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気づけば目がその姿を追うようになっていた。
“壬生狼”を恐れ、恐怖の満ちた目で見るのではなく、目を逸らすのではなく。
ある意味“力”を持つ私達を、“そういう眼”で見るのではなく、媚びるのではなく。
彼女は瞳を逸らさない。
彼女は媚びない。
彼女は私達を真っ直ぐ見る。
そんな事が、私にとっては とてもとても嬉しくて、大切で、幸せで。
今が続けば良いと願った。
今が続くよう願う言葉を掛けてしまいたかった。
───けれど
けれど私は、“鬼”でなくてはいけないから。(そしてこの手は赤く染まっているから)
“愛してる”
言ってはいけない。
言えない。
許されない。
この狂おしい程の感情を、カタチにすることは許されない。
抱くことすらも、許されないのかもしれない。
───それでも
それでも、私は、拠り所が、欲しかった。
“弱い人間”だから。“小さな人間”だから。
どうか“今”が在り続けますように、と。彼女がせめても 離れていってしまわぬように、と。言葉の隅に祈りを込めて。
(それはまるで呪縛の言葉)
『いってきます』
『ただいま』
(これほど重くて苦くて辛い言葉はないかもしれない)
それでも彼女は、言葉の真意を知っても尚、一層 微笑むから。瞳を逸らさないから。
私は貴女に この言葉を掛け続ける。貴女に この言葉を聞いて欲しい。
(拒絶されない、と知ってしまったから)
(今までの不安は、麻痺して)
(それはまるで罌粟の実のよう)
この言葉を貴女に聞いて欲しい。
『いってきます』
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