第一話『daring encounter』
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程よく傾斜のある獣道(勝っちゃんは“程よく”ないと愚痴を零すが)を間違えず辿れば、出会える場所。それまで鬱蒼としていた木々が静かに場所を空け、日の光を導き入れる。日溜まりと木々の作り出す影とが 陰と陽の草花を育み、そこは自然が生み出した薬草の宝庫だった。
「‥凄いな‥‥」
「だろ? 誰にも言うなよ。貴重なんだから」
多くの人が知ってしまっては、この場所の均衡を壊してしまう。僅かに採れる貴重な恩恵に人が群がれば、もう二度とそれは取り戻すことができないから。
「じゃ、そのギザギザした小さい葉のヤツを幾つか採ってくれ」
「ん?コレか?」
「違う違う。こういうギザギザして小さくて不味そうなヤツだ」
「んー‥、不味そうなヤツ不味そうなヤツ‥。コレか」
「それは毒芹だ!門下生殺す気か!!」
「ならちゃんと教えろよ!!」
大の大人がぎゃあぎゃあとあまりに程度の低い内容を言い合う。幾つになっても進歩しない俺たち。馬鹿をやる日々。──それを人は“幸せ”と呼ぶのかもしれない。
何も変化の無い日常。安寧の日々。穏やかな日。満足していた訳でもなかったが、俺達はただ、殻を破る機会を逸していた。ただただ、その時を待ち望んでいたんだ。
そしてその日、繰り返される日常が 一つの確かな変化を得た。
『──‥生きたい、です‥』
『───私は‥──』
風に乗って、“何か”が来た。それは錯覚ではなく、直感からくる確信。
「──今何か聞こえなかったか?」
「え?」
「あっちの‥」
奥の方で。と、言って指し示そうとした先。俺は我知らず息を呑んだ。
一際強い光を浴びた地面。そこには、ただ何の変哲もない花が咲いている──筈だった。ただ、見慣れたモノが静かに佇んでいるだけの筈だった。
目に映ったのは、金の色。それはよく見れば 黄色の花が日の光を反射し輝いているだけなのだが。──だが、見たこともない。こんな花を、俺は今まで見たことがない。何だ、何だ、一体これはどういうことだ。
だが本当に目を見張るべきだったのは、花の方ではない。
「っ‥お、い‥。歳、これは‥!!」
再び息を呑む。それは異様な光景。陰陽の薬草が生息する神秘の場所で、美しく輝く金の花に囲まれて――まず目に入ったのは、消え入るように青白い肌、そしてそれは鮮やかな朱――血を纏っている──それは、女。
傷だらけの女。
──何だ
──何だ
──これは、どういうことだ。
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