《第十四輪》




──君の未来を守る


そんな大層な大口を叩くことは出来ないけれど

‥せめて


──君の明日を守ってみせる


それぐらいの見栄をきったっていいだろう

‥でも本当は


──君と明日を生きたい


弱い俺が、
とうとう言えなかった言葉








【花、時々キミ/第十四輪】








 慶応三年 霜月 十日余り八日。深夜に伊東さんが近藤さんの妾宅に招かれる。そしてその帰り道──



 事は、起きる。



 全て筋書き通り。あまりにも思い描いた通りの顛末で、なんだか少し──滑稽ですらあった。




「伊東先生‥!!」

「まさか‥っそんな‥!!」



 精々派手に騒いで、“皆”の気をこっちに集める。
 “小さな茶屋”なんて露ほども気にかけさせない。

 時間を、掛ける。

 君の明日への時を繋ぐ。


 それがこの任務における 俺の“誠”───





「まさかこんなに‥‥上手く行くなんて」



 だから、退けない。
 だから、迷わない。
 だから、逃げない。



 だから、──行けない。





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