〔八〕祖国のタカラ
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真っ赤に染まった提灯の列。
景気の良い声に、炭の匂い。囃しの音の中で、色とりどりの着物が行き交い、皆の頬は紅潮していた。
そこにあったのは、心擽られる物ばかりだった。
そして、私は真新しい朱色の着物を身に付けているお蔭で、更に気分は上々だった。
「‥沖田さん、大変です」
「はい?」
「今にも走り出しちゃいそうです」
「あははっ」
猿楽師、的矢に小間物売り。天ぷら屋台に蕎麦の屋台。どの出店にも目を奪われてしまう。
様々なお面がずらりと並んだ店の前では、暫く立ち尽くした。
初めてやった金魚掬いでは コツが一切掴めず、出来るだけ最小限に持っていったなけなしのお金は、殆ど手元に残っていない。
今手元にあるのは、もうそれだけでは何も買えない程度のお金と、私があまりにも可哀想に見えたのか、金魚屋のおじさんがおまけしてくれた金魚一匹だけだった。
「‥何笑ってるんですか、沖田さん」
「いや、だって‥っ、春華さんあまりにも下手なんですもん‥っ」
「こ、コツが掴めなかっただけです! あと、に、二回ぐらいやればきっと‥」
そう虚勢を張ったところで、肩を落とす。多分無理だ。あの金魚たちの速さには、きっといつまで経っても敵いそうにない。
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