第六話『rival』
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
袴を着ると、どこか気持ちが引き締められる。少し背筋がシャンとするのを感じた。
多分初めて袴を着たけれど、すごく心が静まって私は深く息を吸った。
「準備はいいか、結希」
「──はい」
頭はすごく冷静で凪いでいるのに、それと反して体は静かに熱くなっていて。自分の鼓動が聞こえてくるかのようだった。
土方さんに連れられて、道場へと足を踏み入れる。
格子窓から注ぐ日の光。掲げられた掛け軸。板張りの床──ひやりとする感触が妙に心地よかった。
ふと視線を上げると、道場の中央辺りに近藤さんが立っていることに気付く。そしてその隣りに居るのは、見知らぬ青年。近藤さんと話していた視線をゆっくりとこちらに向けると、彼はゆったりと笑った。
「わぁ、この子が噂の隠し子さんですか、土方さん」
「な‥!」
そんな不意打ちに土方さんが何か言い返そうとすると、ケラケラと面白そうに笑って、その人は「冗談ですよ」と付け加えた。
「結希さんですね。はじめまして。」
「は、はじめまして!」
そっと差し出された綺麗な手に慌てて応じると、優しく握り返された。──温かい。
そろそろと視線を上げれば、大きな瞳と目があった。
「私は沖田総司と申します」
「総司は近藤家に養子縁組みをしていて、まぁ、俺の弟みたいなものだ」
な、と言って近藤さんはバシバシと“沖田さん”の背中を豪快に叩くものだから、彼は僅かに噎せてよろめいた。
「えっと、“沖田さん”?」
「おや、総司でいいですよ。見たところ‥同じくらいの年かさのようですし」
同い年くらい、と言われて私は思わず目をパチクリさせてしまった。だって、自分の詳しい年齢は分からないけれど、“沖田さん”は茶目っ気はあっても大人びていて、明らかに私より年上のようなのに。
「それも冗談だろ?総司」
「え?違いますよぅ、本気です」
土方さんも近藤さんも私と同じように「信じられない」といったように肩を竦める。けれど、沖田さんは相変わらずニコニコと笑って続けた。
「私の野生の勘って当たるんですよ」
「じゃ、始めましょうか」
「はい!」
「‥本当に大丈夫か?結希」
「はい!」
近藤さんの不安そうな声を余所に、私はワクワクして堪らなかった。モノの習いたての時はよくあることだと思うけど、実践することって楽しみで仕方ない。
土方さんと二人で作った普通より少し短めの竹刀を握り締めると、向かいに立つ沖田さんはすっと笑顔を仕舞った。
「──はじめ!」
+