過ぎ去ったモノ、生きている瞬間、未だ来ぬ日。
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「なんかじめじめすんなもう‥!」
「梅雨だからね~」
机にダレて突っ伏すと、机までじめじめしてるからタチが悪い。
「何で公立にはクーラー無いんだよー‥」
「貧乏だからねぇ」
「じゃああのクソつまんない佐藤をクビにして浮いた経費で──」
まあまあ気の合う安藤と、クーラーの取り付け議論をしていた時だった。
「なぁこの中に剣道できるヤツいない!?」
突然隣のクラスの奴が乱入してきた。
何を言い出すかと思えば‥ 剣道?
「どうしたん?」
人の良い安藤が尋ねると、ソイツは溜め息を吐いて安藤の薄い肩に手を置いた。
「今日他校のヤツが来て練習試合するんだけど、部員足りねぇんだよ」
足りなくても練習試合ぐらい出来る筈だけど、部長としての面子やら何やらあるらしい。
「平助出来るんじゃね?」
こっちを向いた安藤が、何気なく 馬鹿な事を言い始めた。
ドクン、と心臓が跳ねた。
「ほら、運動神経めっちゃ良いし、チャンバラするとバカ強いじゃん」
俺の中で、何かが蠢いている。
怒り?
苦しみ?
悲しみ?
高揚?
────警鐘?
「‥‥チャンバラ“ごっこ”だろ? 遊びと剣道を一緒にするんじゃ‥」
「いや!良いよ平助!! ただの練習試合だし!」
切羽詰まった部長サンは、なりふり構わないらしい。
挙げ句、手を合わせ始めた。
「頼む平助! ちょちょいってやってくれるだけでいいから!」
普段の俺なら快く首を縦に振っただろう。テニス、バスケ、サッカー、野球‥‥これまで何回もヘルプをやってきた。
けれど、何で寄りによって“剣道”なのか───
「俺剣道嫌いなんだよ」
堪えかねて、口を切った。安藤はキョトンとして、部長と顔を合わせる。
「何、やったことあんの?」
「──ない」
はぁ?と安藤は笑った。
「やったことないのに何で“嫌い”なんだよ」
尤もな返しに、それでも苛っとした。
腹の底で動き回る、何とも表現できない感情を持て余して、俺は苛立ちを露わにした。
「前 竹刀持ったら吐き気がした。それだけ。」
言い捨てると、いつの間にか席を立っていた。
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