようにと言われていたエプロン等が入った袋だった。
「調理実習!?何作るん?」
謙也が興奮気に聞くのを白石が冷たい目で見るのをそれとなく察知しながら、
『…何やっけ?』
と友香里に問う。
「パウンドケーキやったかな?」
「ほぉーええやん。女は料理出来て男の胃袋掴まなあかんならな」
白石は何気無く言ったらしいが、友香里の鋭くなった目付きにたじろいだ。
「いや…出来へんのもかわええで」
謙也が考え込んだ姿勢のまま誰の顔も見ずに言ったのだが、予鈴のチャイムに掻き消された。
『ほなもう行くわ。忘れ物したらあかんよ謙兄!』
「おん!すまんなー」
ひらひらと彼女に手を振り、教室へ戻る。
――――――――――――――――――――――
「なぁ白石…」
着席し、視線を目の前の机に向けたまま呼んだ。
「何や」
「どう思うあいつのこと」
「…ええ子やな」
「せやろ!?さっきなんか謙兄て…あっかんもう嫌やめっちゃくちゃかわええ…泣きたい」
「はぁそうですか良かったですねぇ…でも血繋がってないんよな?」
流し気味の態度から一変して、白石が椅子を謙也側へ向ける。
「あぁそうや…せやけどあいつは知らん」
「言うたれよ」
「言える訳ないやろ!」
躍起になって顔を上げると、彼は至って真面目な顔をしていた。
「年重ねん内に言うべきやろ、そんなん。何らかの形で知ったなんてことになったらどうするん?」
「…言うたら傷付くやん」
「言う方も傷付くやろ。お互い様や」
ちゅーかお前、と彼が一言切る。
「あの子にベタ惚れやん」
白石の発言の理由を理解した謙也は肩を震わせた。
一時間目が終わり、そう言えば忘れ物を届けるんだったと思い出し、兄である謙也の体操着が入った袋を持って席を立つ。
「どこ行くん?」
『謙兄ちゃんに忘れ物届けに行く』
「あ、そうなん」
―妹に届けに行かせるなんてアホな兄貴やな
教室を出て行く##NAME1##を見届けながら財前は一人思った。
3年2組の教室に着き、開け放たれた扉から顔を覗かせてきょろきょろと謙也を探すと、
「誰か探しとるん?」
と上から声が降りる。見上げると、端麗な顔立ちの左腕に包帯を巻いた少年が立っていた。
『あ…はい。兄を探してます』
「へぇーここに兄貴おるんや。自分、名前教えてくれるか?」
『忍足##NAME1##です』
彼女が返すと、白石が驚いたように目を見開く。
「あぁ!##NAME1##ちゃんな。謙也から話聞いとるで。俺は白石蔵ノ介や」
『白石さん…って友香里のお兄さんですか?』
「せやで。名前で呼んでる言う事は妹が世話になっとるみたいやな」
ははは、と爽やかに笑う姿を見ていると、
「白石ィ!!」
なんて思いきり叫ぶ声が聞こえた。
『謙兄ちゃん!これ忘れ物』
「お、ありがとうな##NAME1##。白石お前俺の妹に何しよんねん!!」
##NAME1##を自分の背に庇うように引っ張り、白石に噛み付きかかる。
「うわーこわ。ちょっと喋っただけでこれや」
「お前何するか分からんのや!!ええか##NAME1##、絶対こいつには近付いたらあかんで!?」
##NAME1##の両肩に手を置き目線を合わせるように屈まれ、その剣幕に黙って顎を引くしかできない。
「ええなー謙也はかわええ妹さんおって。俺の妹は鬼畜やから「誰が鬼畜やって?」
青ざめた顔をして振り返ると、友香里がわざとらしく笑っていた。
「…角が生えそうな思いやでクーちゃん。あぁちょうどウチに同じ様に角が生えたんがおったなぁ。勝負したろかな」
「分かった兄ちゃんが悪かった!せやからやめてカブリエルにだけは手ェ出さんとって…」
「なんちゅう妹や…俺の妹##NAME1##で良かったわホンマに」
項垂れる白石を横目にこっそり謙也が呟き、友香里が##NAME1##へ向き直る。
「次の時間調理実習らしいねん。##NAME1##が戻って来んから財前に聞いたら兄ちゃんの教室行った言うから」
『あっ…そうやった!ごめん』
「ええよー。あとこれ机の横にかかっとったん勝手に持って来てもうたんやけど…」
控え目に差し出されたそれは、実習の為に用意するようにと言われていたエプロン等が入った袋だった。
「調理実習!?何作るん?」
謙也が興奮気に聞くのを白石が冷たい目で見るのをそれとなく察知しながら、
『…何やっけ?』
と友香里に問う。
「パウンドケーキやったかな?」
「ほぉーええやん。女は料理出来て男の胃袋掴まなあかんならな」
白石は何気無く言ったらしいが、友香里の鋭くなった目付きにたじろいだ。
「いや…出来へんのもかわええで」
謙也が考え込んだ姿勢のまま誰の顔も見ずに言ったのだが、予鈴のチャイムに掻き消された。
『ほなもう行くわ。忘れ物したらあかんよ謙兄!』
「おん!すまんなー」
ひらひらと彼女に手を振り、教室へ戻る。
――――――――――――――――――――――
「なぁ白石…」
着席し、視線を目の前の机に向けたまま呼んだ。
「何や」
「どう思うあいつのこと」
「…ええ子やな」
「せやろ!?さっきなんか謙兄て…あっかんもう嫌やめっちゃくちゃかわええ…泣きたい」
「はぁそうですか良かったですねぇ…でも血繋がってないんよな?」
流し気味の態度から一変して、白石が椅子を謙也側へ向ける。
「あぁそうや…せやけどあいつは知らん」
「言うたれよ」
「言える訳ないやろ!」
躍起になって顔を上げると、彼は至って真面目な顔をしていた。
「年重ねん内に言うべきやろ、そんなん。何らかの形で知ったなんてことになったらどうするん?」
「…言うたら傷付くやん」
「言う方も傷付くやろ。お互い様や」
ちゅーかお前、と彼が一言切る。
「あの子にベタ惚れやん」
白石の発言の理由を理解した謙也は肩を震わせた。