過ぎ去ったモノ、生きている瞬間、未だ来ぬ日。
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初めて竹刀を目にした時、どうしても、それを手に取らなければならない気がした。そして、いざ握ってみたら 襲い掛かる吐き気。
完璧なる拒絶だった。
「はぁーあ‥‥」
行く宛もなく、校内をぶらついていると、いつのまにか昇降口近くまで来てしまっていた。
あんな事言った手前 すぐに教室に戻るわけにもいかない。俺は溜め息を吐くと、げた箱の隣に腰掛けた。
(「モヤモヤして気持ちワルイ」)
解消する手だてもない気持ちの扱いが分からず、もう一度溜め息を吐こうとした、その時だった。
「すみません、ちょっとお聞きしたいんですけど──」
ふと顔を上げると、スポーツバッグと大きな荷物、そして細長い袋を持った男五・六人が、昇降口に入ってきた。
逆光でまともに顔を見れなくて、少し目つきが悪くなったかもしれない。
「道場ってどこにありますか?」
先頭にいた男がそう訊ねてきた。
そうか、こいつら 例の練習試合の‥。
「‥そこ、グラウンド突っ切って、体育倉庫の横だよ」
ぶっきらぼうに言うと、男は少し此方に苦笑混じりで笑いかけた。
「ありがとうございます」
そいつが礼を言って きびすを返そうとした瞬間。顔が微かに見えた。
心が、揺れた。
「──待‥っ」
とっさにその腕を掴むと、相手も“何か”に驚いた顔をした。突然手を引かれたからだけじゃない、その動揺。きっと今俺が抱いている気持ちと 同種だ。
「ぁ‥」
思わず引き止めたはいいが、喉から言葉が出てこない。
他の四人がざわめき始めると、男は振り返り、俺の腕を振り払うでもなく、彼らに声をかけた。
「先行ってて、皆」
その男の一声で、疑問を抱きながらも彼らは昇降口を後にした。
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