《第十一輪》




 日が落ち、薄暗かった世界は更にその闇を濃くした。この体も包み込む闇。打ち付ける冷たさと痛み。空っぽの心は、何をも受け入れなかった。


(欲しい)

(欲しい)

(欲しい)


 本当に欲しいものは何なのかを知りながら、その存在に背を向け、耳を塞ぐ。

 分からない、と繰り返す脳こそ、本当は知っていた。


『待ってるよ。私は、ずっと、あなたを‥』


 いつの日か君が言った言葉。
 思い出す度、頭の中で再現再生される度、優しい痛みがこの胸を襲う。



 ねぇ、お願いだから。


 待たないで。

 信じないで。

 忘れて。



 何度も繰り返すのに、繰り返す度、胸を貫く痛み。


 本当は、この零れる心をすくいとって、と。叫んでいる。



──本当は、知ってるんだ





 ねぇ、この空っぽの心は何をも受け入れず、壊れてしまったようだから


 分からないフリして 本能だけで突き進む事を許してくれるかな。





 肩が、雨風を切った。




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