〔九〕共に生きる道
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「近藤局長、相内です。よろしいでしょうか」
約束していた時刻に局長自室を訪れると、その人は正座をして目を閉じていた。──黙祷しているのだろうか。
「──ん、おぉ、春華か。入ってくれ」
許可が出て、失礼しますと声をかけて入室した。
「僭越ながら、お体を診させていただきます」
「ははっ、改まってどうした。よろしくな」
少し畏まりながら、検診を始める。まずは喉、そして皆と同じように、胸に聴診器を当てる為に脱いでもらったところで──眉をひそめてしまった。
「‥‥」
今日診た大半の隊士にもあったソレは──嫌でも目に飛び込んでくる。
「? どうした、春華」
無言になった私を不思議に思ったのか、近藤さんが訊ねてくる。私はそっと首を振った。すると、近藤さんは、目元を弛ませて、優しい声で続けた。
「何でもない、という顔には見えないけどな」
完全に見破られていることが分かって、私は項垂れた。──医者が心配されてどうするのだ。
近藤さんには敵わないなと思って、息を吐いた。
「‥‥この傷痕‥」
「ん、これか? これは確か‥‥あぁ、池田屋の時のだなぁ」
朗らかに笑う近藤さんの隣で、上手く笑えない自分がいる。
池田屋、名誉の傷──皆、誇らしく語るその裏側に絶対に存在する、死の可能性。
志を胸に、死と背中合わせに生きている彼らを見ると、どうしても口をつぐんでしまう。
そんな私の様子を察したのか、近藤さんは柔らかく笑んで、そっと自分の傷を手で覆って言った。
「治す方の身のお前には、酷かもしれんが‥──これはな、俺達にとっては誇りなんだ。」
「はい── 」
そんな貴方たちだからこそ、私は支えられる人間でありたい。
そう、決意を新たにしたところで、ふと顔を上げると、近藤さんがいつものおおらかな笑顔を浮かべて私を見ていた。
「でも、なんだな‥‥心配してくれる人がいるってのも──嬉しいものだな」
その言葉一つで救ってくれる。貴方こそが、私の──そして皆の救いなのだと思った。
+