〔六〕春雨の向こうに見えたもの
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
貴女は、私が、私たちが、自分自身の足で立ち上がり、自分自身の手で切り抜ける“力”があるのだと、信じてくれる。信じて待ってくれている。
──そんな“力”の認め方をしてくれる人なんて、初めてだった。
そして、負った傷に堪えきれなくなった時には、貴女がいてくれる。
頼りきってはいけない。自分自身で切り抜けることができる“力”が自分にはあるから──信じてくれているから。
けれど、どうしても辛いときは、彼女がいてくれる。
それは、とても。とても心が救われる存在。
「──」
言葉に出来なくて、胸の中で噛み締める。そしてそれでは飽き足りなくて──貴女の手を握った。
驚いたように顔を上げた貴女に、薄く笑みを返す。仄かに頬を染めた貴女は、繋がれた手を見つめて、それからキュッと力を込めた。
その弱々しい力が、小さい手のひらが愛おしくて──この柔らかな瞬間を胸に刻み込んだ。
自分の足で立つ
力を認めてくれたひと。
傷を背負いきれない
弱さを認めてくれたひと。
大切なひと。
『春雨の向こうに見えたもの』-終