『星に願いを』
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夜。
一応七夕のお祭りということで、ささやかな宴会が催された。
しかし、天気は曇り。肝心な天の川は姿を見せなかった。縁側に座って空を眺め、一つ 溜め息。
「あー、曇っちゃいましたねぇ」
「ですねぇー、‥って、お、沖田さん!!?」
夕方 韋駄天を相手にひとチェイス終わらせた沖田さんは、何食わぬ顔で帰ってきて、私の隣に座った。
「だ、大丈夫だったんですか?」
「ははははー」
笑って、誤魔化された。後が怖いので、取りあえずその先は聞かない。
「曇っちゃいましたねぇ」
繰り返して呟く沖田さんは、残念そうに笑った。
「年に一度きりなのに、織り姫と彦星‥可哀想ですね」
今からでも晴れないかなぁ、と子供っぽく笑う沖田さんが、不覚にも可愛く見えて、笑みが零れた。
天の川の見えない空を仰ぐと、薄い雲の向こうにぼんやりとした月の影を見た。
本来ならどれ程美しい夜空が見られたことだろう、と 想像する。
(同じ空なのに、欧州の空とは情趣が違うな‥)
天文学の授業で星空を観察した時のことを思い出していると、ふと ある考えが頭をよぎった。
「──ねぇ、沖田さん」
「はい?」
「一つ、情緒の欠片もない話をしてもいいですか?」
「? 何でしょう?」
同じく空を眺めていた沖田さんは、視線をこちらへ戻した。
真っ直ぐな瞳でこちらを見る。少し照れて、私はもう一度空に視線を泳がした。
「雲の距離は上空8キロメートルから18キロメートル。星の位置は、一億光年以上先‥」
口早にそう言うと、沖田さんは首を傾げた。
「きろめーとる? 一億光年‥って何ですか?」
「んー、とてつもなく遠いっていう単位です」
数値は重要じゃないから、笑って誤魔化して少し説明を省く。
「つまり、雲のずーっと向こうに星々はあるっていうことです」
「ふむふむ」
「つまり ですよ、沖田さん」
もう一度、目を凝らし 星々を捉えようとするも、見えない。
けれど、私はにっこりと笑う。
「雲の向こう側では、織り姫と彦星 出会えているのかもしれませんね」
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