線香花火
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「‥線香花火‥苦手なんです」
短い瞬間に輝き、そして散る。
それが綺麗なのだと 人は言う。
まるで、消え行く事は美しい とでも言いたげな物言い。
‥でも、無くなってしまったらお仕舞いじゃないか。
「‥ちっとも美しくなんてない。‥もしそれが“美しさ”だっていうなら、‥私は 常に在れる闇でいい」
線香花火の光のように、全ての物は いつしか手元から滑り落ちて、離れていく。そんな事は 分かっているけど‥。
そこまで私が言うと、沖田さんは私の手を取り、まっすぐに目を見て 言った。
「‥‥私は消えません。私は、貴女の傍を離れない。決して離れませんよ」
線香花火が強く弾けた。
瞬間、光が小さくなった。
嗚呼、落ちる‥
「‥‥‥ぇ‥?」
「おや‥」
線香花火は、落ちる事無く私の手元のこよみに残り、静かに光を消した。
「嘘‥」
「ははは」
沖田さんは笑った。明かりを失った暗闇で、顔はよく見えなかったけど。
「この手に残る物だって‥在るって事ですよ」
そう言う沖田さんの顔は見えなかったけれど、それで良かった。泣きそうな顔を見られないで済んだし、何より、手から伝わる温もりを 全身全霊で感じることが出来たから。
――この手を決して、離したくない――
「そろそろ中に入りましょうか」
「はいっ」
変わらない物は“此処”に在る。
この手で掴める物だって、きっと‥―――――――
Fin