《第十二輪》



 どうでもいい日常。あまりにも無意味で、無機質で、思わず笑ってしまいそうになる。
 どこにも居場所の無い“家”の中に居座り、俺は息を吐いた。


(無意味なのは俺の方か‥)


「‥‥は‥っ」


 弾き出された無機質な答えがあまりに滑稽で(あまりに苦しくて)、俺は無理やり口角を上げた。

 頭に浮かんだのは、蝙蝠。





 窓の外に見える有象無象の衆なんかより、俺の方が無意味なものに思えた。




(──‥?)


 その時何気なく見遣った窓の外の世界に違和感を感じて、俺は少し眉を顰めた。


(‥一体 何だってんだ‥?
 最近 見かけねぇ浪人がやたら訪ねて来やがる‥‥)



「オイ、あの連中何者だ?」

「へ? 何って、“例の襲撃”の‥」





 喉がひくりと鳴った。
 急激に血の気が引いたと思ったら──地の底から何か熱いものがじりじりと押し上げてくる感覚。


 『“例の”襲撃』──?



「なん‥だァ そりゃあ‥っ!?」



 頭に浮かんだのは、蝙蝠。
 醜い蝙蝠。



「話せ‥っ!今スグ‥っ!!」



 どっちつかず。居場所も無い。

 嗚呼、なんて中途半端な存在。
(そして、なんて、無意味)




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