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私が賄いのお仕事にあがる時、彼は逆に隊を引き連れ出て行きます。
そして、小さな風呂敷包みの手荷物を両手で抱えている私を見つけて、目を細め、
「行ってきます」
必ず言うのです。
最初は、屯所に向かって、もしくは他の隊士の方々に向かって言っているのかと思っていました。
けれど、どうやらそうではない事に薄々気付きました。──あまりに私の瞳に照準を合わせてくるから。
賄い先が決まった時、先輩の姐さんに耳が痛くなる程聞かされた言葉が幾つもある。
『彼処は怖い“壬生狼”達の巣窟だからね』
そうでしょうか?
報国忠誠心の強さで名高いという“長人”という方々を、私は知らないけれど、“壬生の志士”が只の人斬り集団だとは思いません。
それなら、彼らが抱いている“誠”は、何だというのです。
『“鬼”よ。気をつけなさい』
“鬼”はあんなに温かな笑顔で笑いますか?
あんなに苦しそうに刀を取りますか?
あんなに孤独に、存在意義を探しますか?
『うっかり馬鹿して惚れでもするんじゃないよ』
『女は馬鹿だから“力”に弱いからね』
“力”に惹かれるのではありません。“強さ”に惹かれるのではありません。
“強い信念”があるからこそ。その内に孤独の寂しさと脆さを抱いているからこそ、彼らの支えになりたいと思うのです。
この胸に生まれた温かな感情を、“馬鹿な恋情”と呼ぶのなら、私は“恋”など要りません。
“恋”と名付ける事に意味は無いから。
(名付けずとも、確かに在ることを知っているから)
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