日溜まりの中へ【後編】
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私は何故か、微笑んでいた。
少女は 正しい「力」を手に入れるのだ。
それが何故か、嬉しかった。
私と「同じ」に ならなくて済むから。
奪う「力」など‥――――
意識が逸れている隙に話し声が近付いてきていた。
(‥あ)
「きゃっ!」
少女は前を見ていなかったのか、私に向かって突進してきて ぶつかった。思わず手から刀が落ちてしまう。
ガシャ‥
「ご、ごめんなさい! 私ったら調子に乗って‥」
「いえ、大丈夫ですよ」
貴女は?と訊くと、少女は元気に「大丈夫です!」と答えた。
「あら? これ‥」
少女はそっと地面に落ちた刀に触れて、持ち上げた。
「お侍さんだったんですか」
少女は少し驚いたように言った。
「‥えぇ‥‥。
‥‥ほら、もうお離しなさい。これから人を救う貴女の手には そんなモノそぐわないですよ」
瞬間、少女は豆鉄砲を喰らったような顔をした。
そして、口を開く。
「刀だって、人を救うモノですよね?」
「え‥?」
呆気に取られる私を尻目に、少女は刀に視線を落として それを大事そうに握った。
「確かに、使い方次第で人を傷付ける道具にもなりますけど‥、私は、大切な人が傷付く前にそれを防げる所は 凄いと思います」
医者は 人が傷付いてからじゃないと何も出来ませんから、と少女は憂いと共に切なく笑んだ。
私の身を包んでいた 肌を刺すように痛かった寒さが、突然の日差しの中で日溜まりに変わるのが分かった。
(あぁ‥この子は‥)
「おーい… ---!!」
少女は自分の名前を呼ばれたのか、声のした方を向いて返答した。
「はーい! 今行く!」
少女は私に刀を返し、お辞儀をしてから一度笑むと、近藤さん達の方へと駆けていった。
私は ただ その後ろ姿を見届ける事しか出来なかった。
君は知らない。
君のたった一言で
あの瞬間、どれだけ私が救われたかを。
どれだけ 私を価値のあるモノにしたのかを。
あの瞬間から「刀」を持つ意味が増えた。
私が「刀」を手にするのは
土方さんの為
近藤さんの為
そして
たった一人の 大切な 《キミ》を 守る為
「刀」は 私の誇りとなった
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