〔七〕世界で一番綺麗な言葉
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新しい環境
新しい生活
新しい日常の中に染み渡っていく
その呼び名
貴方の存在を表す言葉は
世界で一番美しく響く
《世界で一番綺麗な言葉》
朝起きたら、井戸で顔を洗い身仕度を整えて、姿見の前で頬を叩く。気合いが入ったところで、自室を出る。
「おはようございます」
辿り着くまでの間、すれ違う人達に挨拶をしながら、その様子を観察する。顔色は悪くないか、声に疲れがないか、身のこなしに変なところはないか。
不安にさせてはいけないから、最低限の範囲で観察し、笑顔で別れる。
そうしている内に、“仕事場”に辿り着く。私は一つ深呼吸をして、それからその戸に手をかける。
「相内です。失礼します」
開けた先にいるのは、山崎君。私も遅い方ではないと思うのだけれど、彼はいつも私より早く出勤してきていて、いくら頑張っても勝てたことがない。
「おはようございます、山崎君」
「‥‥おはよう」
少し無表情な彼は、この職場での私の先輩であり、医術の面では──私の後輩という、不思議な関係。
その、人付き合いの薄そうな彼とも、笑顔で──少なくとも、無表情ではなく辛うじて微笑だろうと思われる表情で──挨拶を交わせるくらいにはなったと思っていたのだけれど、何故か少しむすっとした表情を見せた気がしたのは、気のせいだろうか。
その反応が気になって、少し顔を覗き込んでみれば、切れ長の目と目があった。
すると、それを察したのか、溜息と共に小さな声でその理由を告げられた。
「‥‥敬語。」
「え? ──‥あぁ」
それか、と思い当たる節があって、苦笑してしまった。
同僚となった彼とこれからも上手く仕事をしていく為には、“これ”にも慣れなければ、と自分に言い聞かせ、私は気を取り直して目の前に積まれた“カルテ”に向かった。
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