〔四〕意志の集う場所
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「土方さーん」
永倉さんに連れられて奥へと進むと、少し大きめな部屋の前で足を止めた。
部屋の主の名を呼んでみるけれど、返答が無い。
「土方さーん? 入っても良いですかー?」
「‥‥うるせぇ。入れ」
不機嫌そうな土方さんの声が帰ってくると、永倉さんはクスリと笑った。
顔を近付けると、彼は私にこう耳打ち。
『多分今起きたんだよ』
障子を開け部屋に入ると、敷いたままの布団、机に向かう大きな背中が見えて、ああ成る程、と思ってクスリと笑ってしまった。
「──永倉君か」
土方さんはこちらに振り返らずにそう問うと、どうした、と短く続けた。
「いやぁ、お宅の春華チャンをお届けにね」
「春華?」
“新入り”の名前が出てきたことを不思議に思ったのか、土方さんはゆっくりこちらに振り返った。
私の方を向いた瞬間、一瞬ギョッとした表情を見せた土方さんは、額を押さえた。
「‥‥何だその江戸の湾に沈めたくなるような簀巻きは」
「‥春華です」
情けなく、言う。
すると、眉間を押さえていた手を口元へ移すと、──実は堪えていたのか、土方さんは堪らず吹き出して笑った。
土方さんに笑われるのも無理はない。私は浴衣の上に 二重三重、上から下まで羽織を巻き付けているのだから。
「彼女、着物が“浴衣”しか無いらしいんですヨ」
「“浴衣”?」
「そう。しかも丈がとてもとても短いヤツ」
「丈が、短い‥?」
ちらりと私の方を見遣ると、土方さんは眉を顰めた。
「まさか春華お前、そんな格好で出歩いてねぇだろうな」
「!! まままままさかそんな破廉恥なっ」
動揺しすぎて隠せている訳がない。永倉さんがケラケラ笑うと、土方さんは溜め息を吐いた。
「‥いいかお前、此処は屯所。男しかいねぇんだ。少しでも軽率な行動は許さねぇ。分かるな?」
「‥‥ハイ。」
大人しく素直に返事をすると、土方さんは呆れ混じりに笑って、私の頭をポンっと叩いた。
「自覚しろ」
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