《第十二輪》




 過去に父さんがやっていた“仕事”。その亡霊のような場所、存在と対峙する。


「今、何と?」


 震える手のひらを握り締めて、それを隠すように力を込めた。


「お受けしません、と申し上げたのです」


 相手の眉が顰められるのが見えて、固く握られた手のひらに汗が滲んだ。
 駄目だ。此処で弱気になっちゃいけない。負けたら、駄目だ。


「何も作戦に加担しろなんて言っていないのよ。ただ、以前と同じように会合の場所として店を‥」

「嫌です!」


 出された提案を瞬時に拒絶すると、相手・伊東甲子太郎は大きく息を吐いた。


「──瞳はお父様と同じなのに、志は継がなかったのね」

「っ、父の志は高尚でした!けれど、私には私の志がある‥っ!」


 藤堂さん、貴方と──“新撰組”の貴方と、共に歩いて生きていくという願いの前に、大前提として───人に 時代に流されて生きていくのが嫌だった。


「父はもう死にました‥っ。‥もう私たちに関わらないで下さい」

「そうもいかないわ。“協力者”だもの」

「っ、もう私たちを放っておいて!!」


 私は全身全霊で叫んだ。泣き叫ぶように。(祈り縋るように)




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