第七話『family』
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「ただいま!」
近藤家の玄関の戸を開けるなりそう大きく声を張り上げれば、間を空けずに奥から近藤さんが顔を出してくれた。
「おかえり、結希。──おーおー、泥だらけだな。裏で水を浴びてこい」
「はい」
温かな笑顔と温かな手のひら。迎えてくれる温かい存在がくすぐったくて、私は自然と瞳を細めた。
何か温かいものに包まれる感覚。それは物理的なものではなくて、敢えて言うなら“空気”。
「──‥で‥」
「──‥だね‥!」
ぼんやりとした頭で、それが誰かの話し声であることに気付く。
近くで交わされる会話が、声が、その空気が心地よくて、私は微睡みの中で静かにそれを感じていた。
「──おうおう、ちまっこいなー」
「ホント、小鳥みたいだネ」
「わぁー、もう寝顔可愛すぎるでしょっ!」
「煩い馬鹿へー、結希ちゃん起きちゃうデショ」
──私?
しかし、心地良い会話の中に自分の名前が挙げられるのをはっきり耳にした瞬間、反射で目を開けてしまった。
「‥!!」
「「「あ。」」」
そして開けた視界に飛び込んできたモノ──私のことを至近距離で覗き込む三人の青年の顔。
「ぇ‥?‥ぁ‥っと‥」
見知らぬ人が三人も自分を覗き込んでいるこの状況に頭が混乱して、言葉が出てこない。危害を与えるつもりは無さそうだけれど、あまりに唐突な出来事に私はすっかり固まってしまった。
「怯えた顔もかわいーぃ!」
「お前は変態か!!」
一番小柄な人が、体が細くて切れ長の瞳の人の頭をすかさずハリセンのようなもので叩く。
そのすごく華麗なツッコミに、混乱しながらも軽く感動してしまった。
「おいお前たち、結希にちょっかいを出すな!」
次から次へと進んでいく事態に混乱が収まらない中、背後から聞こえてきた聞き慣れた足音と声に安心させられる。
そしてそっと誰かが私の肩に手を添えた。
「もう大丈夫ですよー、結希」
「総司‥!」
にっこりと笑う力強い表情と優しく添えられた手のひらの温もりに、やっとホッと吐息が零れた。
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