〔弐〕初めての空
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新しく吹き始めた 風。
微かに見える一筋の 光。
その元を辿っていけば、
ほら、貴方が居る
これから描く
未来への懸け橋は
あの空へ続いていると
信じてる
《初めての空》
土方さんとは、父が知り合った。それは土方さんが石田散薬の行商をしていた頃。不意に買った喧嘩を終えた土方さんを、父がたまたま通りかかった路地で発見したのだとか。
怪我をしていた土方さん(どんなに激しく争っていたのだろう)を無理やり診療所へ連れて行ったことから全ては始まった。
「“やんちゃ”だったからなぁ、歳は」
「‥うるせぇやい」
照れ隠しの不貞腐れに、思わず笑いが零れる。
その“やんちゃ”がきっかけで、時折お互いの家を訪れるようになったのだ。
英国に行ってからも、父の伝で時折行商の船にお願いして続いていた文通。「武士になりたい」と、言っていた二人が、いつの日か「武士になった」と教えてくれた文が、私の宝物になっている。
「そうだ、春華。お父上はどうなさった、お元気か?」
不意にかけられた近藤さんの言に、ピクリと肩が反応した。言葉に詰まって、口を噤む。拳を強く握ると、肩が細かに震えた。
どうしよう。言葉が出てこない‥。
──父さんは‥
「春華‥!? どうした、まさか、お父上の身に何か‥!!?」
慌てる近藤さんの発言など耳に入らず、その時──私の“怒り”は限界になった。
「──っ呆れ通り越して怒ってるんです!」
「「‥‥は?」」
そう、父さんは‥
「“研究が良いところだから帰れないや、ごめんね‥! でも一人で帰すのはなぁ‥云々”とかなんとか言って帰国しなかったんですよ!? 次の渡航はいつになるか分からないのに!」
私が鼻息荒く拳を握ると、近藤さんは開いた口をパクパクさせて、引きつった苦笑いをした。土方さんに至っては笑いを堪えている様子。
「? どうしました?」
「‥‥いや、ご健在ならいいんだ」
「? ピンシャンしてますよ」
土方さんは何故か堪えきれないように一層 くくっと笑った。
近藤さんと土方さんの反応の意味が全く分からない私は、阿保みたいに目をパチクリさせるしかなかった。
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