過ぎ去ったモノ、生きている瞬間、未だ来ぬ日。
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「‥ぇえっと‥」
取り敢えず、腕を離そう。
「ごめん」
何で引き留めたのか、今更になって自分の行動が不可解な事に気付く。
「──“キミ”、剣道部ですか?」
弁解に困って言い淀んでいると、先に声を掛けてきたのは向こうだった。
「え、いや、違うけど‥。何で?」
一瞬ドキリとした動揺は、悟られなかっただろうか。
(この動揺の意味は、俺にも分からない)
「いや、何となく、ね。残念。」
(「残念」‥?)
少し苦しげに笑うその表情が、やけに引っ掛かって。無言のまま、暫く目が離せなかった。
「ごめん、そろそろ行かなきゃ」
時計を見遣ると、そいつは申し訳なさそうに暇を告げた。
(引き留めたのはこっちなのに、心底残念そう)
「あ、いや、ごめん引き留めて」
「ううん。話せて良かった」
(「話せて良かった」‥?)
頭に浮かぶ大量の疑問符に困惑していると、そいつは名残惜しそうに此方を見た後、くるりと背を向けた。
──ちょっと、待って。
「ごめん!最後に一つ、名前訊いてもいいか!?」
既に離れつつあった背中に意を決して そう叫べば、そいつは驚いたような顔を此方に向け、そして笑った。ひどく優しく、柔らかく。
「総司、です」
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