第六話『rival』
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人と人との繋がりは
なんと異なもの味なもの
君と出会えたことが
偶然でも必然でも
私はこの出会いに
最大級の感謝を述べたい
【第六話 rival】
私の故郷は分からない。けれど、この里の匂いが鼻を掠めると 「帰ってきた」という感覚が胸に広がるのは何故だろう。
私の故郷は分からない。でも、例えこのまま故郷が分からずとも、此処が(そしてあの人たちが)拠り所となってくれるのならば それでも良いとも思い始めているんだ。
そんな思いを胸に抱きつつ、私は久方ぶりに彼の里へと足を踏み入れた。
「お久しぶりです、こんどーさん!」
土方さんとの“行商”の旅に目処がたって、一旦日野へ帰ることになった。久しぶりに顔を合わせた近藤さんは、以前と変わらぬ笑顔を見せてくれる───よりも前に、声にならない悲鳴をあげてその顔を歪めた。
「ボロボロじゃないか、結希!!」
そう言われて両肩を掴まれれば、ピリッと少しだけ痛みを伴った。
石田散薬使ったのに、まだちょっと治ってなかったかな。なんてのん気に考えていると、近藤さんは「堪えきれない!」とでも言うように思い切り土方さんの方を睨んだ。
「いったいどんな生活させてるんだ、歳!!」
対する土方さんは、キッと睨まれてもあっけらかんとして言ってのけた。
「コイツが望んだことだ」
そうあまりにも事も無げに言ったものだから、近藤さんは顔を赤くしてとうとう声を荒げた。
「大切な身体だぞ!!限度を知れ!!」
言い放った後、やや間があって──はっとした顔で近藤さんは私の方を見た。何かと思って見つめ返せば、そっと優しく頭に手を置かれた。
どうやら至近距離で大声をあげたことを心配しているらしい。
「──‥‥ふふ」
そのお人好し過ぎる真っ直ぐな性格が、なんだかとても温かく感じて 思わず頬が弛んだ。
近藤さんは、優しいなぁ。
「近藤さん、大丈夫ですよ」
「結希‥」
「心配してくれてありがとうございます。でも、へっちゃらです!」
そう言って笑うと、この前負った口元の傷が少し痛んだ。不恰好な笑顔だったかもしれない。けれど、近藤さんは今度は何も言わず 静かに私の頭を二度叩いた。
「‥修行はどうだ?」
気を取り直して優しい笑顔で発せられた言葉に安堵して、返事を返そうとする。けれど、自分の出来不出来を自分で判断することはできず、私は土方さんの方へ視線を投げかけた。
「あぁ、‥強くなったぞ」
「本当ですか!?」
思っていた以上のことを言われて思わず乗り出して聞き返すと、食い付きが良すぎたのか 土方さんは苦笑した。
「まぁまぁってトコだ」
それでもそれは私にとって大きな褒め言葉で、すごく胸が高鳴った。認めてもらえることって、こんなに嬉しいことなんだ。
「そこで、だ、勝っちゃん」
「ん?」
土方さんは腕を組んで、近藤さんの背後に見える道場に目をやった。
「誰かと手合わせさせてみたいんだが」
「手合わせ?」
「俺とばかりじゃ成長の“伸びしろ”がもったいないからな」
そう言って土方さんは私の方をちらりと見やった。
「うーむ‥、そうか。じゃあ誰が良いかな。今日はあまり人がいないんだが‥」
「──アイツが良い」
「アイツ?」
疑問符を浮かべた近藤さんは少しの間土方さんの目を見つめ返していると──突然血の気が引くように顔色が真っ青になった。
「だ、ダメだ!! 何考えてるんだ歳!! アイツは手加減出来ないぞ!!」
「わかってるよ」
慌てて抗議を唱える近藤さんに対して、土方さんはあくまで冷静に答えている。そんな二人を私は渦中の人間の筈なのにポカンと見ていた。
“アイツ”って誰だろう。
「危険すぎる!!」
近藤さんが断固として抗議の言葉を言い放つと、それに反して土方さんは口角を上げてニヤリと不敵に笑った。
「さて、どうなるかな?」
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