たゆたう夢の帰る場所
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『もし、空を飛べたなら?』
『もし、一つだけ願い事が叶うなら?』
たとえ人生に“if”なんかないとしても
たゆたう夢の帰る場所
「もし、平助が殿様だったら何をする?」
朝の挨拶もせずに君は唐突に問いかけてきた。
その問いが何を示すのか、俺にはわからない。
「うーん、とりあえず、あらゆる力使って春華を幸せにして、守るよ」
「‥あっそ」
君は呆れが入ったような声で呟いた。
素っ気ない態度に、少し苦笑する。
「私も同じ」
「え?」
「私も平助を守りたい」
なんて、真っ正面きって恥ずかしげもなく言うから、思わずこっちの頬が熱くなった。
「じゃあ、もし明日世界が終わるとしたら?」
そう問い掛けを続けながら、君は俺と背中合わせになるように座った。
君の表情は見えない。
「‥どうしたの?今日は」
「いいから答えて」
いつもになく言葉が強くて、感情を隠したような声。
その理由は訊かなかった。
「春華の隣にいる」
「‥じゃあ、もし私が平助を嫌いになったら?」
「‥嫌いになったの?」
「なってない。答えて?」
「もう一度君を口説くよ」
「じゃあ、もし、平助が私を嫌いになったら?」
「それはないけど、もう一度好きになる」
そう俺が迷い無く答えると、君は膝を抱き寄せ身を一層小さくした。
じゃあ、と 少し言い淀んで、君は呟く。
「じゃあ、もし、刀なんて捨ててって言ったら?」
触れる背中が震えている。隠すように微かに、でも、確かに。
体に力が入っているのがわかった。
「もし、置いていかないでって言ったら?」
「もし、泣いて縋ったら?」
「もし、一緒に逃げようって言ったら?」
「もし、死なないでって言ったら‥?」
言い終える前に、君は後ろから俺に抱きついた。肩口が濡れていく。泣いているのだと、感じる。
心が、震える。
「‥春華‥」
「怖いね。“もし”って‥」
「‥春華」
「怖いの‥。抑えきれなくなる。無限の仮定が私の‥」
「春華」
諭すようにその名を呼んで、接近した君の顔に額に瞼に口づけを落とす。
ねぇ、泣かないで。
「平、すけ‥」
「馬鹿だなぁ、春華は」
体を君の方に向け、真っ直ぐに君の瞳を見つめて、言う。
「“もし”の可能性は無限だよ」
「でも、無限だから怖い‥」
「一人で考えるからさ」
出来うる限りの、在らんばかりの笑顔を君に向けると、君は目を円くして頬をほんのり赤く染めた。
「二人で居たら、君を不安にさせないよ。俺は」
此処に居るよ。
諭すように、呟いた。
「それでも信じられないなら、今、誓う」
そっと、君の手に俺の手のひらを重ね、言った。
「もし、許されるならば」
「もし、願い事が一つだけ叶うなら」
「君に愛を囁き続けるよ」
たゆたう夢の帰る場所
(もし、許されるならば)
(君への愛に回帰する)