第十三話『tears』
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『──浪士募集のお触れが出たんだ!!』
それは青天の霹靂。
【第十三話 tears】
『大樹公の上洛に際し、その警護の為、尽忠報国の意志さえあらば出自身分は一切問わず、広く浪士を募集するって──』
その後に続いた永倉の説明は、字面だけが頭の中を空回りし、脳に一向に定着しない。だからその意味を解することが出来なくて、みっともなく、暫く口を開けていたと思う。そして、漸く理解した瞬間──胸の奥底に眠って燻っていた感情を燃え上がらせるように、込み上げる歓喜。
それは身体中が痺れるような喜びをもたらす吉報だった。
「勝っちゃん‥!」
思わずその名を呼べば、その名の主はさっきまで自分がそうであったように、ぽかんと口を開いていた。
気を抜けば弛みそうになる口角を必死にいつもの形に保ちつつ、俺は“大将”の肩を引き寄せた。
「こいつぁ名を上げる千載一遇の好機じゃねぇか!」
その肩を強く叩きながら言えば、勝っちゃんは放心しながらもゆるゆると頷いた。
「お、おう‥。──おぉ‥!」
漸く頭が再稼働したのか、勝っちゃんは噛み締めるように、最後には大きな声で応えた。
その反応に満足して、それから周りを見回せば、皆同じように目を輝かせ、嬉々とした表情を勝っちゃんに向けていた。
皆きっと同じような想いを胸に抱いているのだろう。その眼差しから伝わってきて、肌が痺れるような感覚──これは、武者震いだろうか。
「詳しい話を確認しなきゃな──」
そう、勝っちゃんが皆に言い渡した瞬間──俺は全身を支配していた歓喜の中に、突然ドキリと心臓が大きく脈打つのを感じた。
何故、気付けなかったのか。
「‥‥──」
“吉報”を、ただ呆然と聞いていた、そいつのことを。
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