第一話『daring encounter』
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生きたい、と
お前は言った
痛切なまでに お前は
生きたいと叫んでいた
聞こえた俺は、だから
叶えてやりたいと
思ったんだ
【第一話
daring encounter】
麗らかな春だった。穏やかな天気に、穏やかな風。穏やかな陽射しが降り注ぐ、穏やかな日。平和呆けしたこの地を写し出したような、実に何の変哲もない、穏やかな日だった。
そしてあの瞬間から、全てが始まった。
「勝っちゃん、ちゃんと付いて来いよ」
足場の悪い道に悪態を吐きつつ、後ろをよろよろと付いてくる人物に向かって言う。
勝っちゃんはぜいぜいと荒くした息を整える為に膝に手をやり、睨むように此方を見遣った。
「何で俺がお前のお遣いを手伝ってやらにゃならんのだ!」
「まぁまぁ、良いだろ。どうせ暇なんだろうし」
「稽古があるわ馬鹿もん!」
どうやら予想外に忙しかったらしい貧乏道場の主は、手に持っていた採草用の笊を地面に叩きつけ抗議の意を示した。
‥どうせまた歩き出す時にはご丁寧に自分で拾うんだろうけど。
「まぁ、さ。今から行く所にある薬草は傷によく効くんだ。秘密の場所教えてやるから──悪い話じゃないだろ?道場主」
日々傷とにらめっこして過ごす門下生の管理をしなければならない道場の主にとっては、良く効く傷薬がタダで入手出来るというなら喉から手が出るほど欲しい情報だろう。
勝っちゃんはぐっと息を飲むと渋々と先ほど投げた笊を拾い上げて再び歩みを進めた。(ほらやっぱり拾った)
「世の中持ちつ持たれつだぜ、勝っちゃん」
「今回だけだからな!」
相方がさっきよりよっぽど速く軽くなった足取りで大股で歩くのを確認すると、思わずクスリと笑みが零れた。
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