〔八〕祖国のタカラ
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騒々しく走って来て、戸が力任せに開かれた先には、原田さんと永倉さんが居た。
「お祭り?」
「そう! お祭りだヨ」
「近くの神社でやるんだよな~。今年最初の大きな祭り! あそこはお狐様を祀る祭りを───」
原田さんは勢いに任せて、何処で仕入れてきたのか、蘊蓄を語り出した。
きっと、年中祭男みたいな原田さんには堪らない行事なのだろう。
「良いですね~。日本のお祭りは久し振りです」
「な!良いだろー? 今年こそ紅一点でどんちゃん騒ぎだ!」
えぇ?と私が苦笑すると、沖田さんが微かに笑みを浮かべていた。‥何処か、黒い笑み。
すると、土方さんが何か書き物に目を通して、さらりと告げた。
「原田、永倉。お前らは行けねぇぞ」
「「えぇ!!? 何で!!?」」
「巡回だ」
事も無げに言い捨てられた言葉は、二人にとっては鬼の宣告で。さっきまでの笑顔はどこへやら、絶望に満ちている。
「何で今日に限って‥!」
それとは対照的に、更に笑みを深める沖田さんを見て、少し背筋が冷えたのは きっと気のせいだ。
──まさか、裏で‥
と、そこまで頭に過ったところで、沖田さんと目が合って、満面の笑みを返されて──それ以上考えることは止めた。
結局、お土産を沢山買って帰る、という盟約の上、永倉さんと原田さん両名は渋々退室していった。
悲しげな背中を見送りつつ──二人には悪いけれど、待ち受けるお祭りに、私の心は躍っていた。
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